
心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
出来事の当たる・当たらないではなく、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えした一遍です。
魚座へ戻る海王星「やり残した課題」
新内閣が発足した。賛否こもごもあるようだが、新しいスタートというのは、いつでも期待と不安が入り混じっているものだ。占星術的構造では、期待と不安というのは魚座⇔牡羊座の担当である。
また、新内閣が発足した直後、海王星が牡羊座から魚座へと戻ったというのは、高市内閣の象徴として考えることができるかもしれない。
これはどういう意味か。
トランジット天体が一つ前のサインに戻るということは、前のサインのやり残したこと――未完の、未処理の、手つかずの事柄――を片づけに戻るという意味合いがある。特に12サインの始まりのサイン牡羊座へと進んだ天体が、12サインの終わりのサイン魚座へわざわざ戻るということは、「その問題に手をつけない限り、にっちもさっちもいかなくなるぞ」という知らせだから、これは大まじめに着手していく必要があるだろう。
個人的に思うところはあるが、女性初の首相としてこのような大仕事に選ばれたということは、高市氏は、よっぽどの能力者なのかもしれない。味方からの期待も支持も厚いのかもしれない。公言したとおり、がむしゃらに働いてくれるのかもしれない。
では、高市氏が自民党総裁となり、日本の首相となった理由はなんだろう。彼女は一体何を取りに戻ろうとしているのだろう。最初にそこを考えてみたい。
まずは、自民党支持層の変化になるだろうか。ここ数年の首相の面々――菅、岸田、石破内閣から大きく変わったのは、高齢者から若者に支持が移ったということ。
高市首相は、これまでSNSやYouTubeを積極的に利用しており、彼女の「高市早苗チャンネル」の登録者数は約68万人に及んでいる。自民党総裁選の他の候補者に比べても、ネット支持層の獲得数を圧倒していたわけで、そうなると今後、ネット人気の高い国民民主党や参政党を脅かすこともできるということだ。
つまり、自民党において長いこと放置されていたイシュー、若年層やネット支持層にリーチできていなかった点に、切り込む力を持っているということ。結果、少し遅すぎるくらいだが日本は、ネット中心の政治へと一気に加速することになると予測できる。
ということは、ドナルド・トランプ的なポピュリズム政治へとより傾くことになるかもしれないし、既にそういう傾向は出てきているが、高齢者や情報弱者を取りこぼす可能性もあるということでもある。
または、彼女が繰り返し言っている「強い日本」。これも自民党にとって手つかずの、しかも大掛かりなイシューであり、その問題に切り込むべく高市内閣が発足したと言っても過言ではない。
土星、海王星が魚座を運行している間に、つまり2025年の1月末から2月中旬くらいまでに「強い日本」のための方針を定めることができれば、高市政権も、日本の未来も明るい道すじを想定できるかもしれない。
多くの高市ファンが最も期待している積極財政は、まさに高市首相が声を高らかに掲げているテーマになっている。しかし、彼女の「金利をあげるのはアホだ」という発言にも表れている通り、高市内閣の下では日銀が金利を上げられず、インフレを調整できず、円安株高がますます進み、物価高を止めることはできないのではないか、そのような懸念はなかなか拭い去れない。
「安倍内閣3.0」「ニュー・アベノミクス」と言われたりもしているが、安倍政権のような強いものがさらに強くなる日本ではなく、持たざる者との格差がさらに広がらないような新しい社会を目指してもらわないと新内閣とは言えないのではないか。
外国人対策も自民党の取りこぼしてきたイシューと言えるだろう。世論に、または参政党のムーブメントに押されてのことだろうが、内閣に「外国人との秩序ある共生社会推進担当」が新たに設置されたことは、何かしらの前進と言えるのかもしれない。今の世論的には、これまで手つかずに放置されてきた問題として期待されているところだろう。
このように魚座の太陽を持っている高市首相が、今、このタイミングで日本のトップに立ったということの意味は大きい。12年10カ月以上続いている自民党政権による「やり残し」を、さらに失われた30年の中でじわじわと進んできた「弱い日本」にメスを入れる存在になってくれる可能性が出てきたということになる。
ここまでがわたしが春分から追いかけてきた牡羊座⇔魚座のドラマであり、ある一つの決着の可能性について考えてみた。
高市氏の掲げている政策を個人に落とし込んでみると、
① ネットを駆使して、自分の存在を確立する
② 自分の「弱さ」に目を向け、少しでも「強い」と感じられる力を得られるよう努める
③ 有限の資源を護り、適切な外部との関係性を強化する
こんなところだろうか。
いやーこう書くと、今後、世代間格差が広がりそうな不安しかない。わたし自身、「牡羊座土星、海王星時代は、個々人の生き残る力を育てることが必須だ」と言ってはいるが、そうなれない人を取りこぼさない社会も同時に考えていかなければならない。そのように強く感じた。
