蟹は甲羅に似せて穴を掘る — 村上さなえ×nico所長 占い師になる! VOL.1

クライアントは自分の写し鏡

村上さなえ(以下S):さっそく始まりました~。(拍手)村上さなえとニコラボのnico所長がお届けする「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」。なんかさあ、「nico所長」って、かわいいよね。小学校の学級新聞みたいで。(笑)

nico(以下N):勝手につけて、勝手に茶化さないでくださいよ。って、なぜ「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」というタイトルなのかというと…

S:「逃げ恥」みたいに何か格言っぽいタイトルがいいよね、とかって話していて。「カニは自分の大きさに合わせて穴を掘るところから、その身分や力量にふさわしい言動をしたり、望みを持ったりするということのたとえ」ってことで。これだ~と!

N;私たちの自戒も込めて、ってことですよね。ところで、これまで、さなえさんと「星を仕事にしよう」というセミナーを二度ほどやらせてもらってますが、さなえさん、そこでいつも話をしてくれるのですよね。「クライアントは、自分の合わせ鏡である」って。だから、クライアントの悪口を言ってはいけない。それはなぜなら、どんなクライアントも自分が引き寄せているのだからって。

S:そうそう。例えば、ニコちゃんは、自分でこの「ニコラボ」というグループを主宰したり、大きいイベントを取りまとめたりするじゃない。やっぱりそういうタイプの人には、会社やってたり、起業家の人だったりといったクライアントがついていくのよね。私のクライアントには、アーティストやもの作りとか、そういうクライアントが多いわけ。私自身、自分で本を書いたりとか、個人の作業が好きだし、やっぱり、人には人の器に合ったクライアントがつくものだと。

N:なるほど。そういう意味でも「クライアントは鏡」と。

S:だから、クライアントの悪口を言うっていうことは、天につば吐く行為だと。自分の悪口を言ってるのと同じことだと、占いを仕事にする人は、肝に銘じるべきだと思うのよね。けっこういるのよ。クライアントさんをけなす占い師さん。

自分が成長することでクライアントの質が変わる

N:私、駆け出しのころ、よく思っていたのですが、クライアントに向けて話している言葉が、なんだかちゃんちゃらおかしく感じることがあったのですよ。こんなにエラそうに話しているけど、じゃあ自分はどれだけできているのかって。自分が話している言葉の、どれくらい、私は人生に反映させることができているのだろうって。そうしたら、言葉が嘘くさく感じちゃって。それから、自分が人生の中でできていないことは、エラそうに言うのはやめようって思うことにしたという経験があります。

S:前にね、不倫を繰り返していた占い師の人が、晴れて離婚して、その後バツイチの実業家と付き合うようになったのね。シングル同士。そしたら、その人のテーマが不倫から自己実現に変わっていった。これまでさんざん男と女の話をしていた人が、自分の恋愛が安定すると次のステップに行くわけ。そうするとクライアント自体が彼女に合わせて次のステップに行ったり、同じように自己実現をテーマにしているクライアントに変わっていくというのを横で見てて。

だから自分が成長していくと、クライアントの質も上がっていくし、クライアントの質が上がっていくと同時に、まだ過去の自分と同じように悩んでいる人へのアドバイスもすごくしやすくなるから、クライアントの幅がどんどん広がっていく。そういうのってあるよね。

N:うん、うん。占いをする側が多くのことを経験することで、占いの質も変わっていく。そうやって自分の経験を意識することが大事ですよね。

S:そうだね。

N:よく講座で言うことなんですが、初めて占星術を勉強したとき、ああ、これはいいものだなあと思ったことがあるんですよ。占星術って、「人生に無駄なことはない」って思うことができる素晴らしい学びだなあ、仕事だなあって。

S:出ました格言!今日の格言!「人生に無駄なことはない!」

N:ははは。例えば、趣味であっても読んできた本であっても、または流した涙であっても(笑)、すべてコンサルテーションに生かされるなあとしみじみ思いますね。これだけ自分の人生が反映できる仕事はないなって。これが占いを勉強したり、仕事にしたりする醍醐味じゃないかな。何年やってきても、今でもやっぱり、そう思いますけどね。

占い師になるきっかけとは?

S:そう考えると、例えば、私が星占いにはまったきっかけは、簡単に言うと、「占いの原稿を書いたから」というのがあって。一般論として、普通に占い師になりたくて、学校に行くっていう場合は、やっぱり、恋愛を入口にして入ってくる人が多い気がして。講師経験が多いnico所長からみてどう思う?

