蟹は甲羅に似せて穴を掘る — 村上さなえ×nico所長 占い師になる! VOL.4

占い師っていう肩書は…

nico(以下N): なんと4回目です。早いですね… もう夏至ですね。

村上さなえ(以下S): 梅雨ですね。

N: 今日の話題ですが、いまさらですけど、テーマをサインと絡めてみるのはどうでしょうか。今度は蟹座の太陽なので、蟹座っぽいことについて話すとか。自分の居場所作りについてとか、私らしい世界観を作るというのはどういうことか。

S: 蟹座ね。オーケー。「家族と私、占い師になるにあたって」とかね。

N: そうそう、ちょうど今日、そんな話を聞いたばかりだったんですよね。家族にも職場の人にも、占いの勉強していること、占い師になりたいっていうことが言えないという話。「占い師」という肩書で居場所を作っていくというのは難しいものなのでしょうか。

S: そうね。私も「占い師」っていう肩書きは、なんか抵抗あって、でも占星術研究家と胸を張れるほど「研究」してないし…。それで、「占星家」という肩書を自分なりに作って、メールとかでは、「占星家の村上さなえです」とか書いたりしてたんだけど、文字では分かるけど、耳で聞いても分からないじゃない?友達とかに紹介される場合は、シンプルに「占い師」って。最初のころは、やっぱりちょっと「占い師」っていう響きに違和感があったよね。口頭では、「西洋占星術やっているんです」っていう謎の肩書でしばらくやってて。でもまあ、最近は「占い師」で通じやすいんだったら、まあそれはそれでいいやって。でも、やっぱりなりたては、占い師って言葉に、お尻がもぞもぞするっていうか、慣れない感じはあったね。

N: 肩書、MCってわかりやすいものじゃないと認知されないっていうのはありますよね。私は、自分がやっていることがどういうことかわかってもらいたくって、「心理カウンセリングと占星術というのを結びつけた心理占星術っていうのをやっていて…」とかまわりくどい紹介の仕方を今でもしていますが、結局、友達にすらいまだ何やっているのかわかってもらえてない。友達とかは、私のことを「なんか小難しい話とかして、楽しく暮らしてるんでしょう?」とか言ってる。(笑)まあでも何をしているのか、周囲にわかってもらうのは難しい種類の仕事ですよね。

S: そうだよね。

N: 代官山に住んでいた時、すごく親しくしていたデザイン事務所の社長さんがいて、マンションが隣同士で、震災後、仕事がうまくまわらない時期とか、ふたりで「頑張ろう」とか励まし合ったりしていて。で、その人から「代官山の異業種のパーティがあるけど一緒にいかない?」って誘ってもらったことがあったんですね。「行きます!」って答えたら、「でも占い師っていうの隠してくれる?おかしな関係だと思われるから」って言われて。「えっ!」って。これだけ仲良くしてたのに、私の仕事に対して偏見があったのか!と。

S: 男性?

N: はい。仕事の話をよくし合っていたのですが、公となるとまた話は別なのだなあと。親しい人からも偏見を持たれることはあるかもしれないですね。

S: 私、コンサルにきた男性に「占い師って、不幸になるって言うじゃない?」って言われたことがある。

N:占ってもらって、それはひどいですね。(笑)

S: あと、よくあるのは、占い師って言うと霊能者と勘違いされるんだよね。「江原さんみたいなもの?」って。「やだ、いろいろ見られちゃうの怖い」とか。別に霊能者を胡散臭いとは言わないけど、占星術を勉強して、ホロスコープを読み解きしているのと、天から与えられた霊能力を使ってするコンサルとは、明らかに違うものね。逆に霊能者が占い師というくくりで仕事していたりするよね。今ではスピリチュアル・カウンセラーとかっていう肩書があったりするけど、昔の霊能者は占い師だからね。業界じゃない人からしたら、みんな同じくくりなんだよね。

N: 最近、銀行の人と話をする機会があったんですが、「占いってどのくらいの市場なんですか?」って聞かれたんですけど、占いって今、一兆円の市場があるらしいですよ。

S: あるだろうね。サイトとかね。

N: 江原さんのおかげで「スピリチュアル」が認知度上がったらしいですよ。占いビジネスも急成長したらしいです。それだけお金なりが動いていたら、やっぱりイメージとしてはスピリチュアル寄りに思われるのは仕方ないかもしれないですね。クライアントさんとかは、たとえ口コミであっても、私が心理占星術をやっていようが、スピリチュアルをやっていようが関係ないという人もいますからね。子供のことを見てもらいたいのですが、子供が写っているビデオとかお見せしたほうがいいですか? 霊視とかしていただくなら映像が必要ですよねとか言われたりすることありますもの。

