2018 蠍座の言葉 アルベール・カミュ

心理占星術家・nicoが選んだ今月の言葉は….

 どんな漠としたものにせよ、意識のめざめは、反抗の衝動から生じる。人間には、たとえ一時的でも、みなが同等になれるものがあるのだ、という知覚が、突如として閃く。この同等化は、それまでは実際には感じられなかったものだ。奴隷は、謀叛するまでいっさいの不当な要求に耐えてきた。内心では拒否していたかもしれぬが、辛抱していたのである。しかし、自分の権利を意識するよりも、直接の利益を心配して黙っていたのだ。ところが、辛抱しきれず、我慢ができなくなると、前には受け入れていたことまで、いっさいをひっくるめて、やりきれない気持ちになる。こうした衝動は、たいていいつも過去にさかのぼる。反抗の衝動は、単なる拒否よりも、はるかに遠方まで、彼を押しやる。いまや彼は、同等に扱ってくれと要求し、相手に対してきめていた限界までも超えてしまう。はじめは、人間のやむに止まれぬ抵抗であったものが、全人間のものとなり、つぎには抵抗と一体となり、抵抗そのものに化してしまう。意識が、反抗とともに、生まれたのである。

— 著書「反抗的人間」より

蠍座の言葉

アルベール・カミュ

1913年11月7日フランス領アルジェリア生まれ。

小説家、劇作家、哲学者。
1957年、史上2番目の若さ(43歳)でノーベル文学賞を受賞。主な作品に不条理三部作と言われる『異邦人』『ペスト』『シーシュポスの神話』がある。


広辞苑によるとカミュ小説の核となる不条理とは、

「実存主義の用語で、人生に意義を見出す望みがないことをいい、絶望的な状況、限界状況を指す」

と書かれている。

 8番目の蠍座までテーマが進んできた。占星術において、蠍座は複雑なサインであると言われることが多い。そもそも、心理の象徴である水のエレメントが難しくないわけがない。ここまでの間に、自己を外向きに育てる活動をしてきた。陽のあたる場所に出ても恥ずかしくないようにと、獅子座、乙女座、天秤座と歩みを進め、よそ行きの顔を大いに成長させてきたわけだ。

 しかし、いくら人がほめてくれようが、人に気に入られようが、一向に自分が幸せになった気がしない。いつもどこか人に合わせて無理をしているような気がするのだ。時々、自分が何者かわからなくなるくらい、生きることに息苦しさを感じることさえある。

 いよいよ追い込まれたとき、人は反抗期を迎える。生まれたときからずっと、親の、または社会の隷属状態にあったことに気づくのだ。親がいなければ生きていけない。けれど、親がいたって、「自分」を生きていくことができない。だったら、一度、すべてを否定するしかない。「反抗」そのものになって、世界をひっくり返すしかない。

 それがいわゆる蠍座の「変容」であり、バイアコンバスタの「自己の焼失」である。この「反抗」を経ずして、人は何になっていけるというのだろうか。

カミュはこうも言う。

人間は現在の自分を拒絶する唯一の生きものである。

 さらなる価値づくりをするためには、今の自分を超えていかなければならない。自分を抑圧する一切を否定し、より個性を生きる権利を獲得するために、より自由な生を手に入れるために、あらゆるものに反抗していく時があるのだ。

 自分で自分を扱うことが難しいこともあるだろう。けれど、時には「反抗そのもの」になる必要があるときもある。

 蠍座の季節、力を勝ち取るため、自らの立場を否定することも必要になるかもしれない。