小満。太陽黄経が60度、万物が次第に成長し一定の大きさに達するころ。
これが二十四節気における双子座の始まりの意味である。
春分=牡羊座から始まった流れは、3番目のサイン双子座で一つの成長の達成を迎える。
万物は夢中になって、その枝葉を伸ばしてきただろう。手探りで、または奔放に、あれこれを試してみたかもしれない。夢や計画に思いをはせ、思いつくまま行動することもあっただろう。
しかし、それもそろそろ終わりを迎える。双子座期の間に芒種という、穀物や稲や麦など穂の出る穀物の種をまく季節へと徐々に移行していく。未来の糧のため、その準備をし始める季節となるわけだ。
占星術業界では、5月16日に大きな話題をさらった天体がいる。牡牛座に移動した天王星だ。改革、刷新、変化の天体である天王星が7年ぶりにサインを移動したことにより、皆がそろって「新しい時代」と「変化」を口にし始めた。
気をつけろ! 思いもよらない時代になっていくぞ!ということだ。
けれど占星術をやっている人なら、本当はみんなわかっているはずだ。
実際の大きな変化は、2010年に天王星が牡羊座に移動したカーディナルクライマックスのときに既に起こっている。
この7年の間の様々な動乱や変化を思い浮かべてみてほしい。
アラブの春の革命が起こり、イスラム国が世界中に恐怖を与え、中国の台頭により世界経済の地図が書き換わり、イギリスがEUを脱退し、日本でも政権が変わったり、野党の勢力図に変化があったりし、天皇は生前退位を発表し、改憲やら働き改革やらの動きが起こった。
魚座から牡羊座に天体が移動したのだ。すべての流れが一度リセットされ、新しい時代を生きるためのサバイバルの戦いは、もうすでに始まっていたのだ。
ただやみくもに、アメリカに国の生き残りの明暗をゆだねる時代は終わった。近隣国とも積極的に議論の場を持ち、日本という存在を高めていく流れは、2010年、尖閣諸島問題の議論が活発になったころから起こっているのだ。
また、それと同時に、TPPへの参加の議論も2010年から始まっていた。国際社会での生き残りをかけた議論は、つまりこのころから活発になっていたということだ。
それがなぜ山羊座に土星が、牡牛座に天王星が移動してから、これだけ多くの人たちが「変化」を口にし始めているのだろう。
それは、地エレメントが安全、保全の意識を持った陰サインであるからだと考えられる。「生き残る」という意識に対し、または「変化」の兆しに対し、身体の感覚がそれらを実感せざるを得なくなったというわけだ。
皆が一様に、自分たちの在り方を見直し、生活や人生の基盤を整え、自分たちの無理のないサイズや価値観で生き残ろうとし始めたのだ。
では、そんな動きの最中を前にした双子座太陽期の役割とは何だろう。
2010年から始まった大きな変化の流れが、いよいよ実感としてやってきたこの時期に、双子座太陽期では何を意識しておけばいいのだろうか。
それは、双子座の部位である「手を持つ」ことだ。
神智学者のシュタイナーは、人間の四肢(手足)についてこんなことを言っている。
人間の四肢・代謝にかかわる部分では、人間本性の四つの「節」が相互に密に結びついている。四肢・代謝にかかわる部分は、萌芽のようなあり方をしているといえる。つねに成長への意志をもち、つねに「頭」になろうと努力している。
「節」にかかわる部位としての腕を双子座が、そして脚を射手座が担当しているわけだけだが、これらのサインは、もちろん外界を生き抜くための知性(双子座)と精神(射手座)を担当している。
腕や手を使って、ものを作り、字を書き、スマホを操作する。
人間は、この地上で自分の「意志」を表すために四肢=手足を使うのだ。
または、スイスの思想家ドニ・ド・ルージュモンは著書「手で考える」の中でこんな言葉を残している。
精神が真なるものとなるのは、
その現前を表明するときのみ。
そして「表明する(manifester)」という語には、
「手(main)」が含まれている。
この季節は、自分にとっての「手」となるもの、未来の糧となるものを育てるべく、種まきに専念してほしい。
手は饒舌に「私」を表明するはずなのだ。
それは国益を考えてもそうだ。
これからの経済や安全保障の問題、TPP参加を憂うよりも先に、今は世界の舞台で戦える「手」を育てていくことが先決になるだろう。
企業も個人も、不安に駆られる前に、自分たちを表明する「手」を持つことだ。
二足歩行で手に入れた手=脳は、来るAI時代を生き抜く重要な武器になることは間違いない。
なんでもいい。どんな知性でも技術でもいい。
双子座の季節は、これから続く天王星牡牛座期を生きる上での「意志」と、そして「手」を育て、自己存在を「表明」していき、自己存在に少しでも価値をもたらす準備をしておくことだ。
まだまだ未完でもいい。未完なくらいがちょうどいい。
これから育っていく姿を想像しながら、この先の7年を生き抜いていく支度をしておくのだ。