N:占いを勉強するきっかけは、占ってもらうのが好きだったからっていう人が圧倒的に多い気がしますね。

S:そこで占ってほしいことというのは、ほとんどが、自分の愛の行方だったり、自分の行き先だったりを教えてもらいたいのよね? そういう占い好きって呼ばれている人が今度占う側の立場になりたいっていうステップはどうやって始まるんだろうね。

N:単純に好きなものを仕事にしたいということだと思うのですが、よく聞くのが、「恋愛で悩んでた時に、ズバっと当てられて、すごいなあと思った」とか「落ち込んでいた時に、占い師さんの言葉が救いになってうれしかった」とか。現場の体験から入る人は多いかもしれませんね。

S:うんうん。コンサルテーションを受けて、星読みに納得して、自分でもホロスコープを読めるようになりたいっていう人は多いよね。それで、セミナーや講座に来てくれる人とかもいるもんね。でも、どこから占い師っていうものになっていくんだろうね。

N:まあ、よく言うのは、MCの覚悟っていうか、「占いで食べていこう」って自分で決めたときが占い師のスタートなんじゃないかと。なぜなら、占いには資格があるわけじゃないから、自己申告だけで、いつでも気軽に始められるわけですが、まあ、だからこそ職業として成り立ちにくいというのも逆にあるわけで。

S:でもどうなの。友達とかあまり見ないで仕事にしちゃおうという人もいたりするのかしら?

N:いると思いますよ。仕事にするために勉強している!という意気込みの人も多いと思います。

現場は何が求められている?

S:実際問題、教える立場から見て、ポンと背中を押せる感じっていうのは、スキルなのか、あるいは社交術っていうか、コミュニケーション能力っていうか。これは外に出したら迷惑だろう(笑)っていう人も中にはいたりすると思うんだけど、そういう時、nico先生はどこでそこを見極めるの?

N:さっきもお話しした通り、自分で覚悟すればなれるわけだし、この仕事は自分自身が看板になる仕事だし、だから最後に責任を取るのも自分なわけで。だから、やる覚悟があればやるべきだと思っています。まあ、仕事ですから甘くはないわけで、敷居が低い仕事であるからこそ、気軽に始められたとしても、うまくいくとは限らないし。そしてもちろん、人と人とのつながりで成り立つ仕事であるわけだから、コミュニケーションのスキルはあってしかるべきですが。

S:そうだよね。

N:最初の話に戻ると、やっぱりクライアントは写し鏡なので、女子高生しか客がつかないおばちゃん先生とか、占いのスキルというより、ギャル語でバンバン話すみたいな人がいて。

S:へぇ、それはそれで面白い。女子高生のエキスパートなのね!

N:まったく客層変わらずに、しゃべり方も女子高生、ファッションも女子高生、ずっときゃぴきゃぴな感じで。でも、それはそれでひとつのニーズとしてはあるわけで。占星術のお勉強は、奥が深いのでやっていてソンはないですが、現場はまた違う能力が求められるのは確かですね。

S:私たちは90分とかでじっくり鑑定する組だけど、10分でパッと答えが出させる人とかもいるもんね。街の鑑定の人とかね。

N:中にはチャートとかちゃんと見ないで、「大丈夫、大丈夫、9月になれば答え出るから」とかやってる人、今、絶対根拠なく言ったよねーとかいう感じでも、元気になって帰ってもらえればいいんですよっていう考え方もある意味、街の鑑定ではありかもしれないし。

S:それがまったく何にもないわけじゃなくて、印象だけにせよ、PCがあって、チャートがあったり、今の星の動きがあったりっていうよりどころにはなっているかもしれないしね。あとは、まだあんまり詳しくは見れなくても、「ハイ恋愛、ハイ金星ね」くらいの読み方をするにしたって、根拠はないわけではない。まあもちろん、「私が高校生だったころの恋愛はさあ…」とか言われても困るけどね。(笑)

N:「初恋か…ちょっと思い出してみるね」とか言われてもね。(笑)

S:いろんな占い師さんも次回以降、ゲストとして招いてお話を聞いてみたいね。面白そう。私たちには私たちのやり方しかわかってないというのもあるしね。

心理占星術って何?

S:ところでさ、nicoちゃんがやっているのは心理占星術って、普通の西洋占星術と同時違うの? そこよく分からない人って多いと思うのよね。

N:他の方がどういう意識で「心理占星術」という言葉を使っているかはわからないですが、私は心理カウンセリングと占星術を組み合わせたものとして心理占星術を捉えています。占星術はクライアントが持ち込んだテーマに明確な答えや着地点を導き出していく、また未来を予測し、それにどう備えるかを助言する技術ですけど、心理カウンセリングというのは、クライアント自身が自分の力で最良の答えにたどり着くことができるようサポートをするというもの。