水のグランドトライン、結束と閉鎖性
では、ここから蠍座期のイングレスチャートを読んでみたい。みなさんは、チャートのどこに視線が向くだろうか。

先月の秋分図でお伝えした「強すぎる火星」にまず目が向くかもしれない。蠍座の火星がホロスコープの天頂に君臨している。高市首相のネイタルチャートの月、海王星が蠍座にあることを考えると、まさに彼女の欲望の強さが、ビジョンの強さが、彼女自身を日本のトップへと導いたと読むことができるだろう。
強い火星を頂点に木星、土星がサポートするように大きな三角形が形成されている。なかなか立派な水エレメントによるグランドトラインである。高市首相を脇でがっちり支える陣営がいることを、また熱狂的な高市ファンの期待に支えられていることを想起させる組み合わせである。
しかし、心理占星術的ではグランドトラインにポジティブな意味だけを与えることはない。水エレメントで形成されているということは、共感し合える仲間との強い結束感がある一方で、風通しの悪さや排他的精神なども見て取れる。実際、新内閣に裏金議員を7人も採用しているということも、こういった象徴に当てはめられるかもしれない。
まあ、しかし陣営をつくるというのはこういうものか。この一カ月は、まずは仲間内でがっちり組む。これも強い内閣のつくり方なのかもしれない。この辺は今後の動向を要チェックである。
このイングレスチャートでもう一つ気になるのが、ASC冥王星である。
ASC冥王星、安倍政権の継承か、書き換えか
ここで秋分図を見てほしい。注目すべきは、火星・冥王星の90度の関係だ。

秋分から冬至までの三ヶ月は、他者からの何かしらの刺激により自分の中の未解決な問題に気づき、決着をつけ、こころを新たな世界へと冒険させる時期という意味がある。他者の言動によって怒りや悲しみに揺れ、立ち止まり、その意味を考え、受け取め、何かしらの意味づけをする。もちろん逆もしかりだ。他者の言動が喜びや希望に揺れ、未来へのきっかけとつながっていく。
そして、秋分の時期に最も強いインパクトをもたらすことになったであろう天体の組み合わせである火星・冥王星の90度が3ハウスー5ハウスで形成されている。
高市首相が誕生するまでの一連のすったもんだは、このアスペクトによるものだと分析していいだろう。特に、公明党離脱の衝撃は、自民党だけではなく、すべての政党に大きなインパクトを与えたものと考えられる。そして、その後の動きによって、力を得たものと失ったものとの明暗がはっきり分かれたのは言うまでもない。
国民民主党は支持率を落とし、維新の会は自民党との“連立”を結び、存在感をあらわにした。
この差は一体何だったのだろう。わたしは、やはり維新の会の目的の強さと、国民民主党の覚悟のなさの差が結果として現れたように思う。火星―冥王星とは、つまりそういうエネルギーだからだ。
支持者の声、アンチの声、あっちの顔色、こっちの顔色、あっちにおもねり、こっちにおもねり、蓮舫が嫌いだ、自民は約束を守らないとか、正論のようでいて、ただの意気地なしにしか見えない態度に出るから、誰にとっても中途半端な姿勢にしか映らず、このような結果に終わってしまった。
政治なんて、結局、結果がすべてなのだ。つべこべ言わず、泥船だろうが何だろうが乗るときは乗るしかない。
そう。つまり、そういうことだ。行くときは行く。覚悟を決めて出発する。好き嫌いとか気分ではなく、太陽の的を意識すること。目的が同じなら敵とでも手を組む。そういった懐の深さと欲望の強さがないと、とても火星・冥王星の90度なんて乗りこなせない。
が、しかしだ、蠍座のイングレスチャートでは、この冥王星がASCに乗ってきている。秋分の時期にすったもんだやった力争いが、この時期、もっとも乗り越えるべきテーマとして現れたわけだ。つまり、この時期をうまく生き抜くためには、冥王星をうまくコントロールすることが必須であるとなる。なるほど。これはなかなかやっかいな“連立”政権であることを予感させる。水瓶座の冥王星が大人しく言うことを聞くわけがない。価値観の対立もあるだろうし、声も大きそうだ。
いや。“連立”だけがやっかいなわけではない。国民民主の玉木氏や立憲民主がリベンジとして、声をあげてくることも考えられる。公明党だって侮れない。高市首相の最初の難問は、この水瓶座の冥王星であると言っていいだろう。
が、もう一つ、また違った分析、象徴の提供をしてみたい。
ASCに冥王星がコンタクトしている今回の蠍座期のイングレスチャートを見たとき、 高市首相が政治信条の源流と公言してはばからない、故・安倍晋三氏の存在を思い出さずにいられなかった。安倍氏のネイタルチャートも同様にASCのそばに冥王星を持っており、彼の蠍座・金星と高市首相の蠍座・海王星は寄り添うように並んでいる。
高市内閣が発足した直後のイングレスチャートしかり、二人のネイタルチャートのシナストリーしかり、これぞまさに安倍元首相の遺志の継承と言えるような組み合わせではないか?


