真夏の太陽は何を明るみに晒すのか、牡羊座0度が問う自分の存在の力と価値 ~星宙百景 2025 獅子座

心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。

出来事の当たる・当たらないではなく、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えした一遍です。

 参院選の2日後、太陽は獅子座へとイングレスした。ここから一ヶ月は、夏がもっとも極まる季節になる。
 この季節の定番のネタになるが、獅子座期とは、あらゆるものが白日の下にさらされる時期だと考えられている。真夏の太陽を前にすると、何事も隠し立てはできない。すべてが明るみに晒される。象徴的に言うと、太陽の力が増すというのはそういうことだ。

 このタイミングで、物事が明らかになるのは非常にいいタイミングだ。今抱えている問題にも、奥の方にしまわれた想いにも、強い太陽の光が当たるということである。

 トランジットの流れを見てみると、獅子座太陽の力が増した後、9月上旬には土星、海王星が魚座へと戻っていく。

 一度牡羊座へと進んだ天体が魚座へ戻るということは、占星術的には大きな意味があると考えられている。大げさに言うと、母親の胎内(魚座)から産道を通り、胎外へと産み落とされる(牡羊座)という一大イベント。その一大事をくぐり抜けてきたにもかかわらず、また胎内へと戻らされるという動き。心地よい世界(魚座)から新しい可能性(牡羊座)へとようやく一歩を踏み出したはずなのに、また、元いた場所へと引き戻されることの意味。その動きが9月上旬に起こる。それをもう少し詳しく考えてみたい。

2025年太陽・獅子座のイングレスチャート
2025年太陽・獅子座のイングレスチャート

 わたしたちは、なぜ魚座へと戻らなくではならないのか。もしかしたら、まだどこかに「心残り」があるのではないか。どこか心の奥に思いを残したままなのかもしれない。未解決な問題もあるかもしれない。

 石破総理の辞任を求める動きが続いているが、総理自身は進退について、まだ続投に意欲を見せているという。飛ぶ鳥跡を濁さずというが、逆行しているということは「潔く辞任」というのは期待できないかもしれない。政治とカネの問題も、関税交渉も結局、道半ばである。「心残り」があることは大いに理解できる。

 他党もそうだ。躍進を遂げた参政党や国民民主党も、今回はたまたま「日本人ファースト」や「手取りを増やす夏」などのワンイシューで民意を味方につけることができたが、彼らの政策はあまりに非現実的で幼稚な側面はぬぐえない。ひとまず成果を上げたとしても、実際、ここから腰を据えて取り組んでいくことになるだろう。

 未来を創っていくためには、間違いなく太陽の力が必要である。つまり、獅子座期にどこに太陽の光が当たっているのか。未来に何が必要だと太陽は考えているのか、今、それを見極める時期に来ているということだ。

 われわれ個人もそうだ。
 今、手にしている結果に満足していても、納得できていなくても、前に進んでいくためには「再考」「再検討」「再調整」は必須だ。勢いに任せて進んでも、懸念事項が残っているうちは、物事は前には進んでいかない。
 
 これまで「土星、海王星が魚座に向かって逆行する際、『本当の本当の問題とは何か』といった再考がテーマになるだろう」と繰り返し述べてきたが、先にも書いたように、自分の立ち位置ややるべきことが明確になる獅子座期に、再考、再検討ができるのはチャンスである。

 ここからどんな状況の変化が起ころうとも、どんな変更を余儀なくされても、速やかに対応できるよう、国/企業/個人も今後のあり方の見直しをしておく必要があるということだ。

 
 ここでもう一つのトランジット天体、蟹座を運行中の木星について考えてみたい。
 物価高、生活不安、政治不信、気候変動など、誰もが多かれ少なかれ、今を生きることに切迫感や危機感を持つようになった。そのせいで、今の生活を脅かすものをできる限り排除したいという気持ちも強まり、これまで以上に殺伐とした状況が生まれた。実際、蟹座木星になってから、例の「外国人問題」が争点化している。木星は流行をつくる天体だが、「他者との境界線を引こう」みたいな言説が増えたのもそのせいだろう。

 本来、木星が支配するサインは射手座(火エレメント)と魚座(水エレメント)だが、火エレメントの木星は「こうなったらいいな」といった better な未来に対し活力を高める一方、水エレメントの木星は「こうなってほしくない」といった worse な未来に対する不安を募らせ、活力を高めていく。端的に言うと、蟹座木星とは、心配が次なる意欲や行動を生むということになる。
 実際、わたしが知る限り、チャレンジや冒険という意欲よりも、心配や不安を理由に活動している人のほうが多いし、自分で行動を起こせない人は、何とかしてくれそうな人に心を委ね、思いを託し、夢を見る。それが今回の選挙結果にもつながったのだろう。

 実は、これは1989年の参院選でも起こったことだ。
 この辺の話は、7月の月イチ勉強会で詳しく話をした。1989年4月には、日本で初めての「消費税」が導入され、国民の不満が高まった。その後、リクルート事件により、国民の政治不信がさらに高まり、竹下総理が辞任。その後、竹下の後を継いだ宇野総理も女性スキャンダルで就任後わずか約2ヶ月で退陣。そして、1989年7月の参院選で、自民党は歴史的な大敗を期し、野党・社会党が第一党になり、ねじれ国会へと突入した。自民党は「リクルート事件」「消費税導入」「スキャンダル」「参院選敗北」などで大きく信頼を失い、「終わりの始まり」と言われた。

