2022 蠍座の言葉 ミヒャエル・エンデ ┃未知なる内的冒険へ ~引き返すのは恥だ。わたしはそれを受けて立つ

心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…

 

 

 恥じることなく、白状しましょう。
 わたしを書くことへとかりたてる、まことの原動力は、ファンタジーの、自由で、意図がない遊びの楽しみなのです。
 わたしにとって本を書く作業はいつも新しい旅立ちであり、その目的地をわたしは知りません。
 それは私を難関に立ち向かわせる、未知の冒険です。
 その冒険を通じてわたしのなかに、それまでまるで知らなかった体験や考えやアイデアが生まれてきます。
 それが終わるときには私自身までもが当初とちがう人間になっているような冒険です。
 その遊びは意図があってはおこなえません。冒険がどこへ連れてゆくのか、前もって知ったり計画しようとする者は、そのことですでにそれをさまたげてしまうからです。

 

著書「エンデのメモ箱」より

 

蠍座の言葉

ミヒャエル・エンデ

1929年1112日ドイツ生まれ。蠍座に太陽、水星、火星を持つ。

父親はシュールレアリスムの画家エトガー・エンデ。1950年から俳優として演劇活動をおこない、そのかたわら、戯曲、詩、小説を試作する。1960年『ジム・ボタンの機関車大冒険』を発表。1961年にドイツ児童文学賞を受賞。その後、『モモ』『はてしない物語』などを発表。現代社会の問題を鋭く描いた作品らは、児童文学の枠を超え、また世代や国境を越え愛読されている。1995年、胃ガンにより66歳で逝去。

 

* * *

 

 今回はいつにもまして言葉を選ぶのに時間がかかった。エンデの語る言葉のひとつひとつがいかにも「蠍座らしい」と思えるものばかりで、万華鏡のようなエンデの世界に触れ、蠍座の複雑さというか、象徴そのもの自体の複雑さを思い知った。

 

 エンデの描く世界が多彩な色を放つ理由は、それを支える彼の知識が多様な価値の集合体――シュタイナーの人智学にはじまり、世界中の神話から東西のオカルティズムの知識まで、まさにプリズムのような輝きを持っている――から構成されており、ゆえに彼の言葉は、同じく蠍座生まれのモネのように、光も影も、生も死も境界線もなくごちゃまぜに存在しているようで、切り取る箇所を見つけるのが難しいと感じたのだ。

 

 今回、最終的にこの言葉を選んだ理由は、占星術的考察を深めるため、同じ支配星・火星を持つ牡羊座との違いを明確にしておきたいと思ったからだ。

 

 1番目のサイン牡羊座は火エレメント。強い意思や目的意識を持ち、人生という「冒険」へと歩みを進めていく。一方の蠍座は、8番目のサインで水エレメント。

 この「水」というのが意外とやっかいなもので、その運動は、実際、予測がつかない。コップを倒したときの水の行方もそう、毎年の必ず被ることになる水害もそう。思いもよらないところから水は流れ、浸食し、私たちをいつもおののかせる。

 

 それが占星術の象徴で言うところの水=心ということである。

 

 つまり、「未知の冒険」というときは二つの意味を考えることができる。
 一つは、知らない土地、知らない体験、知らない人々を見出すという外界に向けた火エレメント的冒険。もう一つは、心や意識といった内なる世界の中で自分を見出すという水エレメント的冒険。私たちは、人生において、この二つの冒険をして、外界と内界を知ることになるのだ。

 エンデは冒険(おそらく内的な)について、さらにこう言っている。

 

 どうなるかすでにわかっている冒険は、本当の冒険ではないでしょう。
 それならどこかの旅行会社がアレンジする冒険セット旅行だ。
 本当の冒険は、そんな力が自分のなかにあるとはそれまでまるで知らなかった、そのような力を投入しなければならない状況へと人を運んでゆくものです。そうして、そんなふうにして自分を知ることになる。
 わたしは、いわば書くことを通じてそれを行っているのです。書きながら、わたしはわたし自身についてなにかを体験する、そのなかには、わたしのなかにあることも、わたしがそれをできることも、それまでまったく知らなかったことです。考えるだけでは、それはわからないことなのです。

 

