nicoの星宙予報 2021 蠍座 ~ 無関心にならず「わたくしごと」の範囲を広げる努力を

 

 10月初旬、和歌山県で起こった水道橋の崩落事故。そのとき届いた、生徒さんからのメールを紹介したい。

 

 現在、私の住む和歌山市北部全域では、水管橋崩落による大規模断水で、日夜から万世帯 138000人の生活を支える給水が全面ストップとなっています。直後数日間はホームセンター、スーパー、コンビニなど、早朝から水やポリタンクを求める大行列が至る所で見られ、それはまるで乾季のサバンナで水を彷徨い求める動物の群れのような状態でした。

 当たり前のことがそうでなくなると、一瞬にして私たちはたじろぎ、本当に脆弱な存在であると感じます。しかし、このような渦中ではありますが、今回の出来事は、私にとっての心理占星術を深めることと確認にもなっています。

 この崩落に伴う様々な現象は、秋分図を地でいく出来事で、わかりやす過ぎるくらいの、正に星の運行・宇宙の流れそのままです。

 耐用年数を年残しての事故であることや随所に亀裂が発見されるなど、市は予算不足を理由に小手先の対応で、劣化をやり過ごそうとしていたのかと思われても仕方のない状態でした。

 このようなことは和歌山市に限らず、全国でいつでも起きる可能性があるのだとも思います。 (Y.Kさん・和歌山県)

 

 先月、天秤座の星宙予報(2021年秋分号)での秋分図解説では、「設備投資の必要性」について、こんなことを書かせてもらった。

 

 個人/企業/国がまず最初に着手してほしいことは設備投資である。それなりの生産性の向上や未来の可能性を望むのなら、古い技術や設備、デスクワークに向いてない家具、無料の情報やソフトの使いまわしなどはやめ、思い切った環境への投資は必要となるだろう。自分を活かす、自分の能力を活かすためには、そのための道具は必須である。不備があると感じている環境、設備、技術などがあれば、今から着手してみてほしい。それが整えば、もっと未来に意識が向くようになるだろう(柔軟サイン・乙女座から次の柔軟サイン射手座へと進むイメージ)。

 

 

 

 こうした中、先週は JR東日本でも変電所火災の影響による運転見合わせ、今週末は渋谷駅改良工事による52時間に及ぶ運休など、日本のあちこちでも設備投資の必要性が垣間見られる。

 私事では、つい先日、占星術アプリの使い方動画を撮影したところ、多くの生徒さんたちが「アプリ導入のためにPC環境を整えたい」そして「もっと現場力をつけたい」と張り切ってくれている。

 「設備を整え、道具を身につける」

 秋分から冬至までの三ヶ月の大事なテーマだが、皆さんはこれからの未来を生き抜くために I have=環境、資源、道具を鍛えることができているだろうか。

 

 

 さて、前回のテーマの見直しはここまでとし、ここからは、2021年の蠍座期の星宙予報に移っていこう。

 

 ぼくらの努力は、ほんの大海の一滴みたいなものかも知れぬが、くたびれす、あきずにやって行くうちには、お互いに成長して、一人ずつが自分でものを考えていくようになる。

 

 まるで投票の呼びかけのようだが、これは 2021 蠍座の言葉 で紹介した『暮しの手帖』の初代編集長・花森安治の言葉。人間の<暮し>を見続けてきた花森さんが言うのだから、きっとそうなのだろう。

 政治の世界でも、安倍忖度の新政権と言われようが、「立憲」も「国民」も略すと「民主党」になってヤヤコシイと言われようが、とにかく「くたびれず、あきずにやって行く」ことが大事なのかもしれない。

 

 「私事=わたくしごと」として関与していくこと。

 これは水エレメントの目指すところである。水エレメントは、「わたくしごと」と感じたときのみ、心が動き、行動が始まる。

 ということは、「わたくしごと」と思えないものに対しては、完全な無関心でいられるのも水エレメントの特徴なのだ。世界で起きているすべてのものごとに、「わたくしごと」になっていたら身がもたない、心が疲弊してしまう。だから、不動サイン・蠍座はそこに自分なりの価値づけをする。