S: ある、ある。

N: 占星術の技術を身につけても、クライアントさんにはそれが何なのか実際にはわからなかったりして。

S: 占いっていう言葉のイメージとかね。

居場所を作るということは、自分のスタイルを持つということ

N: だからこそ、自分で場を作って、何をやろうとしているのかを明確に打ち出していくというのは大事なことかもしれませんね。

S: 何を目指すかっていうのをはっきりさせるといいよね。そういう意味で、自宅なのか、ブースなのか、カフェなのか、自分が占い師でやっていくには、そこをひっくるめたスタイルっていうのは大事になっていくよね。

N: そうですね。居場所やスタイル= ICからMCを目指していくということですね。環境づくりが個性になっていくということですね。

S: どんな状態でやっていたいかっていうね。ブースでずっとやっていくっていうのも一つのスタイルだからね。

N: そうですね。ブースの面白さは、いわゆる一期一会ですものね。ふらっと立ち寄ってくれたお客さんを相手にするっていう。さなえさん、ブースに座ったことありますか?

S: ないのよ。面白そうだなって思うけどね。なんか想像すると、恥ずかしい…。

N: え? 恥ずかしいなんていうタマじゃないじゃないですか。(笑)

S: ちょっと修行してみようかな。

N: おっ!ぜひ! この前、夜遅くに新宿の小田急百貨店の前を歩いていた時に、手相占い師のおじいちゃん、おばあちゃんが3人出ていて、結構お客さんが並んでいて、若い女の子たちが楽しそうに話を聞いてるんですよ。やっぱり、ああいうスタイルが占いの原点なのかな、誰かの居場所になるっていうのが、占いの良さなのかなって思いますよね。
前に言ったかもしれませんが、10人くらいの仲間たちと「ジプシー・キャラバン」っていうチームを作ったことがあって。

S: 占い師ばっかり?

N: はい。占い師10人でゲリラ的に表参道にゴザ敷いて、ワンコインで占うっていうのをやったんですけど、いつも1時間くらいすると警察に追い払われて。いよいよ、最後は警察に「二度とやりません」っていう念書まで書かされてやめたんですけど。面白かったですよ。いろいろな人との出会いがあって、芸能人とか、酔っ払いとか、さみしい女子とか。いろいろなやり方で自分たちのスキルを試したかったっていうのがあるんですけど、まあ時々は所属を変えて、スタイルを変えてやってみると、自分のやりたいことの見直しにはなりますね。

S: とにかく事前にホロスコープを準備しないでやるっていうのはいいね。

N: 偶然の出会いの中での鑑定はドラマがありますものね。でも、いつも自分の居場所でやっているとしたら、出張鑑定の時とかはどうですか? 私は意外と苦手ですね。ペースがうまく作れないことがあったりして。最初のころは、クライアントのお店、会社とかでもやったりしますけど、相手の作り出す空気に飲み込まれることもありましたしね。相手に気を遣って言いたいことが言えないということもありましたし。

S: そうね。カフェでもどこでもいいから、自分の居心地のいい安定した場所を持つっていうのは大事よね。

N: そうですね。キャリアを重ねると、どんな状況でやると自分らしくできるかとか、わかるようになりますよね。関係性の中で自分のやりやすい環境づくりができるようになっていく。

S: そうだよね。犬とか連れてきちゃう人とかいて、思わず犬に向かって話しかけちゃったりして。あと連れ立ってくる人とかもダメだよね。始めたばかりの頃は、2人一緒に見たりしてたけど、今は1時間40分後に戻ってきてねってどちらかには、散歩してもらっちゃうもん。右に行くとコンランショップ、左に行くと明治神宮とか言って。

N: 深い話ができないですよね。

S: できない質問が出てきたりしてね。一対一でちゃんと向き合わないとね。

N: ブースでもなんでも、自分のスタイルが出しやすい環境をつくらないと技術は磨かれないかもしれないし。

相手の気持ちになってみることができるような質問がしたいよね。

N: さなえさんはトークの磨き方って何かありますか? さなえさんはもともと書く人だから、やり取りというよりは筋書きというか自分の世界を構築していく感じですよね。

S: 水星が逆行だからかしらね。

N: 逆行なんですか!水星の逆行を最大限生かしたスタイルを作っていますね。すごい!

