Pocket
LINEで送る

クリスタルボウルをご存じだろうか。
水晶の粉を焼き締めて作られた、アトランティスの昔から伝わるとされる楽器である。

言葉で表せない感覚はある。
五感で表せない感覚もある。

もずくはクリスタルボウルの響きを聞くたびにそう思う。

もずくにはこのクリスタルボウルを奏でる友人がいる。
その人、こばちゃんはこの5月はるばる山形からもずくの許にやってきた。
ボウルを四個携えて。
そのときは近所のスタジオを借りて演奏会をしてもらった。

演奏会の終わりの方で、こばちゃんが参加者一人一人のためにクリスタルボウルを奏でてくれるコーナーがあった。
ホワイトやグリーン、ブルー、それぞれの大きさと色調を持つそれは、ド、レ、ミ、…
またそれぞれの音階も持っていた。

もずくはこばちゃんにうながされるままに四個のクリスタルボウルの真ん中に仰向けに寝転んだ。
体中をふるわせる音の波。
視界が白くなり、カテドラルのような建物の中にいる気がした。
頭上で手の指のように合わさっている高い屋根が反響板のようになって音が光のように降り注いでくる。
もずくはとつぜん理解した。遠い昔、かの大陸でこの音が奏でられたことがある。地球の奥深くではその振動は今も響き続けている。その音は今、見つけた。
「あ、私が鳴っている」
私は私を、見つけた。

クリスタルボウルは楽器ではない。少なくとも耳だけで聴く音を奏でる楽器ではない。
医療用に使われていたと聞くが、体全体を調整することができるのは疑いがない。
もずくのとある学びの師匠M氏からの知識によれば、人の体は水分60パーセントのとろみのついた袋のようなものだそうだ。
その葛湯の袋が、圧倒的な音の波を受けてゆさゆさとふるふるとゆれている。
それだけではなかった。体の中からも鳴り出すものがあった。頭蓋か、骨か。臓器か。
振動に反応しているというよりも、「わたしここにいます、います」と歌っているようだった。
クリスタルボウルが楽器なら、人の体もまた楽器なのだ。

次の日、もずくの店にこばちゃんは来てくれた。
「今日は、音に合わせてチャクラを感じるワークをしてみたいの!」
とこばちゃんは言った。いいとも。いいとも!

二階の板の間に寝転んで、クリスタルボウルの音に対応するチャクラに注意を向けてみる。
ド、第1チャクラ。会陰部に当たるこのチャクラの上に手をかざす。かすかに弾力や圧を感じる。手のひらがぴりぴりする気もする。
M氏によれば、人の肉体の周りには、目に見えない微細なからだがあるそうだ。
音は、目には見えないが、空気中を伝わり鼓膜を震わせる。クリスタルボウルの振動も、目には見えないが微細な体を震わせ、その境界をいつもよりはっきりと指し示してくれる。
第2、第3と手をかざしながら上にあがっていく。
第5チャクラ、のどまで来たときは、順番も音もわからなくなっていたが、圧倒的な音の波が頭蓋に満ちあふれ、体のうちそとの区別をなくした。といって、めまいがするとか不快な感じはない。音が波ならば自分は海になっていたような、いや逆かもしれない、音が海ならば自分は波だった。

あとで
「すごく鳴っていた」
といったら、こばちゃんは
「ソは今日はそんなに大きな音が出なかった」
と答えたので驚いた。
もずくは、ソを奏でることにかけては天下一品の楽器だったのかもしれなかった。いや、聴衆は自分だけだったのかもしれないけれども。

その夕方、こばちゃんは、山形に帰っていった。クリスタルボウルは次の日宅配便で送った。集荷を待っている間、誰も動かしていないのに段ボールの中でふるん、と音がした。ありがとう、またおいで、ともずくはいってみた。

この記事を書いたひと

まるおかよしこ
乙女座新月生まれ AB型
山梨県甲府市出身
山梨大学教育学部卒

神奈川県川崎市で中学校教員を30年間勤めたあと
相談業に転身。
現在は川崎市でレンタル/セッションスペース
灯台屋を運営。

西洋占星術師
NLP堀口メソッド エグゼクティブコーチ
NLPマスタープラクティショナー
Pocket
LINEで送る

The following two tabs change content below.
乙女座新月生まれ AB型 山梨県甲府市出身 山梨大学教育学部卒 神奈川県川崎市で中学校教員を30年間勤めたあと 相談業に転身。 現在は川崎市でレンタル/セッションスペース 灯台屋を運営。 西洋占星術師 NLP堀口メソッド エグゼクティブコーチ NLPマスタープラクティショナー