冥王星の力を見極める難しさ、関係性の荒海の中でどうサバイブするか/できるのか ~2025 蠍座期のおさらい編

心理占星術家nicoによる「星宙百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。

おさらい編では、先の未来を読み解いた星宙百景の記事をセルフレビュー。

先月お伝えしたチャート読みの内容と、実際に起こった出来事を nico の視点で振り返るショート・レポートです。

  高市政権発足から一ヶ月を迎えた今、賛否こもごもある世相を眺めつつ改めて思うのは、人は自分の正義にフィットする物語を選択し、支持し、語るものなのだということ。また、改めて思うのは、占星術はたとえ疑似科学であったとしても、やはり人間の営みに意味を与えるものなのだということだ。
 この一ヶ月、まさに蠍座期のイングレスチャートどおりの政権運営となったように思う。それをどう意味づけするかは、やはり読み手(ここで言うとわたし)の正義によるのだろう。
 
 まずわたしが蠍座期をどのように予測したのかを読んでおきたい。
 『失敗の科学』でマシュー・サイドも言っているように、結果に対して謙虚に向き合っていかない限り、つまり何が読めて、何が読めなかったのか、できる限り誠実な姿勢で検証してみない限り、技術の進歩は臨めない。
 このテキストは、わたしの技術力の改善のための作業であるが、よかったら最後までお付き合いいただきたい。

 皆さんには、先に先月の『星宙百景・2025蠍座期』の全文を読んでいただけたらと思うが、今からその中の一部を抜粋し、検証していく。

 こちらが蠍座期のイングレスチャートだ。

2025年太陽蠍座期のイングレスチャート

 ここから蠍座期のイングレスチャートを読んでみたい。
 みなさんは、以下のチャートのどこに視線が向くだろうか。秋分図読みの際にお話しした「強すぎる火星」にまず目が向くかもしれない。蠍座の火星がホロスコープの天頂に君臨している。高市首相のネイタルチャートの月、海王星が蠍座にあることを考えると、まさに彼女の欲望の強さが、ビジョンの強さが、彼女自身を日本のトップへと導いたと読むことができるだろう。

 強い火星を頂点に木星、土星がサポートするように大きな三角形が形成されている。なかなか立派な水エレメントによるグランドトラインである。高市首相を脇でがっちり支える陣営がいることを、また熱狂的な高市ファンの期待に支えられていることを想起させる組み合わせである。

 しかし、心理占星術的にはグランドトラインはポジティブな意味だけを与えることはない。水エレメントで形成されているということは、共感し合える仲間との強い結束感がある一方で、風通しの悪さや排他的精神なども見て取れる。実際、新内閣に裏金議員を7人も採用しているということも、こういった象徴に当てはめられるかもしれない。

 まあ、しかし陣営をつくるというのはこういうものか。この一ヶ月は、まずは仲間内でがっちり組む。これも強い内閣のつくり方なのかもしれない。この辺は今後の動向を要チェックである。

大きすぎる存在=権力=冥王星の克服、わたしたちは覚悟を決め出発できるか ~星宙百景 2025 蠍座

 まず、このチャートでわたしは水エレメントのグランドトラインに注目し、高市政権を支える強固な陣営&高市支持の大きな期待というものを挙げた。わたしがここで読み損ねたのは、依然、高止まりしている支持率だろうか。

 高市ファンのみならず、多くの国民が支持を続けている。チャートのもっとも高い場所に位置しているカルミネート天体=蠍座・火星は、オウンルーラーで強い力を持ち、MCの支配星になっている。高市首相の月が蠍座にあることを考えると、堂々と君臨しているようにも見える。

 滞っていた政治を前進させるべく、寝る間も惜しみ、エネルギッシュに「働いて、働いて、働いて、働いて」いる様子はここからうかがえたかもしれないし、こういった高市首相の姿こそが支持されるだろうということは予測可能だったかもしれない。

 しかし、水エレメントの蠍座火星の力強さは、実行力や集中力はあるものの、風エレメントの補完がないと客観性を欠く傾向もある。高市首相の魅力は、「自分の言葉で伝える」ことだという。長所は短所であり、短所は長所でもあるが、まあ政治家なので、外部のチェック機能は有効的に活用すべきか。そう考えると、上記のグランドトラインの読みも当たらずとも遠からずかもしれない。

