
心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
出来事の当たる・当たらないではなく、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えした一遍です。
トランプが米大統領に就任してから世界中が騒がしい。これから各国のトランプ関税がどのように落ち着いていくのか、中国との交渉はどうなっていくのか、アメリカのトリプル安(債券安、株安、為替ドル安)、スタグフレーション化(景気後退とインフレが同時に進行)の可能性等々…。アメリカを中心とした世界経済がどうなっていくかは誰にとっても無関係ではないが、これらの動きは、春分図の7ハウスを中心とした西半球強調だったからだろうか。
今期の牡牛座期の東半球強調のチャートを見ると、まずは外部からの影響に負けない力をつけるべきなのではないか、そのような考えに至った。

星宙百景・牡羊座期のおさらい編でも書いたとおり、とにかく春分図からの一ヶ月は連日のように「トランプ関税に対し、日本はどのようなカードで臨むのか」といった話題で持ちきりだった。
そして、多くの日本人は思ったはずだ。「わたしたちにカードはあるのか?」と。日本の国民食であるコメ問題ですから解決できていない国なのだ。ばらまきでしか物価高問題を解決できないと思っている政府なのだ。自動車、または鉄鋼、アルミに対する25%関税に太刀打ちできるカードなどあるのだろうか。今回の関税交渉で日本がトップバッターに選ばれたことに対し、諸外国からは「実験用のモルモット」「炭鉱のカナリア」などと報じられている。ここまで言われる筋合いはないにしても、トランプにとって交渉のやりやすい国として選ばれたことは言うまでもない。
だからこそだ、だからこそ今期のイングレスチャートに見られるように、東半球的なふるまい―――状況を主体的に動かしていく力を持つ―――を身につけることが求められているのではないだろうか。
また、国内の動きを見ると、「財務省解体」「消費減税」を求めるデモの勢いが止まらない。デモの参加者は特定の支持政党がバラバラであることから、参院選を前に、各党が関税措置や物価高対策として消費減税論で支持者獲得に乗り出している。
経済は複雑なわけだから、財務省だけに問題を押しつけるのはかなり陰謀論的な考え方だが、この時期にこういった動きが起こったことは何かしら意味があるのではないか。
社会天体である木星と土星は、ほぼ同時に次の双子座期にサインを変える。まさに衆院選直前、またトランプの設定した相互関税90日停止終了の直前のタイミングでの移動である。
財務省前デモは、そもそも根底にあった国民の生活の苦しさをあぶり出していることは間違いなく、全米各地で活発化しているトランプ政権に対する抗議デモは、移民の国外追放や政府職員解雇に対する怒りと不満の表れであることも間違いない。
逆行して戻ってきた魚座金星が、そしていよいよサインを変える魚座土星が、人々の恐れ、不安、期待、願望をすくい上げようとしている。日本のデモは、参院選を揺るがす論点になるであろうし、全米のデモは、もちろんトランプ政権を揺るがす動きになるかもしれない。
そういった動きの中での牡牛座期である。ここからチャートを見てみよう。
とにかく、今期の牡牛座期イングレスチャートは、12ハウスの強調が目立つ。それと同時に、ASC軸、MC軸上に太陽と月がコンタクトしているのも印象的だ。4ハウスの火星が様々な天体の起点になっているのも気になる。
12ハウス、太陽、月、火星、このあたりから予測してみることができるだろうか。

