nicoの星宙予報2020 牡羊座

 年末の「2020年を予測しよう」という時期読み勉強会では、ちょうど土星が山羊座から水瓶座にかけて運行するタイミングのチャートをピックアップし、「排他的な意識を生みやすい時期」「分断のとき」、また「大きくなった理想をダウンサイジングする時期」と表現した。1929年以降にかけての世界恐慌とナチ党躍進、1961年のベルリンの壁設置、1989年以降にかけてのバブルの崩壊と湾岸戦争、そして2020年、これらすべて山羊座から水瓶座への土星の流れで起こっている。

 年末の時点では、何かヘイト的な動きが激化するのか、もしくは米中の問題が複雑に動いていくのか、イギリス脱退によりEUが揺れるのか、その程度の予想しかできなかった。

 そして今、私たちは望むと望まざると閉ざされた生活を余儀なくされている。ヨーロッパ諸国は国境を封鎖、オーストラリア、ニュージーランドは事実上鎖国、アメリカも全世界への渡航中止・退避勧告を出した。この事態をドイツ首相は「第二次大戦以来の試練」と表現したが、それぞれの国が各々のやり方で国を守ろうと奮闘している。

 戦争はもちろん未体験だが、一時的ではあるにせよ、このような断絶された世界を目の当たりにするのは初めてのことだ。なるほど、対応にも国民性にも個性が出るものだと、改めて「差異」を実感している。
 つまり、この土星の流れこそ、まさに個人/企業/国の「アイデンティティ」の見直しの要請にほかならない。 

 私たちは、土星の30年サイクルを経て、また冬の時代を迎えつつある。冬の時代は、余計なものをそぎ落とし、必要なものだけを残すよう要求される。雪国のように他から切り離され、余計なものを省き、骨と皮(山羊座の支配)のみになったとき、ようやく自分たちの在り方、価値観、あるべき姿が浮かび上がってくる。

これが土星=MCの出現のプロセスである。
 
 これ以上、私たちは希望的観測に身を寄せることはできないのではないか? 目の前にある現状を受け止め、「あるもの」で対策を立てていく必要があるのではないか?

 この頭打ちの感じが、山羊座木星のエッセンシャルディグニティfall(-4)ということになる。

山羊座の一つ前のサイン、射手座の木星で成長、発展の可能性のピークを迎えてしまった。世界はITやAI、仮想通貨やグローバリゼーションのおかげで「きっと」「もっと」よくなるだろうと大きな期待を抱いてはみたものの、結局、目を覚まさざるを得ないのかもしれない。

 発展、成長し続けるものなどないのだ。

 上がったものは必ず落ちる。操作された株価は必ず破綻する。

 自分たちの本来の構造=骨と皮に合わない態勢を無理にとろうとしたら、必ず、身体のどこかを痛めてしまう。

 物事には限度がある。個人/企業/国に合わないシステムや動きは、このタイミングで大きな見直しに迫られるだろう。

 

 これが2020年の春分図となっている。

 多くの占星家が注目している点は、山羊座に集中した天体群(火星、木星、冥王星、土星)だ。このあと、火星は木星を追い越し、冥王星とコンタクトをとった後、水瓶座に入室した土星とコンジャンクションを形成し、牡牛座の天王星と90度の角度をとる。なかなか忙しい展開だ。

 

 冥王星のコンタクトに関しては、

  • 思い通りにならない状況にビビる
  • 思い通りになるように必死に画策する

  (例)オリンピック開催やその収益にしがみつく、ドルを増刷する

  • 依存した考え、やり方、立ち行かなくなっている問題、関係性に対して手放す覚悟を持つ
  • 手放さなければ、これから先もびくびくした状況が続く無力感や脆弱さを引きずることになり、依存したものにしがみつかざるを得ない機会が続く。
  • しぶしぶでもその状況を受容することで、新しい価値、力の発見が起こる

おおよそ、このような流れになるだろう。

 

 欲望の通りに事が進むと思ったら大間違いだし、怖がってみても見てみぬふりをしてみても状況は一切変わらない。

 もしも何か不安があるなら、このタイミングはとても有効的に使えるだろう。

 勇気を持って現実を受容し、力の限りを尽くすこと。

 きっと世界は変わって見えると思う。

 

 最後に、水瓶座土星と牡牛座天王星の意味を考えてみたい。

 Newsweek 最新号「観光業の呪い」の中に「観光業への過度な依存が地元の未来を破壊する」という記事があった。経済成長の特効薬とみなされがちなツーリズムだが、頼り切ると本当の意味での成長の機会を奪われるというのだ。それは、経済用語における「資源の呪い」と言われている、いわゆる天然資源に依存する国の経済ほど脆弱で貧困を招きやすいというもの。

 

 これを占星術的に考えてみよう。 

 資源は牡牛座=2ハウス、また過去の遺産を利用した観光業は8ハウス。この資源と遺産の消費だけでは基本的に未来の発展はない。

 となると、既存の価値頼みではなく、新たに価値を創造していかなければならない。それを5ハウス(個性、特技)―11ハウス(リノベーション=価値の再創造)を使って生み出すことが大切になる。

 風エレメントとしてのアイデアや工夫、多種多様な視野を利用して、「ありもの」だけに頼らない社会的価値を生み出すことは大いに可能なはずだ。

 必要に迫られた時こそ、代替案がひらめくこともある。これがゼロか百かの発想――冥王星意識からの脱却にもなるかもしれない。コロナウィルスにまつわる問題は、私たちがこれまで抱えていた課題の多くを解決する糸口になるかもしれないのだ。

 今、何か課題があるとしたら視点を変えて物事をとらえ直してみよう。

 まあ、しかし、物事はそう単純には運ばない。土星が水瓶座に本格的に移る2020年末までに、上記に書いた一連の流れを押さえておく必要がある。

 

 そのためにも本来の春分のテーマに立ち返らなければならない。

 身体のテーマで考えると春の始まりは代謝を上げることが重要になる。暖かくなってくると代謝が下がるので、意図的に代謝を挙げ、エネルギーを積極的に取り入れ、ため込んだものを積極的に吐き出していく。

 だから、この季節は代謝を上げる食物(よもぎ、フキノトウ、セリ、つくし)が育つ。生存のために、新たな循環を生み出す(代謝)喜びを感じ、外向きに成長していくことがこの時期の本来の過ごし方だ。

 

 私の講座でしつこく言う牡羊座=火星=自分のサイズに合った場や活動領域をつくることができれば、井原西鶴の言葉ではないが、「50年やそこらの人生、何をして暮らしたところで、生きられないことはないはず」なのだ。

 「人は鎖につながれていても自由になることができる」という宗教的考えがあるように、むしろ閉じられた世界の中でこそ、純粋で自由な精神を育てられるのではないか?

 なぜなら、社会の規範(または思想と欲望)が揺れ、外側の鎖がぐらついたとき、はじめて人は内側の鎖に気づくことができるからだ。「自分はなんてつまらないものを求めていたのだろう」と。

 そして、やっと「本性」を満たすことのみに意識を向けることができるのだ。

 

 限られた世界の「あるもの」を慈しみ、健やかに生きるための循環を生み出すこと。

 社会暗示から自らを解放し、「本性」の在りかを探すこと。

 これが鬱屈した時期を乗り越えるテーマになるだろう。