心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
出来事の当たる・当たらないではなく、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えした一遍です。
先月、2024年9月の月イチ勉強会では、秋は起承転結の「転」の季節だという話を様々な角度から再解釈した。
思いもよらない動きがあり、ことによってはイライラしたり、不安が増幅されたりすることもあるが、それに合わせて、これまでの価値観や考え方を変え、対応していかなければならない。なぜならば、それは必要な変化であることが多いからだ。
自分だけが変わらずに踏ん張っていても上手くいかないこともある。しかし、ただ状況に合わせなくちゃと右往左往しても上手くいくわけでもない。
この時期は、起承転結の「起」のテーマの見直しでもある。ホロスコープの構造でいうと、春分の季節(牡羊座、牡牛座、双子座)のテーマを視点を変えて体験させられているのだ。
人によっては、自分のしたことがブーメランのように帰ってきたという体験になることもあるだろう。言ったことは責任を取らなくちゃいけないし、知らない間に傷つけていた人から逆襲されることもある。人は学ばない生き物だから、時々こうして痛い思いをすることも必要なのかもしれない。
石破首相だってそうだ。党内野党の立場にいたときは、好き放題言えていたことも、いざ首相になったら、いきなり方向転換するというお粗末な姿を露呈した。春分の季節には、裏金議員問題に対して、あれだけ強気に息巻いていたのに。
「転」とはそういう季節だということだ。自分では気づけなかったことに気づくには絶好の機会なわけだから、積極的に回収作業に勤しめるといい。特に今期の「転」は特別な意味がある。多くの占星家も言っており、私も既にあちこちで書き、話をしているが、ここでもう一度、「星宙百景・おさらい編~2024天秤座期」から引用しておこう。
今秋の3ヶ月間でもっとも大事なテーマは、約16年続いた山羊座・冥王星が11月20日にフィナーレを迎え、次の水瓶座へと移動すること。(中略)
そこで、9月の月イチ勉強会では、国でも企業でも、そして個人でも山羊座的トラウマや痛み、欲望としっかり向き合い、解消できてもできなくても、自分なりの決着をつけておく必要があるだろう、そのような話をしました。
星宙百景・おさらい編~2024天秤座
秋の「転」の季節の中心にある蠍座は、冥王星ともっとも親和性のあるサイン。そして、蠍座イングレスチャートはASCが蠍座になっている。ということは、うまくいけばこの蠍座期に16年分の答えを回収できるかもしれないということだ。
薄々気がついている方もいるかもしれないが、「回収」というのは少しもワクワクする作業ではない。良くても「あーやっぱりなー」「わかってたけどけっこうきついなー」という後ろ向きの気づきがあるくらいで、悪く出たら「みんなひどい! わかってくれない!」という心持ちになることもある。それが16年分の回収ということなのだから、実際は一大事なわけだが、もしかしたら多くの人は、
いつか解消しよう、解消しようと思いつつ、そのまま放置し続けていたら、いつの間にか水槽の表面が苔や藻で覆われて中身が見えなくなっていた。まあいいか、外の世界がどうなっているのかもよくわからないし、住み心地が悪いわけではない。じっとしていれば何の不自由もないのだし。
星宙百景・おさらい編~2024天秤座
しかし、一歩外に出たら、自分たちの知っている世界ではなくなっていた。そして、いつしか水槽の水は腐敗臭が漂い始めていた…
この苔むした水槽のような状態に甘んじることだってできる。もちろん、それで問題なくやり過ごせるなら、そのまま次の水瓶座・冥王星に突入し、そのまま20年間を過ごすというのもありだ。
だが、もしもこの状態で20年はつらい…と思ったら、今、この時期に何かしら手を付けておくといい。次の20年間に持ち込みたくないものは、今からキュッキュと掃除しておけばいいのだ。
そこで今回、お伝えしたいのが、先の記事の続きである。
秋分図のASC上にある木星、そしてそこに90度の角度で配置されている水星の重要性です。こちらがなぜ大事なのか。それをどう解釈すべきなのか。それは、「星宙百景・蠍座期」でお読みいただけたらと思います。
星宙百景・おさらい編~2024天秤座
占星術ではASC軸、MC軸、軸上にある天体は、その時期に必要なテーマとして読むことができる。見ていただくと、秋分図はASC上に木星、そこに水星が90度、蠍座イングレスチャートではASC上に水星がいるのがわかるだろう。
つまり、今期の「転」の時期は、水星、木星のテーマが「回収」の鍵になるということだ。
そして、次に紹介する二つのチャートは時期読み研究会、また月イチ勉強会で参考にしたもの。面白いので、この記事でも共有させてもらう。
一つ目のチャートは石破首相のネイタルチャートに対し、先の総裁選スタートのタイミングを重ねた三重円、二つ目のチャートは自民党設立のイベントチャートに衆院解散時のタイミングを重ねた三重円になる。
ここにも繰り返し水星、または木星の象徴が示されているのが見て取れるだろう。秋分図、蠍座イングレスチャート、石破新総裁、自民党の三重円に繰り返し表示されていることには、何かしら深い意味があるはずだ。
