「占いライター養成講座」、占いスクールで開催されているのを時折目にします。講座もそこそこ人気のようだとも聞きます。しかし、そんなに占いライターなる仕事には、そもそも需要はあるんですかね?約20年間、ライター・編集を生業としてきた、出版業界の不況のまっただ中に身を置いてきた自分としては、疑問を抱いています。占いライターなるものに今、仕事があるのかいな、と。
そしてスクールではそのことをきちんと伝えているのだろうか、と心配になります。今どき占いライターを志すような人は、木星海王星の影響が強く実人生を外しがちと思うので、注意喚起の意味を込めまして、同じく木星海王星にASCが巻き込まれております自分がアドバイスしたいと思っちょります。
なお、これはあくまでプロとして占いライターを目指している、なんとなく頭の隅に浮かんでいる人に向けてのもので、ブロガーとして自由に発信したいだけの人には該当しません。そんな方は、どんどん発信してください。自分も勉強になりますので。
じゃあ、まず占いライターが活躍できるフィールドを確認してみましょうか。誰しもが思い浮かべるのは雑誌・書籍の【紙媒体】でしょう。しかし、占い雑誌にカテゴライズされる雑誌は、今、どこにも存在してませんよね。「いやいや、女性誌の特集記事だってあるじゃないの?」。こんな反論が聞こえてきそうです。でもね、思い出してください。そこに名を連ねるのは、いわゆる大御所の方ばかりです。「今月の占い」といったような連載も同様です。かつて出版業界が元気な頃は駆け出しの占い師・占いライターでも実力と運、タイミング、場合によってはコネがあれば割って入ることは可能でしたよ、たしかにね。でもこの出版不況で疲弊しきっている編集者は、あえて新しい人と一緒に仕事をするリスクを取ろうとはしないのです。スピ本でも同じことが起きてますよね。「龍神」がトレンドになっているように。そんな編集者・出版社側の事情もあり、新規参入の余地はほぼない、こう断言してよろしいかと。
ちなみに、このリスクテイクをしないことこそが出版業界の首を絞めているんでしょう。この1~2年、「週刊文春」が“文春砲” としてあがめ奉られ正義の味方然としている、雑誌メディアの代表格となっているのは、記事内容はもちろん、人材などの面でもかなりリスクテイクしているから、それを占星術のロジックで言うと、きちんと「木星=射手座=9ハウス」をやりきっているがゆえか、と思うわけです。
それと、紙媒体では、ライターという職種自体が廃業した人が続出している現状があります。しかも、単に文章を書くこと自体は、今やAIで代替可能になりつつあるご時世です。一般のライターの需要が少なくなっているのに、そしてきわめてニッチな占いの分野で、すでに実績のあるベテランの占いライターや編集プロダクションに仕事が集中することこそあれ、きちんと食べていける新人が業界で増える、ということはどうにも考えにくいのです。
この実態、「占いライター講座」ではきちんと伝えているのでしょうか。ちなみに、こちらの占い師さんはかつて女性誌などでライターをなさっていたようですが、やはり出版不況の影響で本業を占いと日本語教師にシフトなさっているようです。参考になるかもしれません。
一方で、占いライターとしてではなく、占い師が本を書く、要するに占いをモチーフにした作家になった、というケースを目にすることが最近多いような気がします。たとえばこの方とか、この方、この方もそうじゃないでしょうか。この地位を獲得するには、マーケティング能力に加えて、プレゼン能力が必要かと思われます。
元編集者の立場から推測するに、おそらく彼女たちはアメブロやFBのビューワー数やコメント数、「いいね!」の数が抜きん出ていて、その数字を元に「勝負できるかも」と踏んだ編集者が声をかけて、占い師兼作家に成り上がるというのが王道のように思います。占い師に限らず、経営者などもいまだに本を出すことによって、世間の見る目が変わるということがあるようです(だから自費出版ビジネスに騙される人が少なくないってことになる)。そして、このポジションにたどり着けば、物販と講演で儲ける、鑑定料金も大幅アップということになるんでしょうか。
