2019 蟹座の言葉 フランツ・カフカ

心理占星術家・nicoが選んだ今月の言葉は….



ぼくは人生に必要な能力を 、なにひとつ備えておらず 、

ただ人間的な弱みしか持っていない 。

カフカ「八つ折り判ノート」より

 

今月の言葉

フランツ・カフカ

1883年7月3日プラハ生まれ。

小説家。蟹座に太陽、木星を持つ。ある朝、目覚めると巨大な虫になっていた男を描いた「変身」など単行本を数冊出版。しかし、生前はごく一部の作家にしか評価されず、ほとんど無名であった。34歳のとき喀血、40歳のとき結核で死亡。死後、友人によって遺稿が発表され世界的なブームとなった。現在では20世紀の文学を代表する作家と言われている。

 

 

牡羊座で自己の情動を、牡牛座で自己の感覚を、双子座で自己の考えを実感し、育てた後、最終的に自分の心の居場所にたどり着くことで、「私」という存在がどういったものかを知ることができることになる。

 

ホロスコープの一番深い底、ICと呼ばれる場所が4番目のサイン、水エレメント・蟹座の位置するところである。ホロスコープが12サイン、12ハウスをめぐる個人の物語だとしたら、蟹座的体験というのは個人の一番奥にしまわれているものとの出会い、つまり個人の弱点やネガティブなものとの出会いということになる。

 

蟹座の段階で自分の恐れや不安、弱点と対峙しておくこと、己の「陰」「暗」の部分を知っておくことは自己理解をさらに深めることができる。

 

弱いからこそ、人は拠り所を求める。

それがあるから、それがあってこそ、自分はようやく、なんとか生きていける。そういった救済を求めることで、人は生きる力を手にすることになる。

カフカのように本を書くという人もいるだろう。絵画や音楽の人もいるかもしれない。すがるほどに大切なものが見つかったとき、人は死ではなく生を選択することができるのだ。

 

カフカは絶望の名人だったという。

心の面でも、能力の面でも、また身体面でも、カフカは自分自身の 「弱さ 」を強調している。誰よりも落ち込み、誰よりも弱音を吐き、誰よりも前に進むことを恐れる。

また、いつでも泣き言ばかり。残された日記やメモからも、気分や体調の不安、日常生活や家族、仕事の愚痴ばかりを並び立てていた。

 

だからこそ、彼は願望をドラマに仕立てた小説を必要としたのだった。

ただでさえ生きることは大変なのだ。だから生きる手段として、自分を虫に変えたり、男を処刑したりして、現実を乗り切る必要があった。

 

カフカは、恋人にあてた手紙でこうも言っている。

「ずいぶん遠くまで歩きました。5時間ほどひとりで。それでも孤独さが足りない。まったく人通りのない谷間なのですが、それでもさびしさが足りない」

 

自分を知るため、生を強く感じるために、蟹座は孤独をつくり出す。「私」を一番純粋にしておくために、そして拠り所となるものと純粋に向き合うために、蟹座は孤独な環境を求める。

 

彼の小説はいまだに魅力を失わず、時代や世代を超え、多くの人たちを惹きつけ続けているのは、このように孤独の中で生まれた拠り所であるからだ。社会の中で居場所を失った人たち、自分自身を「虫」のように煙たく感じるものたちにとって、カフカの言葉は「同質の原理=同じ痛みや悲しみ、孤独を共有するもの」と感じられるのだ。

 

蟹座期に、私たちはネガティブな自己を見つけることになるかもしれない。

けれど、それはつまり、生き残るために必要な「拠り所」と同質なものとの共鳴が起こる機会を手にすることにもなる。

孤独を恐れず、純粋な気持ちで世界を見渡してみれば、心が本当に求めているものに出会えることもあるだろう。それなしでは生きてこれなかったことに気づくこともあるかもしれないのだ。