S:なるほど。

N:で、心理占星術というのは、ホロスコープやトランジット図を使って、その人が現実的に到達可能な着地点、「ここまでだったらいけるかな」と思えるステップを提供するもの、最適、最善の道のりを進めるようサポートをする技術なのかなと自分では位置づけています。ドラマチックな鑑定ではないですが、その人の成長に合わせて行うものである、という感じでしょうか。または、「幸せになれる」といった抽象的な言葉でストレスを与えないようにということも気をつけていますけど。

S:独身の女子だと、「いつ結婚できますか」って聞くけど、本当は「なぜ結婚できないのか」という質問のほうが気づきがあるわけだけどね。

N:ブースに出ている人たちは、そこをジレンマにしていますね。クライアントは、「自分が努力しなくちゃいけない話には耳を貸さない。さっさと出会える時期と、そして相手はどんな人なのか教えてほしい」そこだけ聞ければ満足だと。

S:または、相手との相性はいいのか悪いのか、そこだけ聞きたいとか。

N:いいと言われることしか期待していない。占いって何を求められているのかと思うことがありますね。クライアントは、ほしい答えだけを聞きたい。だから、現場では暗黙の了解みたいに言葉のやり取りが進む、とかいう話はよく聞きます。

S:全部否定、否定、否定されちゃあクライアントもつらいけど、その辺、難しいよね。

自分らしい鑑定スタイルって?

S:でも、自分の好みのスタイルってあるよね。以前「よい占い師を見極める方法ってどのようなものですか」という取材を受けたことがあるんだけど、その時私が言ったのは、メールでも電話でもやり取りをしたときの言葉の使い方が気に食わなかったら、まずそこに行っても気持ちのいい言葉は聞けないのではないかって答えたのね。

あともう一つは、コンサルの場所、家なり喫茶店なりが、自分の好きなインテリアだったりとか、そういう感性が合うっていうのは大事じゃないかって。

N:ティルも本でそんなこと書いてましたよね。自分をどう見せたいかっていう、演出はとても大事になるって。

S:立派な書籍がバーンと並んでて、大きな机があってとか、そういう権威づけが好きな人は、多分ティルの言うことを聞けるっていう図式ができてて。彼は「どうだ!俺に任せろ!」という型出しをするタイプだから、そこにはまればその鑑定はよかったということになるわけで。まあ、私たちはスタイル重視というよりは、「クライアント一番」って考えるわけだけど(笑)

N:(笑)ティル本には、犬、猫は気が散るからダメって書いてありますが、うちは猫込みでやってますが。

S:私の母親は、犬猫絶対だめだから、そうなるとニコちゃんのところには間違いなく来ないわけで。

N:そうですね。うちは猫にも癒されてくれる人が来てくれれば。

S:ティルの本にも書いてあったけど、宅配便とか来ちゃうときとか困るよね。最後のいいところでピンポーンって。感極まったいいところでとか、あれ、いやだよね(笑)

N:(笑)でも、自分がどう見せたいか、どんなスタイルを大事にしたいのかを考えるのは大事ですよね。庶民派として売りたいなら、庶民的な言葉や雰囲気を大事にするとか。成長とともに変わっていくのかもしれませんけど。

S:来ている服とか、使うスマホケースにしても、全部「自分らしい」ということにこだわることで、その「自分らしさ」に見合ったお客さんが、やってくる。「蟹は甲羅にの“かにこー”」としては、そこにこだわりたいというか。このnicoちゃんのスペースもnicoちゃんらしいセンスだしね。

N:そうですね。どんな甲羅を見せるかはね。

S:うん。毛ガニなのか、タラバなのか、ワタリガニなのか(笑)

N:さなえさんは、どんな甲羅やっているんですか。

S:私の甲羅は、きれいです。(笑)家がね、とにかくすっきりしてて、初めてのクライアントさんには割と驚かれる。占い師の家って感じは全然しないと思う。ごちゃごちゃしていないところで、色もないところで、自由にゆっくり語ってもらうという感じかな。

 

なぜ星の仕事を始めたの?

N:ところで、さなえさんは何で占星術を仕事にしようと思ったのですか。

S:最初はまったく思っていなかったんだけど、占星術の勉強が面白かったの。ホロスコープの勉強が。

N:うん。同じ同じ。

S:あんまり面白くて止まらなくなっちゃうと、やっぱり人のを見たくなるというときに、自分と同じくらいの友達を見るということになり、そして友達は喜ぶわけで。それで、やっていって、「へーっ」ってなる。最近だいぶ変わってきたんだけど、最初の5年とかは、12星座の説明とかしちゃったりしてて、長くなるのは当たり前なんだけど。

N:えっ!鑑定中にですか。

S:そうそう。ざっとよ、ざっと牡羊座から魚座まで「こうなっている12星座の流れのここらあたりに、あなたの場合こういう星があるんだよね」っていう説明をしたくてしたくて仕方なくって。

