占いを学ぶにあたり、その喜びポイントって…
nico(以下N): さて、3回目になりますが、この前はさんざんな対談というか…
村上さなえ(以下S): やる気なしっていうか。桜を前にしたら、言葉が出なかったねえ。自然は偉大だ。笑
N: 今日は、真面目にやりましょう。では、何の話題からいきましょうか。2回終わって、既になんだかすっかり話しきった感がありますが、まだ話題ってありますか?
S: ないねえ。
N: (笑)えっ?! 即答? いやいや、ありますよ。普段も似たような話、長々しているじゃないですか。
S: 冗談、冗談。じゃあ今日は…
N:今日は、占いを仕事することのメリット、デメリットからいきますか。
S:この前、それ話したよ。占いを仕事にする前より、うんと女の友達が増えたって。
N:中途半端に終わっちゃったんですよね。(笑)
S:この前は、受け答えになってなかったから。何しゃべってるんだか、途中でわからなくなったりしてね。
N:(笑)そうそうそう。だからこそ、今日は真面目にいきます。では、まずは、占いをしてよかったことから。さなえさん、何かありますか。
S:最初にいつ、そう実感するのかしらね。例えば、「お金をもらえるようになった」という答えもありそうだけど、私としては、基本的に勉強している最中が一番楽しかったような気がするよね。占星術への理解がまさに進んでいるとき、喜び第一段階みたいなのがあるじゃない。「わー! 占星術、面白い!」とかって。
N:例えば、それはどんな時だったんですか?
S:明治神宮の宝物殿の前の芝生で、12サインを繰り返し繰り返し読み返していたとき、なんかね、らせん階段のようにね、12星座が頭の中で、つながったなという瞬間があって。そこからは、火地風水、活動・不動・柔軟だろうが、覚える、ではなくて、理解できちゃったっていう瞬間があったのね。それが私にとって忘れない。今でも、あの日のことを思い出すと、気持ちが良い。
N:それが最初の喜びポイントですか? それは、かなり高度なレベルのような気がしますけど。
S:そうなのかな。でもまだトランジットだってよく分かってないような、勉強し始めてすぐの頃の話よ。学ぶ面白さ、に触れた最初の段階というか。
次の段階は、やっぱり実際のチャートを読み出した段階かな。例えば、占いの本でいくら丸暗記したところで、当然、それだけでチャートが読めるようになるなんてことはなくて。有名人や自分の身近な人や、いろいろな人のネイタル・チャートを読むことになるじゃない。そうなると、例えば、占いの本には「魚座の月は繊細だ」とか書いてあるけど、実際は魚座の月の持ち主で、そんなに繊細そうじゃないなとかって、現実には、よくあるよね。
N:うんうん。
S:「魚座の月は、12星座で一番繊細だろ!」と丸暗記からはそう思うけど、目の前の人がそうじゃなかったりすると、それってどういうことだろうって悩む。具体的に人を見ていかないとわからないことって多いよね。そこにある「リアル」や私なりの理解が生まれることで、実際のチャートを読み始めたからこそ実感する、第2段階としての「学問の喜び」みたいなものに到達するのかな、と。そうして、いよいよ占星家としてお金をいただいてもいいのかなと初めて思ったというか。仕事としてやっていっていいのかな、という段階に辿り着いた気がするの。ニコちゃんはどう?