 わたしたちは、エンデの言うことをよく知っているはずなのだ。
 理由はよくわからないが、なぜかそのような体験=冒険がはじまってしまった。意味も意図も、出口はまったく見えない中で、それでもやみくもに進んでいったその先に何かしらの発見がある、明白な意識のもとでは、おそらく見つけることはできなかったであろう発見がある。太陽・蠍座のピカソの言葉「わたしは探さない、わたしは見つけるのだ」という言葉もある通り、探して見つけるものではなく、生きて、エンデの場合は書いて、その意味を知ることになったのだろう。

 

 心の赴くままに、といっても私たちの心の無意識は、私たちをどこに連れていくのかわからない。水の運動が予測できないように。それならば、今、手にしている活動に身を投じてみるのはどうだろうか。どこに流されるかわからないが、その流れの途中で、思いがけない漂流物と出会えるかもしれない。

 

 読書の体験もそうだろう。学びもそう。日々の仕事でもそう。「どこかに意味はないかな」と探しているだけではだめだ。死ぬ覚悟=コミットメント=どこにたどり着くかわからないけれど、この流れに乗るしかないという覚悟さえあれば、必ずなにかしらの発見はあるだろう。

 

 エンデは、さらに続けて言う。

 

 アーサー王伝説で、わたしがいつも心躍らせた言葉がある。この伝説でくりかえし現れる成句「引き返すのは恥だ。わたしはそれを受けて立つ」だ。
 もちろん、冒険を受けて立てば、予測できないさまざまな困難にぶつかることがしばしばある。そして悩み、苦しみ、はてには、「だめだ、どうしてもうまくゆかない」と言う。そのようなときにわたしは自分に言い聞かせたのです。 
「引き返すのは恥だ! いや、だめだ、だめだ、引き返してはいけない!」

 

 占星術では、蠍座の先には射手座、そしてMCという到達点が待っている。ここで引き返したら、おそらく自分との闘いに負けることになる。一歩、さらに一歩進むことで、つまり、「そんな力が自分のなかにあるとは、それまでまるで知らなかった、そのような力を投入しなければならない状況へ」と歩みを進めていくことで、おそらく「それまでまるで知らなかった体験や考えやアイデアが生まれて」くるだろうし、「それが終わるときには私自身までもが当初とちがう人間になっている」のだろう。

 

 これがいわゆる、蠍座の変容体験ということになるのだ。

 

 まだ見ぬ「わたし」は、おそらくその時を待っている。あとは船に乗り込むだけだ。きっと水=心は、どこに進むかを知っているのだから、なんとなく手にしたもの/ことを、さらに追い求めてみるより他はない。

 

 さあ、今期の蠍座は内的冒険へと船をこぎ出そうではないか。何が起こるか、どこへ進むのか、そんなことは深く考えなくても大丈夫だ。「引き返すのは恥だ。わたしはそれを受けて立つ」という気概さえあれば、きっと見たことのない「わたし」を発見できるのではないだろうか。

 

 

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これまでいくつもの占星術講座を受けてきましたが、星の意味など、どこの講座でもほとんど同じで星座や惑星の解釈が単調な感じだったのですが、今回、nicoさんの講義で陰陽の説明も加わって読み方の幅が広がることに感激しました。

普通の占星術の講座では、何度も何度も基礎を学び、その繰り返しが大切だと言われてきましたが、基礎~プロ講座まで受講し終えても、「この読み方で大丈夫なのかな?」としっくりこない感じと不安ばかりで、最近はずっと行き止まりのような閉塞感を感じていました。

でもこちらの心理占星術を受講して、久々に「占星術ってこんなに面白かったんだ!」と思えました。心理占星術と出会い、まだまだ勉強できる! という新たな学習意欲が沸いてきました。

自分の人生にこんな楽しみを与えて頂いたことや、nicoさんのような素敵な先生にご縁を頂いたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
(大阪府・Kさま)

 

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基礎講座では、ホロスコープを構成している天体、サイン、アスペクト、ハウスといった象徴を学び、それらがどのように成り立っているのか(構造)を理解します。ホロスコープ・リーディングのための土台をしっかりつくっていきましょう。

心理占星術の学びは、人生の歩みと似ています。

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