S: でもね、あーって思うことあるよ。新幹線とかえ見知らぬ人とのちょっとしたやりとりのときに、うまい切り替えしができないときとか。「なぜ私はここで気の利いたことを言い返せなかったのか!」とか。 いるじゃない、時々、気の利いたこと言える人。

N: 日本人には珍しい気がしますけどね。外国人は切り返しがしゃれていますよね。

S: わかる。ウィットとか、ああいうのって訓練だと思うの。

N: さなえさん、でもいつも面白いじゃないですか。昔から面白い子供だったんですか?

S: うん。話盛っちゃうタイプだったよ。でも引き出しに言葉を入れておくって大事だよっていつも言ってる。シナリオのパターンをいくつか持っているといいんじゃないかな。鉄板のネタ、私いくつか持っているもの。相手の緊張を解くためのネタ。そういうのみんな持っておくといいと思う。例えば、カタカタネームをつけている人だったら、「私の名前にはこういう意味があるんです」とか、ある種の入り口ネタというか、リラックス用のネタはあるといいよね。ニコちゃんは?何かトークの磨き方ってあるの?

N: 私は変化球が出せないからな。いつも直球。トーク力というよりは、テレビの仕事をやっていた時、インタビューをたくさんやらせてもらっていたので、人の話を聞く姿勢というのは訓練されているのかもしれないですね。インタビューって、限られた時間の中で、その人の一番大切にしている核心にどんどん入ってかなくちゃいけなくて。自分から面白いものはあまり出てこないかもしれないですが、人に興味がある分、人の面白いところを引き出すのは得意かもしれないなあ。人生で大事にしているところを拾うというか。まあ、もう少し笑いをとってもいいかもしれませんね。

S: そうね。内容はどうであれ、話のスタイルというか展開のスタイルというか、そういうのを持っておくのは大事だよね。

N: 私の抱えているプロジェクトに「火星見守り隊」というのがあって、それのオーディションをやっているのですが、スタッフで人の話を聞くのが苦手という人がいて、「人の話なんて5分聞いてると飽きちゃって」とか。今回、朝から晩まで人の話を聞くというのを一緒にやっていて、そのスタッフが「人が話をしながら自己開示をしていく様子とか、どんどん顔つきや声のトーンが変わっていくのを見ていてとっても驚いた」と言っていたのです。

S: 人に興味ないと、質問もあまり出てこないかもしれないよね。そういう人が、そういうやり取りを見るのは刺激になっただろうね。

N: そうですね。だから、私がこの仕事を辞めるときは、人に興味をなくす時と言うか、ワクワクして質問をすることができなくなる時が辞め時かもしれないです。

S: 私は、人がする質問の意図というか、奥にあるものを知りたいっていつも思うのよね。例えば、面白い答え方する人がいるんだよね。「お仕事何やっているんですか?」に「普通の事務です」って。いやいやいやいや、普通って何?どんな会社で何扱ってるのかとか、いろいろ知りたくなるのよね。「なんで?」ってね。

N: わかるわかる。

S: 仕事、やめるにやめられないんですよね。本人が辞めたいのに、やめるにやめられない事情って何なんだ?で、「なんで?」ってどんどん突っ込んじゃう。

N: (笑)わかる。そういう純粋な好奇心が現場を支えていますよね。

S: 相手の気持ちになってみることができるような質問がしたいよね。

N: 共有できる部分を探している気がしますよね。

S: こういう人がこのホロスコープを生きると…、というところから物語がはじまるわけだけど、それが見えてこないとね、何も理解できないよね。

言いづらいことをちゃんと伝える技術

N: 起承転結の「結」に着地するためには、導入の部分が一番大事なんですよね。例えば、NLPとか型があるものを学んでいる人は、そういうのを利用すればいいですけどね。

S: そうじゃない人は、自分なりの導入のパターンを作っていくのは大事よね。終わりのパターンも大事。私の場合は、これからの大事なポイントをもう一度繰り返して、「私は、言い切れてスッキリしたのですが、○○さんは、いかがですか? 他にご質問ありますか」というような形で、締めくくることが多いかな。スッキリするのが難しかった時も「ここはスッキリしなかったけど、こちらはスッキリしましたよね。」とかね。

N: でも時々、もやもやするのが残る時ってあるじゃないですか。伝えきれていない、うまい着地ができなかったなあとか。そういうときは、スッキリするまで話す感じですか?