 就任後、明らかになった高市内閣は「お気に入り人事」の筆頭と言われている木原内閣官房長官をはじめ、主に高市首相と限りなく似たようなイデオロギー――積極財政、憲法改正、タカ派的な思想等――を持つ人々によって構成されている。

 また、高市首相自身が議長を務めている経済政策を議論する二つの会議「経済財政諮問会議」と「日本成長戦略会議」が鳴り物入りでスタートしたが、メンバーは高市首相と考えが近い、いわゆる「リフレ派」(リフレーション支持、積極財政・金融緩和賛成派)の民間有識者がかなりを占めていて、議論が偏るのではという懸念も指摘されている。グランドトラインの解釈は、これに該当すると考えてもいいかもしれない。 

 では、続きを見てみよう。

 が、しかしだ、蠍座のイングレスチャートでは、この冥王星がASCに乗ってきたわけだ。秋分の時期にすったもんだやった力争いが、この時期、もっとも乗り越えるべきテーマとして現れたわけだ。つまり、この時期をうまく生き抜くためには、冥王星をうまくコントロールすることが必須である、ということになる。なるほど。これはなかなかやっかいな“連立”政権であることを予感させる。水瓶座の冥王星が大人しく言うことを聞くわけがない。価値観の対立もあるだろうし、声も大きそうだ。

 いや。“連立”だけがやっかいなわけではない。国民民主の玉木氏や立憲民主がリベンジとして、声をあげてくることも考えられる。公明党だって侮れない。高市首相の最初の難問は、この水瓶座の冥王星であると言っていいだろう。 

 「この時期をうまく生き抜くためには、冥王星をうまくコントロールすることが必須であるということになる。なるほど。これはなかなかやっかいな“連立”政権であることを予感させる」

大きすぎる存在=権力=冥王星の克服、わたしたちは覚悟を決め出発できるか ~星宙百景 2025 蠍座

 ここは、もう少しASC冥王星を丁寧に読むべきだった。わたしはやっかいな相手を見誤った。厄介な相手は、国内だけではなく国外にも存在したのだ。確かに維新との“連立”政権がそれほどスムーズに進んでいるとも思えないが、それ以上に重大な問題が勃発した。

 高市首相は、就任直後の10月28日にトランプ大統領と初会談を行い、米軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」上でトランプ大統領と共に大いにハッスルし、その数日後にAPEC首脳会談で習近平国家主席と笑顔で握手を交わし、なかなかの外交手腕を見せたと思った一週間後、11月7日の国会での台湾有事をめぐる「存立危機事態」になりうるという答弁があり、いまだ終息が見えない対中問題勃発に発展している。

 細かな予測はムリだとして、この流れをもう少し丁寧に言語化できたとしたら、どのように表現することができただろうか。この冥王星と太陽の90度を絡めて、もう少し的確に読むことができたのではないか。いや、もっと根源的として読むこともできたかもしれない。

 冥王星的な体験は、基本、対峙した相手との関係性の中で生まれる。お互いの出方があり、腹の探り合いがあり、それぞれに守りたい価値観があり、相手への要求があり、相手にも何かしらの要求があり、その中で双方によってよりよい落としどころを見つける。しかし、いきなりwin-winに着地するのは不可能だ。同盟国のアメリカとの関税交渉も6回行われたが、最終的な合意には至っていない。ましてや友好関係にない人/国の場合は、こちらの国益を守りつつ、相手の国益を犯さないよう細心の注意が必要になる。イスラエルとパレスチナのように、少しのミスでこれまでの努力がご破算ということもある。
 
 今回の高市首相の発言がそれにあたるか。
 高市首相の発言は間違っていないという意見も多いが、正しいか間違っているかというのは、冥王星的な価値観からしたらどうでもいいことだ。正しいか間違っているかではなく、相手からしたら、まずは自分/自国の尊厳が守られているかどうか、自分/自国の国益が揺らがないかどうか、それだけの話。冥王星は、関係性の荒海の中でどうサバイブするか、それを目的とした天体なのだ。

 その場合、冥王星的な体験でもっとも難しいのは、自分と相手の力を見極めることだ。お互いが友好関係にある場合、お互いが限りなく依存関係にある場合、どちらかが圧倒的に優位な立場にある場合、それぞれに力の感じ方、力の使い方は大いに違う。問題が起こったとき、どちらが大きな損失を受けるのかによって、関係性の在り方も変わってくる。