紙媒体以外はどうでしょうか。【ネット・モバイル媒体】のライターという道があるにはあります。課金制の占いコンテンツを配信している会社がクライアントになり、大手に東証一部に上場しているZ社、マザーズに上場しているM社が有名どころです。両社のほかにも配信会社はありますが、業界的に人材が足りないのか、外注ライターは常時募集しているという印象があります。ただ、気がかりなのは大手でさえ、減収減益で株価も低迷しているということ。おそらく一般的な占いユーザーたちは、無料占いで十分という傾向が強まっているのかもしれません。とはいえ、募集をかけているのを見かけたら応募するのは悪くない選択肢かもしれません。実際、現在においては、占いライターとして唯一の登竜門とも思えますし。ただ、複数の術に通じていた方がよかったり、基本的にはユーザーを喜ばす(基本的にはネガティブなことは書けない)というスタンスなので、窮屈といえば窮屈なんですけど。
上記の大手コンテンツ配信会社と直接業務委託契約を交わしてのライティング業務は、収入面で目をつぶれば、まあよしとしても、絶対に手を出してはいけないのがあります。それはいわゆるクラウドワーキングサイトで募集している占いライティング業務です。初心者ライターに超格安で納品させるシステムで、「悪貨は良貨を駆逐する」といった感じなのです。つい先日、IT大手・DeNAのキュレーションサイトが問題になりましたが、要するに報酬が不十分であり、ゆえに筆が荒れることは間違いないのです。Twitterに、こんな書き込みがありました。引用してみます。
「今(悪い意味で)話題のキュレーションサイト。この写真見てため息をつく。割に合わなさすぎる。気になって占いライターの仕事を調べたら、ラ◯サーズやクラウ◯ワークスで一記事1000字ほど800円とか…。ライターはもっと優遇されるべき!専門扱うなら尚更!」
同感です。搾取です搾取! 蟹工船で蟹だけでなく、海老や蛸や昆布までかっさろうとする勢いです。
「好きを仕事にする」のは、木星海王星持ちが好みそうですが、さりとてあえて労多くして功少なし、好んで格差社会の「犠牲者」になる必要はないでしょう。
シビアな話になってしまっておりますが、元ライター・編集者の立場からすれば、現状はそんなもんかと思われます。ただ、せっかく占いライターを志すような方を諦めさせるのが本意ではないので、可能性があるかも、というところでお話をまとめましょう。
駆け出しの方にはややハードルが高いかもしれませんが、もし自分にライティングの実力が付いたと感じたとすれば、【WEB系の制作会社・広告代理店】にアタックするのがいいかもしれません。今やあらゆるプロモーションの中心がWEBであることを考えれば行かない手はありません。しかも、WEB専業ライターは行っているかもしれないが、紙媒体出身のライターが営業先としてあまり行かないので、入り込む余地はなくはないかな、と。
しかも女性をターゲットにプロモーションをするとすれば、占いは重要なコンテンツになるわけで。それらのアイデアを出せる人との接点は、WEB業界の体質や文化などから考えると少ないんじゃないかと思われます。そして、現段階では、おそらくネームバリューがある占い師の事務所に監修・ライティングを委託しているのではないかと推測されます。しかし、WEB業界は、紙媒体ほど保守的ではない、柔軟ですという印象です。
WEBエディターに認められるようになるには、文章の巧みさもさることながら、ホームページ・ブログを持っているか、更新頻度は、そこで発信しているのはどんな内容か、そしてアクセス数は、コメント欄などのコミュニティー構築能力はどうか、といったことの方がむしろ重要であり、アピール材料になってくるように思われます。あれ、そう考えると、なんかできることがありそうな気がします。
えっと、水星は太陽のメッセンジャー、なんでしたっけね。占いライターになることが太陽と直接結びつく……というなら決して否定しませんが、今の占いライターを巡る状況は、単に水星を酷使するだけのものでしかないように思います。この20年間における技術革新や占い・スピリチュアルマーケットの成熟化によって、単にライティング能力だけで十分報われるという時代は過ぎたといえるでしょう。
では、どうするべきか。自分は、20年間使ってきた自分の中の水星の象徴の書き換えが始まったばかりということもあり、明確な答えは提示できませんが、少なくとも「占いライターしかやらない」といった思い込みから自らを解放して、自分と人々と時代の声に耳を傾けることが必要なんじゃないでしょうか。書ける能力は、これまでの紙媒体やネットに押し込めるのではなく、もう少し立体的に、街づくりや商業の中で使えるように思います。抽象的で申し訳ないですが。
そんなわけで読後感はよろしくないと知りつつも、これ以上書くと原稿料を頂戴したくなるので、おしまいにします。