N:私も学び始めてから、いろいろなものがつながっていく感覚はすごくよくわかります。私が最初に占星術に触れたのがアカデメイアという学校で、隈本先生という東洋の占術の研究者でもある方から学んだのが最初なのですが…
S:隈本健一さんね。お会いしたことある。
N:はい。で、中級から上級に進む段階でレポートを出さなければならなくて、その時の題材が貴乃花だったんですよ。学んで9か月くらい経ったころですかね。ネイタルチャート、3重円、好きなチャートをつかって貴乃花の人生を読むみたいなテーマで。その時に、同じクラスのみんなが、みんなっていっても最初15人くらいいた生徒が、最後は3人になっていたのですが、みんな難しい!読めない!と言っているなかで、貴乃花の物語がなぜか面白いように理解できて。
S:うんうん。
N:三重円を読んだときに、火星の動きとのシンクロを見つけたとき「これだ!」って大興奮したんです。今でこそ、「スポーツ=火星」ってわかりますけど、その時は隈本先生から何のヒントもなく、まだ知識としてもトランジット・火星は悪さをする天体、木星は幸運をもたらすとしかイメージがなかったときに、火星のアタックが貴乃花を横綱へと導いているように見えたときに、「この人は火星のエネルギーを使うのが上手なんだなと」と妙に納得したんです。天体とのシンクロニシティがとても腑に落ちたという体験があって、そのレポートがアカデメイアの校長まで届いて、「良く書けてたよ」とほめてもらったりして。すべては後付けで読まれたものなのですが、その人物を突き動かしていくエネルギーを見つけていく作業は面白いなあと。私が今の読みのベースになっているのは、その時に感じた、その人物の性格、個性、生き方、仕事、アイデンティティとか、そういうものによって必要とする、使用する天体が違うんじゃないか?という考え方だと思うんですよね。または、シチュエーションによって、サイクルの使い分け、短期決戦のときは火星を、長期決戦のときは木星をとかって使い分けながら、人は成長をしていくもなんじゃないかと実感したのが最初の喜びポイントだったと思います。
S:なるほどね。
N:それから、いろいろな人の人生を追いかけながら、人それぞれの独特なリズムとか天体の利用方法を発見するのが面白かったかな。でも、やっぱり一番の喜びは、自分の読みが、相手の世界とピタッとシンクロしたなと思った瞬間かもしれませんね。
S:それは双方の喜びだよね。鑑定やっている以上、そこが一番楽しいポイントだよね。
N:でも、いつも言っていますがネイタル・チャート読みって一番難しいものだと思うんですよ。だから、その分、読めるようになると喜びも大きい。というか、たぶん占星術が面白いんですよね。
S:占星術のしくみがね。
N:毎回、発見があるというのはすごい知識体系ですよね。
そもそも現場での言葉って…言葉の勉強したほうがいいよね
S:でも、人それぞれホロスコープの見てるポイントって違うよね。だから、現場のカラーも違うんだろうね。
N:そうですよね。いろいろな人がいますよね。この前、ラボの仲間が、「占いの勉強は面白いけど、やっぱり現場はいやだ。現場で早読みしている人たちは決めつけもすごいし、読んでいるのを聞いていて息苦しくなるし楽しくない。私はあんなふうになりたくない」と言っていたのですが、現場の面白さって何なのですかね。私は、ホロスコープというのは、「声にならない声を拾う作業」だと思っているんですよ。 言葉にならない思いを代弁するものだと。だから、私にとっては、決めつけているというよりは、今までうまく口にできなかった言葉を引き出してあげられる機会なのかなと。
S:でもやっぱり、自分ができてるって意味じゃないけど、基本的に言葉の雑な人は難しいよね、現場はね。
N:!!!(笑)
S:私なんか年下の女性には、つい友だち口調になっちゃったりするから、気をつけてるんだけど、そういう「ですます」とか以前に、しゃべり方の問題として、相手から同意を得られるような説明をしないと話が始まらなかったりするじゃない。例えば荒々しい月を持っていた人がいたとして、「子供のころ、男兄弟が多くて、にぎやかな家庭で育ってきたのではないですか」と言えるところを、「あなたの家は荒れてましたね」というのはないだろうし、私だったら、「こういう月を持っている人って男兄弟が多くってね、なぜかというと…」という言い方をするのね。