2014年、第三次安倍内閣で総務大臣に抜擢。「電波行政」を担当し、放送政策・ネット規制などで安倍路線を強く推進した。安倍氏は高市氏を「信念を持つ政治家」として信頼し、党の要職に何度も起用している。
しかし、トランジット天体は同じことを繰り返させることを良しとはしない。なんらかのかたちで書き換える必要を求めてくる。海王星が魚座へと戻ったタイミングで高市氏が首相になったという事実を踏まえると、最後の魚座海王星とは、アベノミクスの書き換え、ニュー・アベノミクスとか第三次安倍内閣とか言わせている場合ではなく、アベノミクスの弊害や問題点を総括し、消化し、乗り越えること、そこにこそ彼女が首相になった意味があるのではないか。
いや、もっと言うと、安倍晋三という大きすぎる存在=権力=冥王星を克服することこそが、または安倍政権の安定していた/ようにみえた時代を乗り越えることこそが、高市氏に、またわたしたち国民に求められていることだと言ってもいいかもしれない。
これをわたしたち個人のテーマとして考えた場合、美しい物語を、美しい思い出を美しいまま保持するのではなく、ちゃんと総括する必要があるのではないか。不都合な真実にしっかりと目を向け、乗り越えなければならないのではないか。「わたしたち頑張ったよね」とか「あのときはあれでよかったんだよね」とかフワッと美しい物語のままにしておくのではなく、たとえ痛みを感じても、自分に非があるならその非を認めなければならないこともあるだろう。相手の理想を打ち崩す必要もあるだろう。
真実は痛みを伴うが、受け入れたときの、そして乗り越えたときのすがすがしさはひとしおだ。もし、ここで総括に失敗したら、恐らくわれわれも、そして日本も大切な成長の機会を失ってしまうことになる。
新内閣がスタートするということもあり、また様々なチャートがかなり示唆的だったということもあり、久しぶりに長々と分析してみた。
足りない部分は、10/26(日)の生き方働き方研究会で高市早苗―吉村洋文、高市早苗―安倍晋三のシナストリーを考え、その分析の結果を10/28(火)の月イチ勉強会で発表したいと思っているので、ぜひ多くの方に参加してほしい。
あれこれ書いたが、やはり政治や社会は、わたしたち個々人の生活やこころと一体であることがわかる。政局はあまり楽しいものではないが、自分のこころの縮図として、人生の縮図として学ぶべきことは学び、変えるべきことは変えていきたいと、今回の高市首相誕生までの一連の流れを通してつくづく思ったことである。
研究会や勉強会等で、またこの辺はじっくり話し合えたらうれしい。
もっと詳しく! 10/28(火)「月イチ勉強会」

心理占星術 月イチ勉強会は、毎月第4火曜日開催!
さまざまな話題を心理占星術的視点で取り上げながら、象徴の考え方やリーディング力の向上と心理カウンセリングへの理解を深めています。
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2025年10月の勉強会は、本稿をさらに深堀り!
記事にあったとおり、新たにスタートした高市政権の行方、彼女は今、どのような状況にあるのか、チャートを介して考えるほか、ここでは触れていない、「11/12からの蟹座・木星の逆行」についても掘り下げます。
後半は、カウンセリングの現場を考える「シングルセッションとは何か」
nico の心理占星術で提唱している「シングルセッション」。鑑定をする立場にとって、とても大事な考え方ですが、それを実現するために必要なこととは何か。今回は、「現場のための」心理占星術について考えてみたいと思います。
どなたでもご参加できます!
心理占星術の「時期を見通すこと」そして「人間の心理をとらえること」の二つのテーマを体験できる充実の勉強会です。
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