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天王星が牡羊座にイングレスしたのは2011年3月12日。
東日本大震災の翌日、福島第一原発がメルトダウンした日である。
この日が占星術的にどれくらい重要なのか、それを測定する方法はない。けれど私たちはこの日を境に、「日本は、もはや安全ではないかもしれない」という不安を大げさに、または控えめに、心の片隅に抱えることになったのは間違いない。

今をさかのぼること89年前、1927年4月1日もまた、天王星が牡羊座入りしたタイミングだ。
日本は、大正デモクラシー真っ只中。普通選挙制度を求める運動、海外派兵の停止を求める運動、男女平等、部落差別解放運動などが次々に起こった。
1929年10月、アメリカにおける「暗黒の木曜日(Black Thursday)」を皮切りに世界恐慌が勃発。「ルンペン時代」と呼ばれた未曽有の不況が続き、日本でも失業者が街にあふれた。
この世界恐慌は、伝統的な国家を基礎としないファシズム体制の国際的高まりをもたらす結果となった。

天王星が「変革」「刷新」「不安定さ」といった象徴を持つ理由は、ひとつにその発見された時代背景にある。1781年の天王星発見に前後するかたちで、イギリスの産業革命、アメリカ独立戦争、フランス革命が相次いで起こった。これらの出来事が与えた衝撃により、天王星の「混乱を引き起こす天体」「既存の社会を変化させる力」「新しい時代の扉を開くエネルギー」という象徴が定着した。
nico_uranus
天王星は、トランスサタニアンと呼ばれている不可視の惑星である。実際、肉眼で観察できる日もあるということだが、それでも地球からは遠い。
トランスサタニアンは、どの惑星も時代意識のエネルギーを象徴するものだと心理占星術的には考える。時代を生きる人々の思念、感情、欲求、期待、夢、そういったものが見えないエネルギーとなり、時代を動かす力となるということだ。
天王星は風エレメント・水瓶座の支配星であることから、人々が生み出した意識や思考、情報や反応を拾い、それを風にのせ波及させるというエネルギーを持つ。空気間から、またはネットやSNS等から、私たちは意識的、無意識的に「今」の風を受ける。その刺激によって人々の意識を目覚めさせ、立ち上がらせる。問題提起をし、真実を暴く。それが天王星の目的だ。しかし、その存在の在り方が、時に激しい民意を引き出すこともある。自らの発言が突風となり、人々の中に潜んでいた欲望なり恐れなりをあおり、うっかり寝た子を起こす。
トランスサタニアンには、善も悪もない。だから不正なり、浮気なり、無神経な発言なりをして常識を揺さぶる。人々に「なぜ」を問いかけ、問題提議させ、議論を引き起こす。風を利用し、新しい世界へと船を運ぶ。

2011年3月12日。天王星は、12サインを一巡して牡羊座に戻ってきた。牡羊座は、占星術ではいつでも物事の始まりを示す。望むと望まざるとにかかわらず、私たちは心地よい海(魚座)から陸(牡羊座)に上がり、自らの足で立たなくてはならなくなった。

2011年3月、シリアでは内戦により22万人以上が死亡。1170万人が難民となる。2010年から2013年にかけて続いたアラブの春も記憶に新しい。いまだに続くチベット・ウイグル・台湾独立問題を抱える中国。2014年6月末に国家樹立を宣言した「イスラム国(IS)」の台頭があり、クリミア半島の独立宣言をめぐってロシアとウクライナの対立もあった。

牡羊座期は、あるがまま、まっさらな状態から主体的に体験を積んでいくことを学ぶ。ころんだりぶつかったりしながら、自らの体験を通して、手探りで「自分を生かす力=存在の拠り所」を模索する。
主体的に得た体験が財産として身体に刻まれていくためには、はじめに多くの失敗をすることになるだろう。しかし牡羊座期は、体験こそ重要なのだ。失敗も成功も含め、自ら体験したという自信は、誰にも奪うことはできない。それが未来を生き抜く力になる。

だから、とにかく動く。予想外の出来事はいつでも不安を伴うが、だからこそ動く。時代に意識を開く。アンテナがキャッチしたものを信じ、足なり首なりを突っ込んでおく。転んだら起き上がる。天王星が牡牛座入りするころには、身体が直観力を持つようになり、「私」が「私」としてリアルに感じられるようになるだろう。身体が意思を持ち、それが未来を形づくるのだ。

