2020 魚座の言葉 石井桃子

心理占星術家・nicoが選んだ今月の言葉は….



私が子供の本にひかれるのは、どこの国の人にも通じる普遍性があることです。きっと時代の風潮に影響されない根本のところで書かれているからでしょう。

一つの本がある時代の子どもに読まれて、また20年、30年たってからの子どもに愛読されるということは、どういうことだろうか。それは、その本が、一つの時代の子どもの求めるものではなく、いつの時代の子どもにも訴えかけるものを持っているということである。

こうして、つぎつぎにつみ重ねられていく子どもの本は、その国の子どもの精神構造の骨になるのだといっても、大げさすぎはしないだろう。おばあさんの親しんだ歌のことばを、孫も知っている。母親の知っているお話しの主人公は、子どもも知っている。こういうことがなくて、一つの国の伝統や文化があるのだろうか。

そして、こうした広い範囲の精神的な財産のうけわたしは、公共の児童図書館なしには、けっしておこなわれない。

— 『図書館雑誌1964』児童図書館への願い、より

 

今月の言葉

石井 桃子

1907年3月10日 埼玉県生まれ。

魚座に太陽、土星を持つ。日本の児童文学作家・翻訳家。数々の欧米の児童文学の翻訳を手がける一方、絵本や児童文学作品の創作も行い、日本の児童文学普及に貢献した。『クマのプーさん』『ピーターラビットシリーズ』ほか多数の外国の児童文学の翻訳を手がける。1958年には自宅を子どもたちに開放し、「かつら文庫」開設。2008年4月2日101歳で死去。

 

 また一連のサイクルが終わりを迎えようとしている。このように太陽は毎年12サインをめぐり、各サインごとの個性に光を当て、その時々にふさわしい成長、創造すべきテーマを教えてくれている。このらせん状のドラマを内的、外的に生きることによって、私たちは人生の“明るさ”“よきもの”を知ることになるというわけだ。

 では、最後の魚座期は、私たちにどのような“よき光”を当ててくれるのだろうか。

 

 火地風水というエレメントの流れの最後を飾る水エレメントは、ある意味、とてもユニークである。終わりであると同時に始まりでもあるという特徴を持つ。

 ここまで続いた物語をこころで処理(消化、理解、納得)し、そしてそこから抽出された重要なテーマを未来へと受け継いでいく。つまり、水エレメントには継承という重要な任務があるというわけだ。

 では、魚座が継承すべきテーマとはどのようなものだろうか。

 それは、まさに石井桃子が言っている「どこの国の人にも通じる普遍性」「いつの時代の子どもにも訴えかけるもの」ものだ。

 

 魚座は、最後の水エレメントであるとともに最後の柔軟サインでもある。双子座、乙女座、射手座の流れを経て、最後は魚座へと着地する。柔軟サインは「学び」「教育」の成長段階を示し、水エレメント・公的サインの魚座はこころの成長を、また国の、文化の、人間の普遍的な学びの機会をサポートすることを目指す。

 その「こころの成長」を支える意識として、支配星の木星、海王星――よりよい世界を目指して――が背景にある。石井桃子の場合は、「良い本、良い文化を世の中に届けたい」ということになるだろう。

 

 彼女は言う。

 「その物語が全体として、どっちの方向へ向いているかということです。やはり生きているということはすばらしいことだ――こんなこと子どもは意識的には考えはしませんが――の方向に向いてもらいたいですね」

 

 魚座は過去から続くものの中から美しいものを抽出し、これからの未来を生きる人々のため、よりよい「精神的な財産のうけわたし」をしようと努める。その貢献的な精神を育てることこそが、魚座期の目標の一つとなるのだ。

 

 この時期、あなたの中のどんな「よきもの」に光が当たるだろうか。ずっとあなたの中に大切に置かれていたもの、もしかしたら、おばあちゃんの、そのまたおばあちゃんの想いが連綿と続いているものなのかもしれない。

 または石井桃子のように、友人宅のクリスマスツリーの下におかれた『プー横丁にたった家』の原書を手に取ったその瞬間から、子どもたちにせがまれて読み聞かせるうちに自身が魅入られたそのときから、または病に伏せた友人に背中を押され本格的に翻訳に取り組み始めたときから、「未来へとつなぎたいよきもの」との出会いがスタートするかもしれない。

 いずれにしても、結局、私たちが今、目にし、手にしているものは、すべてだれかの「よきもの」の意識に触れたもののはずなのだ。時代時代で色を変え、形を変えても、なお続く美しいドラマがそこにある。

 

 魚座期にもう一度、自分の周囲を見回してみたい。そして、その中から私の想いに触れているものを手に取り、また、始まる春の季節の友として未来へと連れ立っていこうと思う。