
心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
今月の星宙予報は、三ヶ月に一度の特別号。
去る6/25(火)に行われた月イチ勉強会での夏至図リーディングの様子をお届けします。
出来事の当たる・当たらないではなく、考え方のヒント、考えをめぐらすことの重要性などとともに、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えします。
📺今回の見どころをnicoが解説!
都議選の結果が示す「危機感と活動サインの関係」
一昨日、行われた都議選の結果は、自民党敗退となり新たな政党が躍進。これは参院選の前哨戦というよりも、戦後日本の時代の流れを示しているようでした。
過去から続く「ボンヤリと現状維持されてきたもの」「まぁ何とかなるだろうと思っていたもの」が、「いよいよこのままではまずいぞ。この現実を修正していかなければ」と、日本の現状に危機感を持った人々が、「自民党はダメだ」とようやく離れる決意をした。
なじみのあるものから離れるのは、傷付く体験でもある。そんな厳しい選択をしてでも「新しい可能性を開いていきたい」、そういう兆候が見られました。そして、おそらく参院選でも同じテーマが続くはずです。
この「危機感」こそ、活動サインの現れです。
活動サインは、常に生きるということに切実な危機感を感じ、生存の欲求や自分の身は自分で守る感覚を持っている。実際に、311の原発事故のとき、慌てて東京圏から離れたのは活動サインの人たちが多かった。
もうひとつ、今回の都議選では世界的な流れと同様、外国人へのヘイト/排外主義的な思想をもつ政党が支持を伸ばした。これは、水瓶座冥王星的な「行き過ぎた多様性」に対する活動サイン的危機感――自分たちのテリトリーを荒らされ、生存を脅かされるような感覚――から、大切なものを守る生存の意識もあるかもしれない。
冥王星は、抑圧や暗い部分を引き出す天体です。これまで、グローバリゼーションやLGBTQといった多様性(水瓶座的価値)が進んできたのに対し、トランプのような人物がNO!を突き付け、突然、排外主義的な施策を展開しはじめた。人々の中に「自分の身は自分で守らなくては」という感覚が出てくるのは自然でもある。これが現在の活動サインのひとつの流れだと考えています。
ただ、活動サインが強いからといって、排外主義的に自分が危機を感じたものをバッサバッサと切り捨てていいのか。ここからチャートを読み解いていきましょう。
2025夏至、日本は柔軟サインの渦中が続く
四季図の流れ
春分ー夏至ー秋分ー冬至の四つの季節図は、ある一定のパターンを持っている。
概ね、春分ー夏至ー冬至のアセンダントは同じサイン、秋分だけ違うサインとなることが多い。起承転結の「転」に当たる部分であり、物事が転じていくと捉えている。
今回は、夏至のチャートで春分と同じアセンダント(ASC)ではないことが、まずちょっと特殊なケースです。この数年見たことがない。
そして日本においては、これだけ柔軟サイン強調が続いている。これは何を意味するのか。






これだけ柔軟サインが続いた後、2026年以降にアセンダントが射手座になる。まさに柔軟サイン的な「ままならない体験」をさせられる。何かどうなっていくのか分からない時代をわたしたちは生きていることが、まさに示されているのではないだろうか。
これから双子座に天王星も入ってくると、さらに柔軟サインが強調され、世界的に「寄る辺のない感じ」「何を頼りに生きていったらいいんだろう」という感覚が、ますます分からなくなってくる。柔軟サインに振り回されていると、どこにもたどり着けないまま不安定になるので、何か「決め」を打たなきゃいけない。
柔軟サインの意味する「ままならなさ」とは?