N:笑

S:12星座の流れの話が大好きで、でそこに、パーソナルな天体を書き込んでいって、「ほらほら、ここに恋する女の子がいてねー」みたいなことで、自分をイメージしてもらうってことが好きで。で、話が込み入ってきても、「ほらほら、これがさっき説明した、この金星の女の子で…」とか、ふたりの共通の言語ができるところが楽しくて楽しくて仕方なかったんだけど。成長と共に、最近はうまく端折ってコンパクトに説明できるようになった。

N:じゃあ、鑑定を続けられた理由は、とにかく楽しかったと。

S:そうそう。こんなに楽しくやっているのに人助けにもなっているってすごいなって思ったし、で、このふたつのうちのどっちかがなくなったらやめようかなって思っているの。いつもね。で、最初の「クライアントは自分の鏡」の話に戻るけど、自分がイケてないって思うってことは、クライアントもそう思っているはずなわけだから、そういう時はちょっと休めばいいかなって思ったりしてる。幸いずーっと続けられてるけど。

天体の象徴をどう扱ってきたか

N:私は占星術を勉強し始めたときは代官山に住んでたんですけど、家の裏に第一線で活躍しているフォトグラファーとかスタイリストとかをマネージングする会社があって、縁あって、そこでマネージングの仕事を手伝っていたんですけど、アーティストの人たちってみんなアグレッシブで成功欲求がものすごく強くって。まだ勉強したてなのに、みんなに見て見てって言われて。

S:わかる、わかる。

N:作品とか、作風とか、仕事の仕方と、それぞれの方のホロスコープを照らし合わせて見るのがなかなか面白くって。今思えば、ありがたいスタートだったと思います。今でもクライアントでい続けてくれていますし。

S:私も口コミでやっているのだけど、その核となっている人がやっぱりファッション系、広告系だったりするので、そうすると、こんだけぶっ壊れた金星だったりなんだったりというのが、教科書で読むと浮気性とかでくくられちゃうものが、使い勝手として、こうなるんだなというサンプルをたくさん見ることができたっていうのはいいよね。

N:いいですよね。教科書から入ったんじゃなく生きたサンプルから入ると、象徴は柔軟に読んでいいんだな、例外があっていいんだなって思えますよね。

S:例えば、恋に煮詰まっちゃっているOLさんなんかにも違うアイデアの提供ができるよね。

N:そうですね。スクエアだって、というかスクエアだからこそ、こんな力強くインパクトをもって使っていけるんだという励ましになりますね。最初から、象徴のよい使い方といか、成功の形というのをみることによって、ホロスコープの利用の方法を学ばせてもらえたというか。

S:そうだよね。

N:学び始めから、「私のチャートには○○があって難しいんですよ」とはならず、こんなふうに使えば、もっと面白い人生が生きれるんだみたいな。そういう発想のもので学んでこれたのは、ほんとラッキーだったかもしれないですね。

S:最近の教科書は極端なものの書き方はしてないけど、まだベネフィックなのかマレフィックなのかとかっていうことに勉強している人たちが囚われちゃっているという。だから、ものすごく大変そうに見えるけど、いきいき元気にやっている成功者のチャートを見る機会があるっていうのはものすごくいいよね。

N: — って、結構、私たち、いい感じに話せたんじゃないですか?

S:そうだね。ゆるい感じに始まったけど、次回からはテーマ決めてやりましょうか。

N:次回は、ふたりの現場におけるテクニックの話でもどうですか。現場でのテクニックにどうやってたどり着いたのか、そういう技術的な話でもしましょうか。

S:そうだね。そうしましょう。

N:それから、占い師になりたい人や、占い師として壁にぶつかってる人からの質問などにも答えるコーナーもいいですね。

S:初心を思い出しながら、一緒に考えることで、私たちも成長できそう。

N:私たちも、まだまだ甲羅を大きくしていきたいですからね。

S:さすが、nico所長、むりやりまとめたね。(笑)

 

村上さなえ 占星家
東京生まれ。魚座の太陽・牡牛座の月。
女性誌、若者向け月刊誌や、PR誌の編集者としてキャリアを積んだ後、1998年より、占星家としての活動を開始する。
未来予測ではなく、自己再発見をテーマにしたコンサルテーションやセミナーが特徴。クライアントには、芸能人やクリエーターも多い。本の出版、雑誌、WEB等での執筆、セミナー、星座別ファッション提案など、活動は多岐にわたる。
著者に『30歳からの星占い―愛もキャリアも手に入れる!』(論創社)、『Venus’Rules ヴィーナスのルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)ほか。
村上さなえ公式HP 
ツイッター @sanaemurakami