nicoの星宙予報2018 蠍座

 毎年、毎年、同じ話をしている気がするのだけれど、天秤座から蠍座にかけての時期は、いつも皆、何かしら自分の弱点と向き合う機会が来る。
 占星術的に考えると、2つの象徴がそれに由来している。まず天秤座という季節は、太陽のエッセンシャルディグニティがフォール(-4点)であるということだ。文字通り、太陽のエネルギーが落ち込み、陽は短く、気温は下がる。活動力、生命力も減退しやすい季節であり、よって体調を崩したり、意気消沈しやすくなる。
 また、天秤座の15度から蠍座の15度はバイアコンバスタ(焼失の道)と呼ばれる期間となるため、自己の力を存分に発揮することが難しい時期であるとも考えられている。
 もちろん、これは悪い意味だけで使われるわけではない。自我の力が落ち込むということは、「一人では生きられない」という意識が強まるわけであるし、また寒い季節を迎える前の「冬の予感」というのは、人との関係性を密にし「肌を寄せ合い」「力を合わせて生き抜く」という意識を高めることになる。
 つまり、この時期は、一年の間で最も「共存」「協力関係」というテーマに向き合うことがふさわしい時期であると考えられるわけだ。
 
 しかし同時に、むしろだからこそ、「個」としての存在の力が問われる時期でもある。
 人と対峙するということは、どんな関係性であっても、力のぶつかり合いである。
 親子であれ、友人、同僚、恋人関係であれ、または単に電車で乗り合わせた相手であれ、そこには常に力関係が働く。
 力関係といっても、それは正当な「力量」とは違う。たとえば、100Mをタイムで争うとか、TOEICの点数が何点かという話ではない。もっと本能的な、生物学的な争いが繰り広げられる。
 
 その時、人は無意識のうちに、関係性のパターンに陥ってしまうのだ。

 強気で相手を圧倒する人に言い負かされるとか。
 負けるのがいやで、いつも人を言い負かす姿勢を取ってしまうとか。
 泣き落としされると何も言えなくなるとか。
 逆に、分が悪くなると、昔の不幸な話を持ち出すとか。
 途中で面倒になって話し合いを放棄するとか。
 信じられないくらい理不尽な言いがかりに、取るものも取らずに逃げ出してしまうとか。

 人にはそれぞれに負けパターン、勝ちパターンというのがあって、対等でない関係性に持ち込まれて、自分の本意ではない選択や決断をしてしまうこともあれば、逆に、相手を打ちのめそうと必死になって、相手との関係性を壊してまでも、勝ちにこだわってしまうこともあったりする。
 
 すべては、自分を守るための手段であるわけだが、対等な関係性を育てられずにいると、結局、ここから先の発展、成長(つまり、射手座以降の世界)の恩恵を受けること、勝ち取ることができないままとなってしまう。
 
 毎年、毎年、この時期になると同じような停滞を体験している人が多いのに驚く。あと一歩、ここで諦めず、あと一歩、関係性の価値を信じ、その維持に努めれば、もっと世界が発展するだろうにという物語をたくさん目撃する。
 
 「個」の存在の力を信じ、人を恐れることなしに胸を張って堂々としていられれば、まず世界は安定したものに感じられるだろうし、そして、人との関係がいい状態で育まれることによって、世界がより生きやすく、豊かに感じられることになる。
 だからこそ、私たちは牡羊座から始まる個人の成長のドラマを毎年繰り返し、生きることになるのだ。

 射手座以降の高みに進むことができるかどうかは、蠍座までの成長にかかっている。牡羊座からの流れの中で、どこにつまずきがあったか。今こそ振り返ってみてほしい。
 例えば、春分から始まった季節の移り行きの中で、体調を崩した時期はいつだっただろか。物事が停滞して進みにくくなったのはいつだったのだろうか。心が沈んだり、揺れたりしたのはいつだっただろうか。季節とともに振り返ってみてほしい。
 その季節の太陽サインの特徴をもう一度やり直しのポイントとして育て直してみよう。

 この振り返りは、別の理由において、とても重要な意味を持っている。
 金星が天秤座、蠍座で逆行中であるということはもちろん、11/8に射手座に木星が回帰することを考えると、蠍座のテーマに決着をつけておくことは非常に重要だと思われる。
 自己の成長には欠かせない他者との関係づくりのテーマに早々に決着をつけ、自己の存在を信じ、さらなる前進をしていくこと。
 解決できない問題にとらわれることなく、やるべきことをぐずぐず後回しにすることなく、純粋な目的を持って世界を発展させていくこと。
 太陽蠍座期にそれが解決できれば、射手座木星回帰とともに人生の歩みを進めていくことができるだろう。

 国も同じである。日本も決定的な強みを持てないまま、外交も多くの課題を残したままになっている。
 日本の存在の力を見せつけるための技術力は、もはや中国に追いつき追い越されている。秋分図にも示されていたが、自然災害が続いたせいで、9月期はインバウンド消費も激減した。研究開発力の低下、イノベーションにつながる人材はアメリカへと流出している。
 これから、日本は何を強みに国際社会を戦おうというのか。

 それなら企業は? そして個人は?
 それが、今年一年の季節図のテーマでもあり、また木星のイングレスチャートのテーマにもなっている。

 まずは、個の存在の力を見直すこと。
 そして、「生き残る」というテーマも含め、自分自身のいる環境、人々との関係性を大切に育てていくこと。その際、感じる無力感、または力のコントロールのテーマに、少しずつ打ち勝っていくこと。
 また、自分を理解させるのではなく、相手を理解することに努めることに多くのエネルギーを注ぐこと。敵であれ、味方であれ、相手に対する(または自分に対する)無理解や愛の欠如が、すべての失敗につながっていくだろう。そのうえで、人と豊かな世界をつくり出していく。不安な時は力を借り、力が余れば、それを人に差し出していく。

 この内的な力のテーマにしっかり向き合うことができれば、射手座以降の過ごし方は大きく変わる。
 毎年、同じパターンにはまらないよう、今年は本腰を入れて、自己の存在の力を整えておくことだ。

 

 

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