アドラー心理学と心理占星術の関係、ホロスコープに生かすために

今日のテーマは、アドラー心理学と占星術の関係について。

嫌われる勇気」がベストセラーに入りするなど、最近注目を集めているアドラー心理学ですが、この本が社会現象になるまでは、どちらかというとアドラーは子育て指南の心理学という印象のほうが強かったかもしれません。

私は当初から、このアドラー心理学の理論のいくつかを占星術の象徴イメージやカウンセリングの技法などに取り入れています。

なぜアドラー心理学なのかというと、アドラーの理論は非常にシンプルでわかりやすく、そして誰もが危険なく扱える技法であり、認知療法やNLPなど現代心理学の中にまで浸透していて、即戦力として使える考え方にあふれているからです。

実は、ノエル・ティル(以下、ティル)もアドラー心理学について記事を残しています。

12冊のシリーズから成っている『The Principles and Practices of Astrology Vol.V: Astrology and Personality(占星術の原理と実践 Vol.5: 占星術とパーソナリティ)』。


この本は今からちょうど40年前、1974年に出版された、占星術の理論の中にパーソナリティ心理学――全体としての人間の理解を深めよう――の要素を取り込むという大胆な発想のもとに書かれたものですが、第4章でアドラーの「Superiority and Inferiority 優越感と劣等感」を紹介しています。

 アドラーがユングと異なる点は、「人は過去の経験からよりも、未来への希望によって動機づけされる」と考えたことだ。人は自分自身を未来への成長へと導くため、仮想の目的論を採用するのではないかと。

 この仮想の目的論は多くの人々に支持され、人々が現実と折り合う手助けとなるためのものと理解された。例えば、「人は生まれながらにして平等である」「正直が最善の策」「目的は手段を正当化する」「聖書にはそう書かれている」「必ずしもそうとは限らない」「終わり良ければすべて良し」などといった考えだ。


 このような目的論を持つことは、個人の行動に強い影響を及ぼす。極端になると、こうした仮想がパーソナリティを支配し、そのパーソナリティの実力が及ばないほどの高すぎるレベルの目標や、それを達成したいという欲求を作り上げてしまうことも多々ある。仮想化された目標やライフスタイルのレベルが、ホロスコープに描かれている力量を超えてしまうケースであれば、そこでは「報酬」が「フラストレーション」に置き換えられる。逆に、仮想化された目標やライフスタイルがホロスコープに描かれた力量よりはるかに低いレベルであるときは、「発達」が「達成不全」に置換される。

Noel Tyl「The Principles and Practices of Astrology Vol.V: Astrology and Personality

アドラー心理学が現代心理学だけでなく、育児、教育等様々な分野で採用される理由として、ティルも書いているこの「目的論」にあると考えられています。

「人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある。過去の原因に縛られることなく、今を生きる目的を設定することで、人は未来を生きる力を得たり失ったりする」

目的論は、認知療法では、その人を支えている“信念”という言葉で説明されますが、これを個人の人生を創造するエネルギー、太陽―火星―木星といった火エレメントの調整というテーマで考えることがでるかもしれません。

人は「なりたい自分=太陽」に向かっていく際、ある信念=木星を必要とし、そこから個人の行動=火星が生まれる。その働きが適切なら個性や推進力に、過剰に働けば、理想主義や誇大妄想、報酬に駆り立てられたストレスの多い人生に、不適切ならフラストレーションや不全感という問題につながるのではないか、そう考えることができるのではないでしょうか。

「失敗は成功のもと」という目的論を持ち人生をダイナミックに生きる者、「成功しなければ何の意味もない」という目的論のもとひたすら人生を駆け抜ける者、「成功なんて自分には縁のない考え方だ」という目的論によって成功から遠ざかる人生を選ぶ者。

これらは、すべて個人を中心とした目的論という考え方です。

今の問題を確認したうえで、個人が今の自分にふさわしい適切で等身大の目的論を持てるよう、太陽―火星―木星エネルギーを中心に天体のバランスを整え、象徴の書き換えの手伝いをする。そのように、私はアドラー心理学の目的論と心理占星術を融合させ、現場で使っています。

簡単に説明してみましたが、ほんの一例です。それ以外にも逆行と劣等コンプレックスの話など、アドラー心理学の理論は、うまい具合にホロスコープの象徴と結び付けて考えることができる優れものなのです。未来意識=太陽を高め、個人を個人らしく成長させることができますし、また所属=月を育てる感覚も学ぶことができる、これがアドラーの個人心理学のすばらしい考え方です。

もっともっとたくさん伝えたいことがありますが、長くなるのでまた今度。
アドラー心理学を学ぶなら、アドラーが初めて英語で出版した重要著作『個人心理学講義』から始めてみてね。

※こちらは、ティルのニューズレターに書き下ろしたものです。