 今回の日中対立は、経済的なリスクが大きく取りざたされている。11月15日には中国政府から日本への渡航自粛、また留学の注意喚起が発表され、そして19日には日本産の水産物輸入停止が日本政府に伝達された。さらなる経済的リスクの深刻さを口にする外務省幹部もいるという。

 今回の対立による経済的損失は2.2兆円と言われているのだから、高市政権は、高い勉強代を払ったということになるのだろう。
 
 よく講座でも、「トランジット冥王星が来ているときは人と喧嘩しないほうがいい」「裁判を起こさないほうがいい」といった話をする。冥王星は、自分の力を過信し、相手の力を見誤ると必ず失敗する。喧嘩を仕掛けるというのは、勝てる自信があるということだろうが、トランジット冥王星が来ているときは、存続をかけた戦いを挑みがちであり、戦い方を間違えると大きな痛手を負う。その関係性に対し、安易な理解で挑むと足元をすくわれる。 かといって、アメリカの、または中国の言いなりになるわけにもいかない。だから、冥王星は難しい。
 
 中国にパイプのある公明党も今はいない。高市首相が発言を撤回することがないのであれば、この際、中国外交に強い人事をつくることはできるかもしれない。

 次の射手座期も似たようなテーマが繰り返されていることを考えると、問題を長引かせないよう、今、ここで外交問題に着手しておくのは大事なことのように思う。
  
 もう一つ、蠍座期のチャートで読むべきテーマがあったことを述べておきたい。
 経済問題だ。この1か月、トリプル安(株式・債券・外国為替市場の三つの市場すべてにおいて同時に値下がりする状況)が続いている。高市政権が発足してからの円安の進み方は尋常ではないが、それがチャートから予測できたかどうか。

 ASC冥王星、それ自体を損失と読むことはできるのだろうか。これについては、引き続き検証が必要だが、基本的には株式=5ハウス、債券=5ハウス、外国為替市場=11ハウスを読んでもよかったかもしれない。そうなると、5ハウスの支配星は水星、11ハウスの支配星は木星となる。すでにご存じの通り、水星も木星も蠍座期に逆行を開始したことを考えると、後ろ向きな動きがあると予測できたかもしれない。

 この辺は、次回の射手座期で予測してみたい。

 ということで、今から早速、「星宙百景・2025年射手座期の風景」について考えてみたい。上記のことを踏まえると、なかなか面白そうなチャートになっているではないか?

 経済、外交面を含めて、来週の月イチ勉強会で、もう少し冥王星の解釈について深めてみたい。

 

11/25(火)月イチ勉強会、時と人間心理を理解する

占星術の醍醐味である「時」を理解し、心理占星術ならではの「人間心理」を読む!
今月も二部構成で開催します。

前半は、生き残るための時期読みを深める!
太陽・射手座のシーズン
ASC冥王星、蟹座木星の逆行の意味とは

トランジットで大事になるのは、「どこから来て、どこへ向かっているのか」を見極めること。蠍座期の見直しから射手座の時期を考えます。

前回、インパクトがあったのはASC冥王星。高市首相の外交デビューから対中問題の勃発など、いま様々な冥王星的なテーマが現象化していますね。これはどういう意味を持つのでしょうか。

さらに、射手座に火星が入ったタイミングで蟹座木星が逆行を開始。太陽、火星が射手座を運行するタイミングでの木星の逆行とは、学びを進めている皆さんならその関連性に「おやおや?」と思うはず。

パズルのような象徴のつながりを解いていくような面白さをご一緒しましょう!

後半は、みんな知りたい! チャートと深く向き合うコツ

「X(旧Twitter)に投稿されたつぶやきをホラリーチャートで読み解く!」
先月は、そんなユニークな視点で、シングルセッション(一回完結のセッション)を疑似体験しました。

今月も1回の鑑定で出来ること/出来ないことを中心に、チャートと深く向き合うコツを考えます。「悩みを言語化するタイミングとチャートの関係」や「家族の力学をクライアントにどう伝えるか」を取り上げてみます。

今、既に鑑定をされている方、これから目指したい方は、勉強会で学びの枠を広げてみてください。

どなたでもご参加できます!