まず今期は(ベタではあるが)タロットカードの12番目の大アルカナ「吊るされた男」のふるまいを導入することを考えてみたい。

12ハウス=魚座=海王星。
人は誰でも、自分の見たい世界だけを見ようとする特性がある。そのせいで、考え方が凝り固まり、発想が乏しくなり、見るべきものが見えず、わかるべきものがわからなくなってしまう。そして、だんだんと考えることが面倒になり、流れに身を任せるような生き方になってしまうのだ。
だが、逆さになって世界を見てみると、これまでとは全く違うものが見えるはずだ。同じものを見ていても、見え方は全く異なる。世界は刻々と変化しているのに、これまでと同じ見方でいいわけがない。今こそ、新たな視点を手に入れないと、世界を柔軟に受け入れるのが難しくなり、主体的に生きることもできなくなるのだ。
また、数字の12とは、2でも3でも4でも6でも割れるスーパー柔軟な数である。2の視点、3の視点、4の視点、6の視点で世界を見たとき、どんなふうに見え方が変わるだろうか。ぜひこの牡牛座期に試してみてほしい。
そして12ハウスは、こんな考え方もできる。12ハウス=魚座=海王星とは、これまで身につけた知識(双子座)、技術(乙女座)、専門性(射手座)を新たな視点で見直してみること。そして、そこからまだ試したことのないアイデアに着手してみること。新たにインフラを整備することで、環境に柔軟に適応していくこと。それが魚座=海王星=12ハウスの目標だと。
そこで、今期の牡牛座期は「今」を受動的に受け止めるのではなく、次の一手を打つ、その準備を始めることを提案したい。最近、よく耳にする話題で、「トランプ関税は日本の改革の好機になるだろう」というのは、まさにそういうことだろう。ピンチは、トランプ関税だけではない。停滞した状況に対して、どのようにメスを入れていくか、それこそ12ハウス=魚座=海王星の出番なのだ。
トランプがどう出てくるかわからない不確実な未来を前に、環境への適応力を高めることが今後の持続的な成長の鍵となる。国/企業/個人はサプライチェーン、市場、製品、組織運営のあらゆる面で、迅速な変革を進めていく。
それが12ハウス強調の時期の目標であり、そして双子座木星、魚座土星の総仕上げの時期でもあるのだ。
日本は24%という高率の追加関税対象国であり、米国市場へのアクセスが著しく制限されることになるかもしれない。そのせいで政治も経済も変化を余儀なくされるだろう。トランプ相互関税の導入は、国/企業/個人にとって極めて大きな挑戦となるのではないか。だからこそのASC=太陽、MC=月、4ハウス=火星の配置なのだ。
先に書いたように、今期のイングレスチャートは、西半球協調の春分図とは打って変わって、東半球の強調に加え、火星が中心になっているチャートとなっていることから、主体的な力を取り戻すチャートのように見える。牡羊座期は散々、6&7ハウス的な他者/他国に振り回されたから、今期は他者から離れ、自己の力を回復するといったように。
個人も次のことを自分の活動に置き換えてみるといいだろう。
① わき上がってくる恐れ、不安、期待、願望に耳を澄ますこと
② ものの見方を変え、柔軟な思考を手に入れること
③ 環境への適応能力を高めるべく、サプライチェーン、市場、商品、運営法などの改革を進めること
④ 相手次第ではなく、自分主体で打ち出すべきものを考える
いや、そうなのだ。まずは自分たちに対する見方をぐるっと180度変えてみたほうがいいのかもしれない。自分たちを「弱きもの」と卑下するのではなく、また外からやって来るものに対し、疑心暗鬼になるのではなく、 自己を、そして他者をもっと信頼してもいいのかもしれない。
デトリメントの木星は、あらゆるものに対し信頼を失いつつある今、今こそ信じる力を回復させていくことが大切になるのではないだろうか。誰かを、何かを誹謗中傷するのではなく、自分と、自分を取り巻く環境を信じ直していくこと。それが主体性を持つことの一歩になり、未来を築く一歩になるのではないか。
案ずるより産むがやすし。なんとかかんとかスタートした大阪万博などもそうなのか。きっと関税交渉だってそうなのだ。きっと恐らく、誰にでもカードはあるはずなのだ。
日本では参院選を前に、これから声が大きい人たちが増えてくることだろう。選挙熱に取りつかれた人たちは、耳心地のいい公約やら、敵対している政党の悪口やらを声高に叫び始めることだろう。つい自分の信じたいものだけを受け取りそうになったときには、タロットカードの「吊るされた男」を思い出し、違う意見にも耳を貸すことだ。
また、わかりやすい解答にうっかり手が伸びていたら、そのときは一旦、足を止め、くるりと視点を変えてみよう。これまで気づかなかった考えやアイデアがやってきて、膠着した状況をやわらげ、何かしらの Aha!なのか ユリイカ!なのか、そこまで大げさじゃなくても、「なるほどそうか!」と膝を打ちたくなるようなヒントが向こうからやってくるだろう。
その瞬間を楽しみに、このトランプ時代を乗り切ってほしいと思う。
心理占星術 月イチ勉強会、毎月第4火曜日開催
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前半は、今回の記事でもご紹介した春分からの流れを振り返りながら、牡牛座のトランジットチャートから、今どんな未来が読めるのか。双子座木星、牡羊座土星 エッセンシャルディグニティはトランジット天体にどう影響するか、「魚座から牡羊座へ」の意味についてを考えていきます。
後半は、現場検証。参加者からの持ち込みチャートを分析します。
「集客がうまくいかない。どうしたらいいか」
最近、多くの人から寄せられるお悩みですが、回答が難しい質問でもあります。こうした問いに対し、どのようなセッションをつくっていけるのでしょうか。
チャートを持ち込んでくれたTさんは、「イマイチ解決できた感がなくて、モヤモヤが残ったままなので、みなさんの知識をお借りしてスッキリしたい」という希望を伝えてくれました。参加者全員でお応えしてみましょう。
どなたでもご参加できます!