N:うんうん。
S:女姉妹であっても、競争しながら成長してきた人が多いんですよね、とか。簡単に決めつけて読むということではなくてね。そもそも、その辺に関してのデリカシーがあるかないかということは大事。例えば有名な先生でも「私は現場やらない。鑑定はしない」という人は、もはやそこが面倒くさいわけだよね、誰かという名前は伏せるけど。(笑)決めつけずに核心に触れていくというのは、チャートを読む力だけではなく、話す技術が必要なわけだよね。
N: そうですね。
S:あとクライアントの中には、病気とかについて聞いてくる人いるじゃない。「それ医者に行った方がいい」という質問してくる人。その時、火星や天王星があるから事故に注意とか、土星が来ているから病気が悪化とか、そんな乱暴なこと言えるわけないじゃない。そういうときの対応の仕方、発する言葉のセンスがものを言うよね。ライター講座はよくあるけど、現場での言葉の勉強もしたほうがいいよね。「なぜ、私の鑑定は人気がないのか」とかね。
N:!!!(笑) でもみなさん、カウンセリングの勉強とかしている方多いですよ。私の生徒さんでも、カウンセリングの資格を持っている人とか多いですよ。傾聴とか。
S:うん、うん。けっこういますよね。
N:当たるも八卦というスタイルよりは、セラピー、カウンセリング的にアプローチする人は、昔よりも圧倒的に増えた気がしますけどね。
S:そうね。でも現場の様子って、一対一だからのぞけないじゃない。自分の現場ってどうなのか、これでいいのかどうか、悩んでいる人はけっこういるかもね。
N:そういうときは、お客さんの反応をバロメーターにするしかないのかな。
S:自分の鑑定現場が、イマイチ盛り上がらないってときは、何か必ず修正ポイントがあるはずなんだよね。今度さ、ニコラボのメンバーに質問書いてもらってよ。占いの現場に関して、何か聞きたいことはありますか?って。
N:そうですね、そうしましょう。
現場で気をつけていること
N:ところで、現場で気をつけていること、やり取りで気をつけていることってありますか?
S:そうね…。始めた当初、私音楽が好きだから、1時間半の音楽CDを作って流してたのね、時間がわかるっていうのもあって。でも、初めて4年目くらいのとき、立て続けに3人に「集中できないので消していただいていいですか」って言われちゃって。人の好みって、それぞれだからね。それから、無音にしてる。ニコちゃんは? 現場で気をつけていることってあるの? どんな感じでやっているんだけ?
N:私はもともとアドラー心理学や*ナラティブセラピーを勉強してきたので、現場では、そこはある程度敏感ですが…
*ナラティブセラピー:自己語りのセラピー。起源としては「精神的に苦しんでいる人の話を聴いてあげる」というかたちで古くから人間社会のなかで自然に存在し、社会構成主義やポストモダンの影響を受けて練磨される。治療者とクライエントの対等性を旨とし、クライエントの自主性に任せて自由に記憶を語らせることによって、単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで、幅広い改善を起こさせることを目的とするもの。
S:それっていつ頃から勉強してるの? 占星術を学び始めてから?
N:アドラーも社会構成主義も占星術を学ぶ前からです。実践的なアプローチを学んだのは現場をやるようになってからですが。
S:ナラティブって何だっけ?
N:自己語るっていうセラピーなのですが、語り慣れていることじゃなく、これまで語られることのなかったことを語るというセラピーです。社会構成主義っていうのは、「社会は言葉で形成されている。だから言葉が変われば、社会も個人も変わる」というもので。語られない言葉を語ることで、人物の違う部分を引き出していくとうのがあって、まあ、簡単にできるものではないのですが…。その中で簡単にできるアプローチの方法として、「相手と同じ言葉を使う」とうのがあって、例えば、クライアントが母親のことを「かあちゃん」っていってたら、「お母さま」と言いなおすことなく、こちらも「かあちゃんは、どうなの?」と同じ言葉を使って、相手と世界観を共有しながら進めていくというのがあるんです。
S:そうすると、どうなるの?