 

 自分にとって価値あるものと判断すれば、それに対しては徹底的に“イン”であり、自分の価値基準に満たないものは徹底的に“アウト”なのだ。また、その受け皿、器(月=心=蟹座)があまりに小さいと狭量でかたくなで無知なパーソナリティが出来上がり、その受け皿、器(月=心=蟹座)が大きければ大きいほど、「わたくしごと」の範囲が大きく広がる。
 たとえば花森さんのように「いわば名もない人たちの、ありのままの記録」と向き合ったり、はたまた「自然破壊」や「環境破壊」といった地球規模の危機に対しても、「わたくしごと」として向き合い続けることになるのかもしれない。

 

 つまり、「わたくしごと」の意識というのは、心の受け皿、器の大きさの問題ということになる。そして、蠍座はそこをあえて広げていくこと、関心・関与の範囲を広げていくことが目標になるのかもしれない。

 

 それはなぜなのだろう。

 水エレメント・蠍座はなぜそうまでして、関心・関与の範囲を広げる必要があるのだろうか。静かにそっと自分の身の周りだけ守っていればいいではないか? 手を伸ばせる範囲だけこそっと守って入ればいいのでは?

 

 戦争体験を言葉少なに語った際、花森さんはこう言った。

 当時は何も知らなかった、だまされた。しかしそんなことで免罪されるとは思わない。これからは絶対にだまされない。だまされない人たちをふやしていく。

 

 蠍座は真実を探求するサインであると言われている。

 それはこうした心の痛み——知らないばかりに、だまされ、利用された、自分にとって価値を感じないことにまで関与させられた——から逃れ、少しでも自分の価値ある美しい世界を守るために、しっかり把握、理解、関与し、戦い抜く必要があるのだろう。

 

 そこで、2021年の蠍座期は、そんな考えからスタートしてみたい。

 あまりに自分が世界に関して無関心であるなら、それは心の防衛のなせる仕業なのかもしれない。けれど、もしも少しでも関心・関与の範囲を広げることができたら、「わたくしごと」の領域が少しでも広がれば、世界はもっと美しくなるかもしれない(ならないかもしれない)。けれど、私たちは「くたびれす、あきずにやって行く」必要があるのではないか、それが蠍座火星の「生きる」ということにつながるのかもしれない。

 

 では、2021年の蠍座期イングレスチャートを見てみよう。

 

 今回のチャートの特徴は、ライジングしている木星と8ハウス強調ということになるだろうか。ASC上にいる木星は10ハウスの支配星であることから、選挙は与党(10ハウス)優位で進んでいくことがわかる。というか、イングレスチャートによれば、もうすでに次の政権は決まっていると読んでもいいくらいだ。

 ただ、このチャート全体に言えることだが、今、現在の天空の星宙は非常に理想主義的なムードが先行している。まあ、選挙自体が「マニフェスト」を語るわけだから、ここは理想主義に偏っていても致し方ないだろう。

 野党は、IC=ハウスのルーラー、天秤座の水星はハウスに入室し、どこと組もうか、相手の出方はどうか、となにやら画策している様子が伺える。朝日新聞の見出し「野党共闘217選挙区で一本化 140区で事実上与党との一騎打ち」はこれにあたるだろう。

 

 生き残っていくためには手段選ばず。これはこれで必要なことであることは間違いない。

 どことどう手を組むのか、誰のどんな力を利用するのか、切り捨てるのか、取り込むのか、その選挙区を譲るから、こっちの選挙区の応援はよろしく、この時間帯は自民党の応援演説があるから、同じ時間にぶつけようetc……などすったもんだをやりながら、選挙当日を迎えることになるのだろう。

 ただ議席を獲得するための選挙にうんざりはする。しかし、本気でサバイブし、勝ち取る力がなければ、アジア外交などとてもできるはずがないわけだから、ここは理想主義的なきれいごとをいうのはやめておこう。

 