児童文学者に多い射手座。射手座に太陽、金星、火星をもつルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」、マーク・トゥエインの「トムソーヤの冒険」など、彼らの物語の主人公に共通するのは、自分の思い通りにならない、ままならない状況を楽しむマインド、そして知恵と工夫で切り抜ける力でした。
nicoの好きなセリフ「よし、地獄へ行こうじゃないか」についても紹介されました。
📺参考動画: 児童文学者に共通する柔軟サインの力とはー水星と木星が示す学び、成長、教訓
都議選では自民党が敗れ、力学の変化の兆しがあり、世界ではトランプのような活動サイン(蟹座)を強調して持っている人が、日々新しい動きを作りだしている。そうなると、今後、誰にとってもこうした活動サイン的な性質を強めていくことは大事なんじゃないか。
もし、トランプ政権がこのまま存続するとしたら、基本的に安定した政権は見込めない。彼は、(個人天体に)柔軟サインと活動サインを両方持っていますから、この行ったり来たりの揺さぶりをかけてくる。
柔軟サイン的に、そのときの思いつきでアイデアをどんどん提示しながら、自分はもう若くもないし、「よし、じゃあ地獄へ行こうじゃないか」というマインドで、やれることだけやるぞ!と冒険的なチャレンジを面白おかしく仕掛けてくる。
そして、活動サイン的なアメリカを守るための施策で、どんどん勝負を打ってくる。
日本は、こういうアメリカに合わせて動くわけにはいかないし、もう頼るわけにもいかない。
こういった世界情勢の中、柔軟サイン的に状況に任せ、「どうにかなるんじゃないか」と呑気に構えているのではあまりに頼りない。だから、活動サインとしての危機感を皆さんがどれだけ育てられるか、そして行動化できるかが大事になってくる。
もし、「自分はこのままではいけない」という焦りを感じている、頭のどこかで「自立し、主体的に生きていかないといかん」、今の時代を見て、「これじゃ駄目だろう」という思いを持っている、自分で事業や何かことを起こしていきたいと思っている人は、間違いなく活動サインの感覚を強めていくべきだと考えます。
この夏至の間、蟹座と獅子座の太陽期(6/21~8/22)、この2ヶ月は活動サインで動きを作っていくこと。誰にとっても、来る柔軟サインの時代に向けた大事な準備になるでしょう。
あなたにとって、いま「危機」を感じることはどんなことでしょうか。それに対して行動を起こせるとしたらどんなことでしょうか。
本編120分では、柔軟サインVS活動サインのせめぎ合い、強めておきたい活動サインの感覚、柔軟サインの時代性や今後の流れについて、もっと詳しく説明しています。
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今の時代に必要なのは「訂正する力」
ではここから、活動サイン的な動きに必要な重要な力として、「訂正する力(東浩紀)」を紹介したいと思います。
訂正する力とは
現在の新たな定義によって、過去の定義を組み替えて、新しい一貫性を作り上げていこうとする力。例えば、古代ギリシアの哲学者・ソクラテスは男だと思い込んでいる人がいた。ソクラテスは男だという前提かもしれないが、もし新しい発見があり「実は彼は女だった」と新しい話や情報が加わったとき、人はまず驚く。それから、これまでのソクラテスのイメージを修正して、新たなイメージと融合し、整合性をとっていこうとする力でもある。(nicoによる要約)
こうした能力があるからこそ、新しい出発や発見をしつつも、過去をなし崩しにしないで済むのではないか。
わたしが考える活動サインの人々、特に蟹座的なイメージのひとつは「バッサリと切り捨てる」姿勢。何か嫌なこと、イヤな人がいたら、蟹のはさみで「バッサリ」。世界を「好き」「嫌い」で切り分けたくなってしまう。これは、柔軟サインから活動サインへの移行が上手くできない人に多く見られる行動ですが、極端な断捨離もこれに当たるかもしれません。
東浩紀の言葉を借りると、「リセットではなく改良・修正」こそが重要であり、自分自身も含めて、あらゆるものは「訂正」という発想が必要だということ。
「バッサリ」「リセット」が好きな人は多いと思いますが、ここまで自分が生きてきたものをリセット=全部手放して新たにゼロからはじめるなんて大変なことです。意識的に改良を重ねていかないと、結局、何も手にすることができない。
また、東浩紀は「前進のためには復古しかない」とも言っています。例えば、自民党がやってきたことをなし崩しにするのではなく、「良い点」「悪い点」といった価値の再評価をし、そして良いところは復古させる。そこから改良を重ね、新しい時代に活かしていく。そういった姿勢が必要ということ。
自分は昔かつてこう考えていた。けれど今はそれを修正し、別のかたちでやっていく、すると自分の新しい可能性が開けていく、常にそういう状態を作っていきましょうっていうのは、活動不動柔軟のすごい豊かな流れだなと思っているんです。そして自分の人生を見つめ直し、過去に何をしてきたか、これから何ができるのか。そこから訂正の機会を作れるといいのではないかと思います。