S: 時間が許す限り。「さっきも話したけど」って確認する感じで。でも例えば、どうしても結婚したいというクライアントで、いま付き合っている彼が結婚に向いていない、そしてする気もないってことを本人も分かっていたりして、ホロスコープ上も、そうね、結婚むきじゃないかもね、って、クライアントも私も納得してる場合ってあるじゃない? それでもどうしても結婚したい人って、絶対スッキリしないわけじゃん。「大丈夫、そんな強い思いがあれば、いつかは結婚できますよ」なんて、こちらも言えないし。

N: 言うべきことを伝えきれないときってどうしてもあって、クライアントが望んでいる結果にならないこともあって、何となく釈然としない感じがある中で、やっぱり現実的な解決っていうか、現実っていうのは厳しいものだから、言うべきことをきちんと言えて、それでもお互い了解をえることができたという、そういうところに着地できるときが一番充実するかもしれないですね。いまだにそういう時は勇気がいるのですが、不安がらずに言えるようになった時に、むしろ喜びがあるというか。

S: ある時、またひとつ壁超えることができるよね。昔は私も、言いづらいことをオブラートに包み過ぎて、何も届かないというときとかあったと思う。それがどこかの時点で言えるようになるのよね。それ、nicoちゃんが、よく言う名セリフ「チャートを信頼する」というのに近くて、経験を積んでいくことで、チャートを信頼している自分に自信が持てるようになる、というか。

N: 現場での心得としてよく伝えるのが、たった今のことで長期的な良し悪しってつけられないというか、例えばその人と結婚できなかったことが後々の幸せにつながることもあるし、仕事に目覚める人もいるし、長い人生を考えたとき、何が良くて何が悪いの正解は、今という瞬間に判断を下すのは難しい。正解なんて実際、生きてみないとわからないというか。

S: うんうん。私って冥王星が好きでしょ。トランジットの冥王星がかかってくるときに、「自分が変容してしまう星が近づいていて、これは生きている間にしばらく来ないような星だから」って伝えると、多くのクライアントさんが「それはいいことですか?悪いことですか?」って聞くのよね。それに対して、「結果的には自分の価値に気づいたり、生きるテーマが見つかったりと、いいことに繋がるんだけど、気づきのために起こることって、言葉にすると、別離や失職とかネガティブなことも多かったりする。だから大きな気づきになるんだけど」って言えるようになるもんね。出産で変わる人、離婚で変わる人、いろいろなケースがあるからね。

N: 体験したネガティブなテーマが後々の力なり、気づきなりに必ずつながるんですよね。よく講座の時に言うのですが、「一個人に対して、天体が狙いを定めて悪いようにしてやろうなんてことはなく、その天体のテーマの純粋な意味を本人がどう受け止めるかだけだから」と。例えば冥王星だったら、「普段では体験できない変容の機会」を与えるだけで、「お前をとっちめてやる!」とか冥王星が言ってるわけじゃなくて(笑)

S: 冥王星怖すぎ!(笑)「お前は離婚をして子供を一人で育ててないと何も学べないんだ!」っていうわけじゃないもんね。

N: たまたま離婚という体験に向き合う必要が出てしまったけれど、これからサバイバルするためにどう力をつけるか、それが冥王星のやらせたいことだったりするかもしれない。そこで自立して本来の力をつけていくとか。そういう意識の変容の機会にすぎないと思うんですけどね。

S: そうそう。

N: 占う側がそういう度量で冥王星を体験していないと、お互いがびくびくしちゃう感じになりますね。私がポジティブな体験をしたから、あなたもポジティブな体験ができるとも言わないですし、ただ少しでも怖がらず体験に向きあえるようなサポートできるといいですよね。

S: うんうん。鑑定の現場っていうのは、個人の変容の機会に立ち会える、そんな面白さがあるよね。

村上さなえ 占星家
東京生まれ。魚座の太陽・牡牛座の月。
女性誌、若者向け月刊誌や、PR誌の編集者としてキャリアを積んだ後、1998年より、占星家としての活動を開始する。
未来予測ではなく、自己再発見をテーマにしたコンサルテーションやセミナーが特徴。クライアントには、芸能人やクリエーターも多い。本の出版、雑誌、WEB等での執筆、セミナー、星座別ファッション提案など、活動は多岐にわたる。