 さて、イングレスチャートで力を持っている天体は二つ。6ハウスを支配する牡牛座・月(イグザルテーション)と12ハウス、ASCを支配する水瓶座の土星(ルーラー)。ハウスー12ハウスを支配していることから、国の安全保障や防衛力の強化というテーマがピックアップされていることが予想できる。

 たとえばコロナの新規感染者が落ち着きを見せること(月・イグザルテーションなので一時的なものかもしれないが)、その間に医療体制を整えることで国の安全を作れること。

 また、繰り返される北朝鮮のミサイル発射など、安全保障で考えると、今こそまさに日本の国防問題に向き合うことが、国力を上げる重要なテーマだと考えられる。

 

 一方で、イングレスチャートで力を落としているのはハウス、ハウスを支配している火星。2ハウスは内需、ハウスは輸出入といった貿易問題と考えると、「中国の1~8月サービス貿易輸出入総額は9.4%増 エンタメや知的財産権が好調」に比べ、日本の落ち込みは十分予測できる。しかし、射手座=ハウス=木星は2022年以降の重要なテーマになることから、ここでもう少し、世界的に存在感を高めておきたいところだ。

 

 こうした流れを踏まえて、個人/企業はどんな意識をもって過ごせばいいのだろうか。

 まずは、ハウス的なテーマに力を注ぐ必要がある。つまり、狭く閉じた環境を少しずつ広げる努力——世界を「わたくしごと」と捉える範囲を広げ、「何も知らなかった、だまされた。これからは絶対にだまされない。だまされない人たちを増やしていく」という気概を持ち、わからない=違和感を少しでも失くしていくこと。

 また、人、お金、将来の可能性、信念、目的意識、自分にとって価値あるものをもう一度把握し直し、サバイバルするために真剣に画策すること。きれいごとではない世界が差し迫っているわけだから、「だまされない」よう、いやむしろ自分をだまさないよう、きちんと自分の心が納得いくための画策をしていくことだ。

 

 そのうえで、このように必死に生きることに向き合うことで、わたしにとって、そして多くの人にとって大切な価値が見えてくる。

 誰にとっても〈暮し〉は大事、〈お金〉や〈安全〉も大事。そうすれば、蠍座生まれのタレントで実業家の紗栄子のように防災バッグを開発したりといった大きな関与の意識が芽生えることもあるだろう。

 それは、水瓶座的コモンセンスとなり、多くの人たちが価値を見出せる社会=制度へと進んでいくことにつながるだろう。

補足

ここでいうコモンセンスは、「常識」という意味にとどまらない。社会生活をする上で、誰もが知っているべき共通の認識、あるいは、思慮、分別、良識など、むしろ成熟した感性というのが水瓶座的コモンセンスとなる。昨今は、このコモンセンスが欠けている。だからこそ、分断が起こるわけだ。この辺のお話しは、いつか別の機会に。

 コモンセンスの必要性とは、つまり、よりシビアな意識を持つ必要性——長期的に長く生き抜く力を身につけること。

 自分の価値観や好みは脇へ置き、今、共通認識として社会で何が起こっているのかを考えること。今後、格差はますます広がり、非正規雇用の状況はますます厳しくなり、老後の不安は増していくだろう。そもそも老後という考え方では生き抜けないのかもしれない。「今がよければそれでいい」といった短絡的な意識ではなく、60歳以降の資本を考えること(水瓶座の年齢域!)も重要になってくるかもしれない。

 

 水瓶座的な社会を考える前に、なにはともあれ「一人ずつが自分でものを考えていくようになる」ために、「ほんの大海の一滴みたいなものかも」しれないけれど、「くたびれず、あきずにやって」いけたらいい。自分の価値を把握し、選挙に行って、日本のサバイバルの行方を見守りたい。

 

 そしてまた、自分の世界を少しでも広げるべく関心・関与をし、そこで得た価値を世界に向けて広げていく、そろそろ射手座=ハウスに向かっていく準備もしよう。そのうえで、まずは改めて、自分なりの価値基準を育てていこう。