心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
おさらい編では、先の未来を読み解いた星宙百景の記事をセルフレビュー。
先月お伝えしたチャート読みの内容と、実際に起こった出来事を nico の視点で振り返るショート・レポートです。
今年の夏は、とにかく暑かった。いや、まだ暑さは続くかもしれない。
ゲリラ豪雨の激しい雨音に慄きつつ、恥ずかしながら、ようやく気候変動による危機を実感したような気がしている。もちろん、これまでもたくさんの情報や知識には触れていた。日本の年平均気温は過去100年間で1.35℃上昇しているとか、2100年までの世界平均海面水位上昇量は、もしかしたら1m近くになるとか、そういった危機を知らなかったわけでもないが、では真剣にその問題にコミットしていたかどうかというと怪しい。
それが、先日のブログにも書いた、社会学者の大澤真幸の著書『我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの』ということになるのかもしれない。
来年は、戦後80年を迎える。ブログにも書いたが、ここにきて新聞各社の論調が急に変わった気がしている。大澤真幸が言うように、もしかしたら多くの人たちが「我々の死者(現在の我々が彼らのおかげでこうして存在できているのだと思うことができる死者たち)」を失っていたことに気づいたのかもしれず、そのせいで「未来の他者(我々の未来を担うであろう人々)」の存在を忘れていたことに気づいたのかもしれない。
未だ解決されていない戦後の日本の在り方、その葛藤が以下のチャートにも示されているように思うのは私だけだろうか。
8月9日、長崎市長 平和祈念式典のイスラエル不招待をめぐり、アメリカやイギリスなどG7加盟国の六か国の駐日大使らの参加見合わせという出来事、それに対し、日本でも賛否があったことは、まさに2ハウス―5ハウス―8ハウスにおける様々な価値観のぶつかり合い――過去の遺産に対する見解の相違があるがゆえに、共通の未来を描くことのできない葛藤の表示――を読むことができたのではないか。
以下のような様々な意見が交錯した。
被爆者団体は、「被爆者の感情としても招待しないことは当たり前だと思うし、正しい判断だったと思っている。長崎市はきぜんとした態度をとってほしい」「長崎市の対応が正しいと思う。ロシアやベラルーシを招待しない中で、イスラエルを招待することはダブルスタンダードだ」といった表明を出している。
長崎市民からは、「長崎は戦争に対して敏感なので、紛争をしている地域の方を呼ぶのは好ましくないと思う。皆さんに来てもらい、平和の訴えを聞いてもらうのがいいとは思うが、それぞれの国の立場もあるのでしかたないと思う」「イスラエルは紛争の当事者かもしれないが、紛争をなくすための平和の式典だから、あらゆる国を招待してよかったと思うし、各国の大使には参加してほしかった」という声が上がった。
上川外務大臣は、「式典は長崎市主催の行事で、各国外交団からの出席者については、政府としてコメントする立場にはない」「誰を招待するかは主催者の長崎市が判断したものだ」と述べている。
立憲民主党の長妻政務調査会長は、「長崎市は被爆した方々の悲しみを長年受け止めている自治体であり、主催者の長崎市が決めたことにコメントすることは適切ではない」と述べ、維新の会のおときた政務調査会長は、「われわれもイスラエルに即時停戦を求めていく立場だが、平和祈念式典とは切り分けるべきだ。長崎市がイスラエルの駐日大使を招待しなかったことは、外交儀礼から少し逸脱している。大使を式典に招いたうえで、別の機会に改めて、言うべきことを言うほうが適切だった」と述べた。
同じ日本人であってもこれだけ意見の相違がある。置かれた立場によっては、個人の意見を封印している者もいるかもしれない。これが2-5-8Hの仕組みでもある。
各々が各々の価値観をぶつけ合うことによって、それぞれの姿が明らかになっている様子がわかる。価値観を表明するということには、相手に自分がどのような人間か、どういった立場を取ろうとしているのか、どんな過去を信じ、どんな未来を生きようとしているのかを理解させることになるのだ。
みなさんはこの期間、自分の価値観の表明はできただろうか。また相手から提示された価値観に対し、どのような評価を下すことになっただろうか。そこに和解や反発を感じることはあっただろうか。
また、今期の獅子座期は、株価の大暴落が大きなニュースとなった。
先月の星宙百景でも2ハウスー5ハウスー8ハウスの強調について、「国/企業/個人の価値の変動、資源の循環、経済の動向、また内需や外需、インバウンド経済を読み解くことができ、また為替や株式経済の変動と読むこともある」と書いたが、蓋を開けてみれば変動どころではなかった。8月5日、東京株式市場で日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録。令和のブラックマンデーとなり、翌日、ある程度持ち返したが、その後も株価の乱高下が続いた。
5ハウスの天王星、火星の影響と読むのは単純すぎるだろうか。
7月11日に、日経平均株価は史上最高値を更新した。株には、「往って来い」という考え方がある。「往って来い」とは相場がある水準まで上がった後に、もとの水準まで戻ること。天王星は、「本来の状態への是正」と読むことができる。多すぎるものは削られ、少なすぎるものは補われる。そのものの適正へと調整を図るのが天王星の働きだ。
2ハウス―5ハウスー8ハウスの強調について、もうひとつ。
この2024年の獅子座期に「令和の米騒動」があった(今も続いている)。全国のスーパーからコメが消えたということだが、どのニュースを見ても、その原因がイマイチよくわからない。宮崎地震を受けて気象庁が「巨大地震注意」を発表したことで買い占めに走った人が多かったからというが、農水省によると「在庫量が少ない」という情報が独り歩きをしたということになっている。いずれにしても、この騒動も2ハウス―5ハウスー8ハウスの象徴的な出来事に思われる。「ある」と思っていたものが「ない」。その心理的な不安と、失くしてわかるありがたみ。
元々パンや麺類の消費が増え、コメの消費量が減っていた。今さら慌てなくても、他に代替品はあるではないかと考えてもよさそうだが、こういう騒動があると、あらためて米の存在の大きさを感じることになる。そんな貴重な体験になったということだろう。
今期の獅子座期は、様々な角度から2-5-8ハウスの価値の循環について考えることになった。皆さんはそれぞれにどんな体験をしただろうか。自分の価値観の所在について、何を大切だと感じ、何にNOを突き付けたくなったか。自分の価値の変動に対し、自分自身がどう向き合うことになったか。「ある」と信じていたものがなくなったとき、自分の自己価値の感覚はどのように揺らぎ、どのように対処しようと努めただろうか。ぜひこの期間の「価値」についての出来事を丁寧にふりかえってみてほしい。