 1989年の参院選当日のチャートを見てみよう。

 土星、海王星のコンジャンクションが活動サインの山羊座(①)にあり、木星は蟹座入室目前の牡羊座ポイント(②)にある。

 土星、海王星のタイトなコンジャンクションは36年に一度やってくることから、1989年の36年後、来年2026年2月21日にタイトなアスペクトが形成されることがわかっている。しかも牡羊座の0度でだ(③)。

36年に一度起こる土星と海王星のコンジャンクション、次回は牡羊座0度(牡羊座ポイント)で形成される

 さらに1989年には、日米の貿易摩擦、経済摩擦が悪化し、「日米構造協議」がスタートした年でもあった。日本は自動車、家電などにおいてアメリカ市場で大きなシェアを持ち、対米貿易黒字という状況だった。この状況に対しアメリカは大いに不満を持っていた。この協議が発端となり、1990年代には、日本は流通、金融、サービスなどの分野で規制緩和・構造改革を進め、魔の「失われた30年」へと突入することとなった。

 2025年7月22日、日米関税交渉は15%で合意し、日経平均株価は大幅続伸したというニュースが飛び込んできた一方、関税をかけずにコメを輸入するという「ミニマムアクセス」において、アメリカからのコメの輸入割合を増やすことを考えているという報道も続いた。こちらも落ち着くまでには、まだ時間がかかりそうだ。

7/24の朝日新聞夕刊には、米国の産業再建のために、日本が約80兆円を投資するとあった。日本は米国産の農産物などを約1.2兆円分買い、コメの輸入を75%増やすと明記。米国はその見返りとして、相互関税の税率を25%から15%に下げるという。現場での反発が起こりそうな流れである。1989年以降の二の舞にならないよう、徹底的に交渉を進めてもらいたいところだ。

 というか、そもそも国民の暮らしの議論はどこへ行ったのか。まったなしの物価高対策だったのではないのか。「給付」も「減税」も選挙のための口上だとしたら、さらに政治不信が強まるのではないか。

 ということで、土星、海王星が逆行し、再び牡羊座へと戻り、0度でコンジャンクションする(2026/2/21)までの間に、迷い、惑い、再考、再検討、再修正、再設計などなど、再〇〇なことを模索しながら、不安を解消する作業を繰り返すことになるだろう。

 それができなければ、再スタートを切ることはできない。せっかく獅子座期で物事が明るみに出やすい時期なのだ。この時期の明るさを利用し、見るべきものを見て、再〇〇をしたい。


 何はともあれ、獅子座期のイングレスチャートのASC牡羊座を意識しながら過ごしてみるべきだ。わたしたちがこれから生き残っていくために、どのような力が必要なのかをしっかり考えておく必要がある。

 まずは自分のことを知る。自分というものを知っておかないと、何を大切にし、何を守るべきなのかもわからない。
 
 人にあおられず、自分の考えに触れる時間を多く持つことは何よりも大切なのだが、先にも書いたように、蟹座木星にあおられ、必要以上に自分を守り過ぎてしまって、脱皮がうまくいかないというケースもまま見られる。

 「外国人問題」のような外部のものに不安を感じるよりも前に、自分たちの存在の力、存在の価値を理解し、その力を高めておけば、むしろ「外国人」は問題ではなく「価値」や「資源」になるはずなのだ。

 自民党もそうだ。少数与党であることを考えると、ここから他党に協力を要請する必要が出てくる。その際、他党に足元を見られているうちは進む政策も進まないだろう。

 豊かに成長するためには、排外的では面白くない。けれど、自分たちの力がないうちは、たとえ善きものであっても受け入れることは難しい。
 
 この辺の力関係を見極めながら、2025年の獅子座期を過ごしてみてほしい。

もっと詳しく! 動画で解説「月イチ勉強会」

心理占星術 月イチ勉強会は、毎月第4火曜日開催!
さまざまな話題を心理占星術的視点で取り上げながら、象徴の考え方やリーディング力の向上と心理カウンセリングへの理解を深めています。

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2025年7月の勉強会は、参院選2日後だったことから選挙結果を分析!
牡羊座土星の政党乱立の行方と、天空の配置から見る「いまわたしたちは何を求めているのか」

現在、牡羊座初期度数(牡羊座ポイント)でコンジャンクションを取っている土星と海王星。参院選では、政党乱立の中、参政党が躍進。新たな流れが生まれようとしています。

前回、このアスペクトが形成されていたのは1989年。山羊座で起こった海王星&土星のコンジャンクションがもたらした社会の地殻変動はーーベルリンの壁崩壊、天安門事件、国内では昭和天皇の崩御に伴い平成がスタート、消費税導入などーーその後の社会を一変させることに。

こうした事例を引きながら、参政党党首・神谷氏のホロスコープを分析し、支持獲得の理由やわたしたちはいったい何を求めているのか。心理占星術の象徴から、今という時代の流れについて解説しました。(約90分)

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