天王星が本格的に牡牛座入りするのは、2018年5月16日。
この日は、ちょうど牡牛座で新月を迎える。牡牛座入りまで2年。火星のサイクル2年を利用して、ひとつ自分なりにゴールを設けてみるのはどうだろうか。失敗を繰り返し、生き抜く自信を身につけるというゴール。

国家も個人も、これからも引き続きたくさんの失敗をするだろう。しかし、それも致し方ない。今、私たちは新しい時代に産み落とされたばかりなのだ。国の在り方も、個人の人生も、他の誰かに任せておくだけでは生き抜いていけない。おんぶに抱っこでは、不安ばかりが増長する。

実際、状況は不安定だ。私たちの前には自然災害に対する不安、経済不安が横たわっている。安全保障、憲法改正、地方分権改革、消費税増税、TPP等、様々な議題が立ち往生している。今は、こんな時代だ。むしろ、こんな時代だからこそ天王星の力が必要なのだ。

最後にもうひとつ、天王星の象徴を物理的に考えてみよう。天王星の天文的個性は、黄道面に対し、ほぼ横倒しの98度傾いている自転軸にある。天文の関係者たちが天王星を「ひねくれ者」と呼ぶのはこの特徴からきているが、ここから天王星は「トリックスター」「あまのじゃく」「反抗心」「常識を覆す」という象徴を与えられた。

天王星は、誰にでも等しく平等に独立する力を、個性を生きる力を持つ機会を与えてくれる。
残り2年。
さて私たちは、どのような天王星体験を積んでいくことになるだろうか。