そして、『訂正する力』の提案で、活動サイン的にもっとも重要なテーマは、周囲に対して職業や役割といった属性を売りにするのではなく、属性を超えた個人として判断される環境を作ること。
この属性を手放す、というのは、牡羊座土星の目標であり、山羊座土星を訂正することでもあります。
牡羊座土星は、古典占星術の品位でフォール(下降)であり、土星的な力が落ちる配置。
一方、土星は山羊座でもっとも力を発揮し、組織を管理/統制するために所属と属性を守り、それが居心地の良さにもなる。
今回の都議選は、まさに山羊座土星的な自民党と、それを否定する牡羊座土星的な少数与党という図式。この自民党一強という属性を手放し、新しい個の属性をつくるのが牡羊座土星の働きだとすれば、もう牡羊座の土星が来た時点で、自民党が破れていく流れは自然なんです。
だから、わたしたちも自分の属性を超えた何かで判断されるような環境を作っていかないと、これからは何にも勝てない。誰かがつくった肩書、立場、役割、看板にすがるだけでは、生き辛さを感じるし、自分自身が面白くなくなっていく。だから、自分で属性をつくる。自分自身に所属する。
これが訂正する力であり、活動サインに向かっていく流れです。
その属性が、今崩れつつあるなら、日本はずっとアメリカの属国だった。これまでは、アメリカをずっとベンチマークにして、彼らが向かう方向を見つつ距離を測りながら、意思決定してきた。
しかし、トランプ登場以降、そうもいかなくなっている。戦後80年を迎えた今、これまでの親密な絆を切り捨て、ここから日本はどうしたいのかを考えていくのにふさわしい時です。
でも牡羊座土星ですからね。どうやって生きていくか分からない、よちよち歩きの状態ですから、まずは自分をベンチマークすること。
自分の中の「こうなりたい」思いをベンチマークにして、それに合わせて訓練していくと、自ずとやりたい方向に向くのではないかと思います。
さて、自分はいったいどう在りたいのか。その問いのヒントとなるのは、戦後続いてきた日本とアメリカの関係性。二国間の在り方を引用しながら、これからの時代にふさわしい「間」の取り方について、思想家・江藤淳の言葉を借りながら解説しています。→本編はこちらで
わたしだけの専門的な生き方を作る、木星の12年
活動サインの話がたくさん出たところで、6月10日、蟹座に入った木星の影響を考えてみます。
木星は、自分らしい専門的な生き方を開発するのに、非常に使える天体であることを私自身、実感しています。木星のトランジットは、滞在しているサインの弱点――自分にあるのか/ないのか、埋もれているのか、新しく必要としているか、そういう能力を刺激してくる。だから、一年ずつ12年間、12サイン分を体験していくことで、プロフェッショナルとして成長できるはずなんです。
まず目的を集中させ、的を絞ること。そして、「石の上にも三年」の精神で、少なくとも三年は同じことに集中して取り組み続ける。そして六年で半人前、十年でやっと一人前、そんなイメージで進んでいく。
去年、木星は双子座に滞在しており、とても相性の悪い配置でした。人に煽られたり、勝手に人と比べて落ち込んだり、とにかく自分に集中しにくい一年でした。
しかし、木星は蟹座でエグザルテーション(高揚)し、自分のアイデンティティを確立するのにふさわしく、一個人として場に出ていく/表現する力を育てるのにふさわしい時期となります。
木星のトランジットの使い方
木星はタイムクロックとも言われるほど、運行が分かりやすくスケジューリングしやすい天体です。本編では、木星を自分の個性化のためにどう使えるか、4ヶ月ごとの計画の立て方などを詳しく解説しています! もっと詳しく知りたい方はこちらから
📣参加者の声
わたしは「アイデンティティじゃないの? 自分のアイデンティティをはっきりさせないと、結局ゴールもないんじゃない?」ってモヤモヤしてたから、今日の話はとてもばちっと来て、すごく腑に落ちた。あと自分は(活動サインの)「リセット癖」があって、相手に対して常にハッキリしろと詰め寄ったりしていたから、柔軟サイン的な人には申し訳なかったと思いました。
今はこうして心理占星術を知ったから「曖昧さが心地よい人なんているんだ!」と思える。でも、世の中って、みんな自分が当たり前で生きているから、自分と違うと敵に見えてしまう。だからいつも相手を心の中で抹殺していました。
自分はアイデンティティがはっきりしている、そういうタイプの人は結果や勝負、生きるか死ぬかではなくて、相手に対して「そういう人もいるんだな」と柔軟性が必要。アイデンティティがない人は、「あなたの看板はなんですか」っていう活動を頑張るっていう話だと思いました。(N.Fさん)
📺見逃し動画を配信中(有料)2025夏至号
この記事では紹介しきれなかった、詳細な時期や具体的なアドバイスがたっぷり詰まった120分。タロットカードで時期を読みながら、月ー冥王星のアスペクトについても考えを深めています。是非、本編でご確認ください。
後半60分は、パートナーシップの関係性から隠れた欲望を見出す心理占星術ならではのチャート分析をご覧いただけます!