N:そうすると、信頼関係が築きやすくなると思うのですが。あと、この前、ブログにも書いたのですが、ナラティブセラピーの面白い考え方に「カウンセラーがセラピーの現場で自分の意見をはっきり言う」というのがあるんです。「私は、そうは思わない」とか。なぜかというと、そもそもクライアントはどうしたらいいのか、自分の考えに迷いや混乱があってきているわけです。そこに「傾聴」だけでアプローチしても、相手の「語られなかったこと」を引き出すことは難しいわけです。なので、占星術でいうところの「月―金星」ではなく、「水星―火星」的な刺激を与えることで、その人の「私」を引き出すことができるんじゃないかということです。人の正直な刺激に対し、相手の反発、賛同といった正直さを引き出すということです。アクセントとして使う感じでしょうか。
そもそも傾聴って…
S:私も傾聴に徹するというコンサルはしてないかな。 ナラティブセラピーではないけれど、人の話を必要以上に聞くってことはないかな。自分のほうがすごくしゃべっていると思う。乾燥シーズンは、声が枯れるくらいに。でも、確かに、現場では傾聴している人多いんだろうね。
N:そうですね。多いと思います。よく耳にする意見は「世の中は自分の話を聞いてほしい人だらけだから、話を聞いてあげることが大事だ」と。
S:まあね。でも、そうなると同じ話ばかりがグルグルしちゃうよね。私の場合は、ホロスコープの説明をしながら、必要な情報だけを聞いていく。私の説明の中での質問なので、返事が聞けたら、すぐ説明に戻る。こちらが話すことが圧倒的に多いかな。傾聴したほうがいいのかな。でもさ、話を聞く時間をいっぱい割いちゃうと、たくさんの情報を持って帰ってもらえない。自分の仕事ができてない気がしちゃう。クライアントさんにとって必要な情報をできる限りたくさん伝えたいというのがあって。スッキリしない状態で帰ってもらうのが嫌なのね。ちゃんと一回で完結させたいというのがあって。
N:そうですね、そうですね。
S:中には、傾聴中心になりがちのリピーターさんも何人かいるのね。ただ話を聞いてほしい、で、楽になって帰っていくというもあるんだけど、それってもはや西洋占星術のテクニックが必要ないわけで。
N:そうですね。そこは考える余地がありますね。こちらはテクニックを持っていて、技術を提供することで成り立っている仕事なわけですから…
S:そうなの、そうなの。
N:技術を提供するというのは大事な姿勢ですものね。
S:場慣れっていうものあるけど、クライアントが口にするちょっとしたエクスキューズもコンサルテーションの柱の一本くらい重要だったりすることってあるよね。例えば、「あまり勉強してないんですが…」という言い方で夢を語ってみたり、「特に仲が良いわけではないですが…」と家族の説明をしているときって、なんかあるんだろうなって。よく双子座や3ハウスが強調されている人が「ものを知らないこと」をエクスキューズに使うんだけど、そもそもそこに意識がいかない人もいるじゃない。
N:「ものを知っている知っていない」がそれほど重要でない人もいるということですね。
S:そうそう。でもその人には、そこが重要なんだな、と。そういうホロスコープに関連するような小さな表現を見逃さないっていうことが現場では大事なわけで。
N:これまで見逃されていた声をすくい上げるということですね。
S:そうそう。そこをすかさず拾えれば、後はそれ以上長々と説明をしてもらう必要はないというか。
N:そうですね。来た時より良い状態で帰ってもらうためには、ただ話せばいい、ただ吐き出せばいいじゃなくて、こちらの意図があって進めていかないと、テクニックを学ぶ意味なんてないですものね。こちらの技術の中で意図的にアクションを起こしていかないと。
S:そうね。こんな素晴らしいテクニックをぜひ使ってくださいというね。その中で、それぞれのやり方があると思うし、それがそれぞれの個性の面白いところだと思うけど。
N:そうですね。今後はいろいろなやり方をしている人をゲストに呼べるといいですよね。
S:うん。そうしよう。私もお話、伺いたい!
村上さなえ 占星家
東京生まれ。魚座の太陽・牡牛座の月。
女性誌、若者向け月刊誌や、PR誌の編集者としてキャリアを積んだ後、1998年より、占星家としての活動を開始する。
未来予測ではなく、自己再発見をテーマにしたコンサルテーションやセミナーが特徴。クライアントには、芸能人やクリエーターも多い。本の出版、雑誌、WEB等での執筆、セミナー、星座別ファッション提案など、活動は多岐にわたる。