2022 乙女座の言葉 赤塚不二夫 ┃アイデアを生み出すために、人や環境を頼りに、そして記憶にアクセスする

心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…

 

 少女雑誌の「りぼん」っていう月刊誌用に〝魔法の鏡を見て変身する少女〟というテーマを考えてみた。女の子と鏡って、絶対に切っても切れない縁のようなものがあるでしょう。この鏡にお願いすると、自分が成ってみたい人物に変身できる。これだったら、毎月連載でもいける。  

 ところがね、このテーマを副編集長に話すと、「いまどき魔法なんて古いよ。そんなもの小学生が面白いと思うかい」 って言われちゃった。  

 でもね、今は誰も魔法テーマを描いていないから、逆に新鮮に感じるはずですよって主張したわけだ。新しいもの、新しいものと考え過ぎて、なんか風俗の最先端のことを取り込もうとしてばかりいると、変な袋小路に入ってしまうことがあるでしょう。  

 そういう時、パッとうしろを振りむいてみるのも大切なんだ。タイムマシンなんか、いまどき古いよなんて言ってる時に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が当たるってことがあるだろう。  

 あのセンスだよ。このぼくのカンに狂いはなかった。

 

赤塚不二夫著「ギャグ・マンガのヒミツなのだ!」より

 

乙女座の言葉

赤塚不二夫

1935年14日、旧満州生まれ。乙女座に太陽、金星、海王星を持つ。

漫画家。『天才バカボン』『ひみつのアッコちゃん』などの作者として知られる。中学校を卒業後、看板屋や化学薬品工場で働きながら漫画を描き、石森章太郎が主宰する「東日本漫画研究会」制作の肉筆回覧誌「墨汁一滴」に参加。1962年に『週刊少年サンデー』で「おそ松くん」、『りぼん』で「ひみつのアッコちゃん」の連載を開始。1967年に『週刊少年マガジン』で「天才バカボン」を発表し、天才ギャグ作家として大きな注目を集めた。

 

 

 

 毎回、誰について書こうか非常に悩む。古今東西、自分の太陽を存分に生きた人は山ほどいる。では、その中から誰を選ぼうか。太陽を生きた人は誰も彼もが魅力的だ。各人それぞれにおいて個性があり、ユニークさがあり、仕事に対する真摯な姿勢があり、そして明るさもあれば、また暗さも兼ね備えている。統合とはこういうことかと、いつもハッとさせられる。

 そのような中、最終的に私が選ぶ基準とは、閉塞感のある社会に気づきや突破口を与えてくれる生き方をしている人、または星占い的なサインの理解を大きく裏切ってくれるような、自由に太陽表現、太陽活動をしている人、そんなところだろうか。

 

 そして、2022年乙女座期は赤塚不二夫。心理占星術の講座や研究会などを長くやっているが、「乙女座とはどのようなサインか」と問うと、まるで示し合わせたように「お役立ち」「奉仕」「神経質」「繊細」といったような答えが返ってくる。

 百歩譲って、仮にそういったパーソナリティを持ち合わせているにせよ(いないにせよ)、太陽サインを考える際は、「創造的なエネルギーを使って、何を成そうとしているのか」という答えを見つけることが重要になるのではないか、そんな話をよくしている。

 

 今回、私が赤塚不二夫を選んだ理由はこうだ。

 風の時代と言われて久しい昨今、風エレメントをやるためには火地風水の順番として、まず地エレメントの振る舞いを身につけていないとうまくいかないだろう、その中でも知力、アイデア力、現場力に富んだ乙女座から、その振る舞いを学ばせてもらうことがよいだろう、それには、赤塚不二夫の柔軟な姿勢から学ばせてもらうのがいいだろう、ということである。

 

 

 そして、その柔軟な姿勢を理解するために、6番目のサイン乙女座にちなんで、タロットカード・小アルカナ6のソードとカップのカードも一緒にみてみよう。

 赤塚不二夫の以下の言葉、

 そういう時、パッとうしろを振りむいてみるのも大切なんだ。タイムマシンなんか、いまどき古いよなんて言ってる時に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が当たるってことがあるだろう。  

 あのセンスだよ。このぼくのカンに狂いはなかった。

 

 これは、まさに小アルカナの全てのカードが出そろったときの世界とのマッチング(6=乙女座は世界とのマッチングという意味を持っている)を示しているだろう。

 特に、俗に「ノスタルジー」と言われているカップ6のカードは、赤塚不二夫のアイデアを限りなく支えている。つまり、「そういう時、パッとうしろを振りむいてみるのも大切なんだ」ということ、自分の中にある「ノスタルジー」とアクセスするということになる。

 それにちなんで、赤塚不二夫の他の言葉も紹介したい。

 

 ニャロメが出てきたついでに、ベシガエルが出て、毛虫のケムンパスも出てきた。サブのサブ・キャラクターというところか。 「本は読むベシ、夜は寝るベシ」  と、ごくごく当たりまえのことしか言わないところが面白いというのでウケた。  

 このベシ言葉は、黒澤明の「七人の侍」の中からヒントを得たんだよ。村の水車小屋に住んでいる長老のセリフだ。村人が野盗に困って、侍をやとおうか、やとうまいか悩んでいると「やるベシ」と言う。この時の印象がずーっと残っていたんだ。

 

 これなどもそうだ。誰かから与えられたヒント(ソード・剣)、その印象を持ち続け(カップ)、そしてそのI have(ペンタクル)を必要な時に引っ張り出し、それを外向きに表現していく(ワンド)。この枚セットの訓練こそが、「今、ここ」に必要なアイデアや工夫を生み、ユニークな作品へとつながっていく、「乙女座の訓練」ということになる。

 最後にもう一つ、赤塚不二夫の言葉を紹介したい。

 

 もうひとつ忘れられないのが、ウナギ犬だね。これは大いに私の気分が反映してできてしまった珍しい例だ。

 真夏のアイデア会議の時にね、どうもクーラーがよくきかない。腹も減ってきていて、生ビールが飲みたくて仕方がなかった。ついでに、新宿の「うな鐵」でウナギを食べたい。でも原稿が遅れていて、外出はダメだと五十嵐氏がいうんだ。そこで投げヤリになって、炎天下に腹を減らしてイライラしている警官をまず登場させた。彼がカバヤキを喰いたい……と思っていると犬がくるんだ。とりあえず、その犬を食べてしまうことにしようと思ったら、それではつまらない、犬がウナギに見えたらどうだろうと長谷が言ったんだった。「犬がウナギに見えるというのは無理があるよ」と反対したんだが、暑さのせいで幻覚で見えるんだから大丈夫だというわけだね。

 

 自分が最低だと思っていればいいのよ。一番劣ると思っていればいいの。そしたらね、みんなの言っていることがちゃんと頭に入ってくる。自分が偉いと思っていると、他人は何も言ってくれない。そしたらダメなんだよ。てめぇが一番バカになればいいの。

 

 まさに、「船に乗ったら船頭任せ」ソード6のカードが生きた体験だ。よりよいものを生み出すために、人や環境とどうマッチングするか、自分が個性がない、面白いアイデアを生み出せてないと思ったら、ぜひ赤塚不二夫の言葉を頼りに、もう一度バカになってみる、人を頼ってみる、また自分の中に既にある(=I have)大切な記憶にアクセスしてみるといいかもしれない。この訓練が積み重なることで、初めて次の風エレメントらしい活動が始まるはずだ。

 

 2022年乙女座期、あなたはどのような自分自身の記憶や I have に出会うことができるだろうか。