牡牛座の季節に 金星の話

太陽は牡牛座に入宮して、木々の芽吹きに風もみどりに染まるようです。
春の盛りに季節を迎える牡牛座は、自分独自の内なる感覚を感じ、育み、味わう、双子座の特徴である言語や知性によって外向きのコミュニケーションを発する前のサインです。
牡牛座の支配星(そのサインに強い影響を与える天体。サインとその支配星、ナチュラルハウスは性質も共通する事が多い)は金星。
「自分の好きなもの」また「対人関係」にも関連深い天体ですね。
金星は、天秤座の支配星でもあるのですが、今回は牡牛座の季節という事で、オペラのヒロインと読み人知らずの和歌にふれながら、牡牛座的な側面から見た金星について語ってゆきたいと思います。

オペラ「トゥーランドット」。トリノオリンピックのフィギュアスケートで荒川静香選手が金メダルを取った演目としても有名ですね。
舞台は中国、美しいトゥーランドット姫は、多くの男性に求婚されますが、結婚の条件に3つの謎を解く事、そして解けない時は自らの命をかける事を求婚者たちに求めます。
姫に心を奪われた放浪のカラフ王子は、父王と王子に秘かに思いを寄せている女奴隷リューが止めるのも聞かず、危険な賭けに名乗りをあげます。
王子は無事に3つの謎を解く事が出来たのですが、姫はなお、求婚を拒みます。今度は王子から夜明けまでに自分の名前を知る事が出来たら命を捧げようと提案します。
姫の手の者にリューは王子の関係の者と知れ、捕らわれ拷問にかけられます。リューは拷問でも口を割らず、王子の名前を漏らさない為、短刀で喉をついて自ら死を選びます。

「あの人の望みを叶えてあげたら、私のただ一つの希望も消えてしまうけど、私それでもいいんです。」
もう20年ほど前に学校で授業の映像で見たのに、自死を選ぶ直前のリューの台詞が今も忘れられないのです。劇中では、犠牲をいとわない清純なヒロインという描かれ方をしているのですが、むしろ自分の中の強い思いを、命を賭して守った芯の強い女性ではないかと思うのです。
リューを思う時、国も時代も違うのに不思議と印象が重なる和歌があり、紹介したいと思います。

耳なしの山 くちなし得てしがな 思ひの色の下染めにせむ
(古今和歌集 読み人しらず)
耳なしの山で くちなし(染料)を手に入れたいものだ 思ひの色の下染めにしたいから。

耳なしの山ということで、ほかの人の耳に入らないように。くちなしで、自分の思いも外に語らない。しかし染めあげようとしている「思いひの色」は「緋の色」、「火の色」であり、(言葉をかけているのですね。) 内面には、大切な思いが確かにある様子が伝わってきます。自分が報われたい、相手に思いを伝えたい、というその前にリューの内面でカラフ王子への思いが豊かに強く満ち満ちている。それが自分の軸になっているから強いのですね。

牡牛座的な性質の「金星」は、自分の内側にある大切な世界。とても個人的な感覚。外からの評価と関係ない自分の「好き」や理屈や数字に表しがたい感覚「体感」です。
それを金星という天体の課題の最初のステップとして育み、価値として積み上げて、自分の内面をしっかり安定させます。リューの内面にあるような自分軸です。ここでの牡牛座的な性質の金星は、とても独自で素朴な自分だけの内面のものさしです。(金星の解説はnico先生の講座より) 恰好の良いものとは限らないかもしれません。

金星の感覚というと、ソフトに社交的にふるまえるセンスがあるというイメージを私は長年持っていたのですが、なぜ金星の最初のステップが牡牛座という外側からの価値基準によらない、確固たる私的な世界を形成するところからのスタートなのでしょうか?
とりあえず、外の世界と上手くやれる手段が早く手に入った方が一見良さそうですよね。
では、自分の軸となる内的な世界が育たないまま、外の世界と小手先の器用さで接したらどうなるのでしょうか?

その場、その場は摩擦もなく良好な関係を装えるでしょう。
しかし外の世界の相手は次々と変わるのですから、早さも動きも自分のリズムでないものに振り回されてまるで、遊園地のコーヒーカップに酔ったようにへとへとになると思います。こちらもnico先生の講座でならった言葉なのですが、しっかりとした自分の世界がまず先に出来て、はじめて他者と公平な関係性を結ぶという、次の金星のステップ、天秤座へ移れるのです。

さきほどの和歌にでてくる染料の「くちなし」。なまえの由来は、実が熟しても弾けず口が開かないところから来ています。そしてくちなしの染料で染められた色は「謂わぬ色」。
しかしいわぬ色という名前なのに、それがまるで向日葵を連想させるような、夏の日の光のような鮮やかな黄色なのです。
一人一人の中にある内的な世界もきっとこんなふうに色鮮やかな美しい色合いのはずです。

そして牡牛座の季節に、この内側の世界に思いをはせてじっくり味わってみてはどうでしょうか?美しい内側の世界は、牡牛座に続く双子座の世界で「私が外に向けて語りたい事」に育っていくと思います。