これら天体のユニークなシンクロニシティを踏まえて、昨日の月イチ勉強会の冒頭で、2024年の新書大賞を受賞した『言語の本質(今井むつみ/秋田喜美・著)』の考え方をもとに「柔軟サインの構造とスキーマと言語の関係について」の話をした。スキーマとは、今井さんの言葉を借りれば「自分でつくった暗黒の知識のかたまり。脳のバックグラウンドで働くもの」ということ。わたしたちが普段何気なく口にしている言葉の背景には、無意識に過去の経験や長期記憶が影響を与えていることになる。
スキーマの話は風の時代を迎えるための態度の一つとして、ぜひ月イチ勉強会の見逃し動画で、考える機会をつくっていただきたいのだが、当記事でお伝えするのは、今、国に、政治に、企業にわたしたちに必要な水星、木星についての考察である。
それは何かというと、繰り返しの引用になるが、
もっとも大事なことを閣僚会議で決めてしまうという、昨今の自民党の悪しき慣例も安倍政権下でつくられたものでした。岸田政権下の2022年、安保保障改革の大転換――安保三文書(防衛費増税や相手の領域内を直接攻撃する「敵基地攻撃能力」等)を、国民への説明も野党との議論もないまま決定したわけです。
星宙百景・おさらい編~2024天秤座
この点こそが自民党にも、そして野党にも、わたしたち国民にも問われている姿勢である。
わかってもらえないと感じたとき、人は非常に落ち込む。でも、わたしたちは伝える努力をどれくらいしたのだろうか。表情や態度で空気を悪くしたりするだけで、またはいい人ぶって気にしないように見せるだけで、肝心なことを相手に伝える努力をしてこなかったのではないか。
または自民党のように、または昨今のSNSのように話の通じる人とだけイージーにつながって、わかり合えない人たち、違う価値観、違う文化背景をもった人たちとの対話を端折ってきたのではないか。
わかったふりをしても、結局、何一つわかり合えていなかったという虚しさ。もしかしたら、同じ党内でも、例えば立憲民主党しかり、公明党や維新の会しかり、腹を割って話すということをやってこなかったのではないか。だから、党内でも、国内でも、あちこちで分断が進んでいるのではないか。これはアメリカ、その他の国にも言えるのかもしれない。
そこで昨日の月イチ勉強会では、このような話もした。
結論だけをぶつけ合えば、かならず衝突が起こる。水星にとって大事なのは結論ではなく、思考のプロセスであり、ここが共有されれば、必ずどこかしら、何かしらの妥協点や共通項を見つけることができる。
結局、野党が分裂しているのもここが問題だったわけだ。特に立憲民主党。野党第一党であるという傲慢な態度が、協力し合える党、協力し合える政策を遠ざけてしまった。自民党以上に立憲民主党は水星、木星を行ってこなかったのかもしれない。だから、弱い野党のままなのだし、都知事選でもボロ負けしたのではないか。
今回、たしかに自民党の票が一定数、立憲民主党に流れるかもしれない。けれど、これは前向きな成果ではなく、自民党が嫌だったという後ろ向きの選択で選ばれただけである、ということを彼らは知っておくべきだと思う。
いや、他の党だってそうだ。話題は政治と金の話ばかり。安倍一強時代にあれほど時間があったにもかかわらず、どこも具体的な政策、特に国民負担を減らすことに対する経済保障の政策が見えてこない。彼らこそ、もっと丁寧に国民と議論を重ね、自民党をやっつける本当の武器を手にするべきだったのではないだろうか。自民党の水星、木星の不甲斐なさを叩ける千載一遇のチャンス、大事な国政選挙を前にして社会課題に対する政策の議論が不十分というのは、各党、あまりに情けない。
NPO法人「POSSE」で若者の労働問題に取り組む岩本菜々さんは、このようなことを言っている。
年越し派遣村の時は当時の民主党など野党が問題を強く訴え、09年の衆院選での政権交代にもつながりました。でも、今、困窮する人の状況に対して野党が強く訴えているとは思えず、うねりが起きません。失望感は、むしろ野党に対しての方が大きいです。
岸田政権は発足当時、「新しい資本主義」を掲げ、社会保障制度の改革や、富裕層の金融所得課税に取り組むと言って、若干期待もありました。安倍政権が進めた金融市場活性化の足元で、非正規など不安定な雇用が増え、格差が広がったからです。
普通の人の暮らしが悪くなっていく中で、格差の拡大に歯止めをかけるのが金融所得課税の目的だったと思いますが、就任間もなく頓挫し、結局「貯蓄から投資へ」という政策だけが進みました。再分配の機能がなくなり、期待は打ち破られました。
いろいろな意味でわたしたちは聞くべき声を聞かず、現実的でない立派な主張ばかりを聞かされている。この時期こそ、この秋の三ヶ月こそ、国も、党も、企業も、そしてわたしたちも水星、木星の言いづらいことを伝える努力と聞きたくない声を聞く努力をしていかなければならないのではないだろうか。
11月5日にはアメリカ大統領選が控えている。段階的な利上げを目指す日銀が政治への警戒感を高めている。「転」の時期は続きそうだが、現実から目を背けず、必要な変化に対応していけたらと思う。
📺見逃し動画(有料)はこちらから
10月22日に開催された「月イチ勉強会」では、当記事で紹介したトピックスを180分かけ、丁寧に解説。特に現在、目の前で展開されている政治のゴタゴタは、さまざまな天体の象徴が「これでもか!」というほど、如実に反映されている出来事でもあり、象徴の勉強には恰好の材料ともいえるもの。地上の現実と天空のつながりをどう考えるのか、そんな勉強を深めたい方には是非ご覧ください。