この記事を書いたひと

nico
占星術研究家。心理占星術のための実験室『ニコラボ』主宰。
2006年より占星術の研究を開始。天文学的アプローチをベースに、アドラー心理学、ナラティブセラピー等の理論をホロスコープ理解の中心に置く。
「時代を知り、人を知り、私を知る」という視点での心理占星術講座、ワークショップを全国で開催。天体を生きた時代の象徴として捉え、時代の流れに沿った新しい象徴理解を深めようと日々研究中。また、占星術カードゲームや心理占星術WEBマガジン・nicopla.netなど、学問の枠にとどまらない幅広い活動で心理占星術の普及を目指す。
公式HP: nicosmic life
公式ブログ: nicosmic life — 心理占星術と未完成な日々
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http://nicopla.net/wp-content/uploads/2016/05/nico_uranus.jpghttp://nicopla.net/wp-content/uploads/2016/05/nico_uranus-150x150.jpgnico星の時代 by nico星コラム惑星,トランジット,天王星天王星が牡羊座にイングレスしたのは2011年3月12日。 東日本大震災の翌日、福島第一原発がメルトダウンした日である。 この日が占星術的にどれくらい重要なのか、それを測定する方法はない。けれど私たちはこの日を境に、「日本は、もはや安全ではないかもしれない」という不安を大げさに、または控えめに、心の片隅に抱えることになったのは間違いない。 今をさかのぼること89年前、1927年4月1日もまた、天王星が牡羊座入りしたタイミングだ。 日本は、大正デモクラシー真っ只中。普通選挙制度を求める運動、海外派兵の停止を求める運動、男女平等、部落差別解放運動などが次々に起こった。 1929年10月、アメリカにおける「暗黒の木曜日(Black Thursday)」を皮切りに世界恐慌が勃発。「ルンペン時代」と呼ばれた未曽有の不況が続き、日本でも失業者が街にあふれた。 この世界恐慌は、伝統的な国家を基礎としないファシズム体制の国際的高まりをもたらす結果となった。 天王星が「変革」「刷新」「不安定さ」といった象徴を持つ理由は、ひとつにその発見された時代背景にある。1781年の天王星発見に前後するかたちで、イギリスの産業革命、アメリカ独立戦争、フランス革命が相次いで起こった。これらの出来事が与えた衝撃により、天王星の「混乱を引き起こす天体」「既存の社会を変化させる力」「新しい時代の扉を開くエネルギー」という象徴が定着した。 天王星は、トランスサタニアンと呼ばれている不可視の惑星である。実際、肉眼で観察できる日もあるということだが、それでも地球からは遠い。 トランスサタニアンは、どの惑星も時代意識のエネルギーを象徴するものだと心理占星術的には考える。時代を生きる人々の思念、感情、欲求、期待、夢、そういったものが見えないエネルギーとなり、時代を動かす力となるということだ。 天王星は風エレメント・水瓶座の支配星であることから、人々が生み出した意識や思考、情報や反応を拾い、それを風にのせ波及させるというエネルギーを持つ。空気間から、またはネットやSNS等から、私たちは意識的、無意識的に「今」の風を受ける。その刺激によって人々の意識を目覚めさせ、立ち上がらせる。問題提起をし、真実を暴く。それが天王星の目的だ。しかし、その存在の在り方が、時に激しい民意を引き出すこともある。自らの発言が突風となり、人々の中に潜んでいた欲望なり恐れなりをあおり、うっかり寝た子を起こす。 トランスサタニアンには、善も悪もない。だから不正なり、浮気なり、無神経な発言なりをして常識を揺さぶる。人々に「なぜ」を問いかけ、問題提議させ、議論を引き起こす。風を利用し、新しい世界へと船を運ぶ。 2011年3月12日。天王星は、12サインを一巡して牡羊座に戻ってきた。牡羊座は、占星術ではいつでも物事の始まりを示す。望むと望まざるとにかかわらず、私たちは心地よい海(魚座)から陸(牡羊座)に上がり、自らの足で立たなくてはならなくなった。 2011年3月、シリアでは内戦により22万人以上が死亡。1170万人が難民となる。2010年から2013年にかけて続いたアラブの春も記憶に新しい。いまだに続くチベット・ウイグル・台湾独立問題を抱える中国。2014年6月末に国家樹立を宣言した「イスラム国(IS)」の台頭があり、クリミア半島の独立宣言をめぐってロシアとウクライナの対立もあった。 牡羊座期は、あるがまま、まっさらな状態から主体的に体験を積んでいくことを学ぶ。ころんだりぶつかったりしながら、自らの体験を通して、手探りで「自分を生かす力=存在の拠り所」を模索する。 主体的に得た体験が財産として身体に刻まれていくためには、はじめに多くの失敗をすることになるだろう。しかし牡羊座期は、体験こそ重要なのだ。失敗も成功も含め、自ら体験したという自信は、誰にも奪うことはできない。それが未来を生き抜く力になる。 だから、とにかく動く。予想外の出来事はいつでも不安を伴うが、だからこそ動く。時代に意識を開く。アンテナがキャッチしたものを信じ、足なり首なりを突っ込んでおく。転んだら起き上がる。天王星が牡牛座入りするころには、身体が直観力を持つようになり、「私」が「私」としてリアルに感じられるようになるだろう。身体が意思を持ち、それが未来を形づくるのだ。 天王星が本格的に牡牛座入りするのは、2018年5月16日。 この日は、ちょうど牡牛座で新月を迎える。牡牛座入りまで2年。火星のサイクル2年を利用して、ひとつ自分なりにゴールを設けてみるのはどうだろうか。失敗を繰り返し、生き抜く自信を身につけるというゴール。 国家も個人も、これからも引き続きたくさんの失敗をするだろう。しかし、それも致し方ない。今、私たちは新しい時代に産み落とされたばかりなのだ。国の在り方も、個人の人生も、他の誰かに任せておくだけでは生き抜いていけない。おんぶに抱っこでは、不安ばかりが増長する。 実際、状況は不安定だ。私たちの前には自然災害に対する不安、経済不安が横たわっている。安全保障、憲法改正、地方分権改革、消費税増税、TPP等、様々な議題が立ち往生している。今は、こんな時代だ。むしろ、こんな時代だからこそ天王星の力が必要なのだ。 最後にもうひとつ、天王星の象徴を物理的に考えてみよう。天王星の天文的個性は、黄道面に対し、ほぼ横倒しの98度傾いている自転軸にある。天文の関係者たちが天王星を「ひねくれ者」と呼ぶのはこの特徴からきているが、ここから天王星は「トリックスター」「あまのじゃく」「反抗心」「常識を覆す」という象徴を与えられた。 天王星は、誰にでも等しく平等に独立する力を、個性を生きる力を持つ機会を与えてくれる。 残り2年。 さて私たちは、どのような天王星体験を積んでいくことになるだろうか。│占星術ウェブマガジン
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占星術研究家。心理占星術のための実験室『ニコラボ』主宰。 2006年より占星術の研究を開始。天文学的アプローチをベースに、アドラー心理学、ナラティブセラピー等の理論をホロスコープ理解の中心に置く。 「時代を知り、人を知り、私を知る」という視点での心理占星術講座、ワークショップを全国で開催。天体を生きた時代の象徴として捉え、時代の流れに沿った新しい象徴理解を深めようと日々研究中。また、占星術カードゲームや心理占星術WEBマガジン・nicopla.netなど、学問の枠にとどまらない幅広い活動で心理占星術の普及を目指す。 公式HP: nicosmic life 公式ブログ: nicosmic life — 心理占星術と未完成な日々