nicoの星宙予報 2021 牡羊座~失敗する権利、新しい動きを試そう

 春の夜空に月がのぼる。霧や靄などに包まれてかすんで見えることがある。これを俳句の中では「朧月」「朧月夜」と呼び、春の季語として使われている。この月の「ぼんやりかすんでいるようす」は、日ごとに寒さと暖かさが変化し、気温差が大きくなることで温まった空気が急に冷やされる、空気中に含まれた水分が水蒸気となるといった、春ならではの天候や気象条件を理にしている。

 また、春霞という季語もある。冬に見えていた遠くの山が、春になるとなんとなくぼんやりし、霞んだように見えにくくなる。これも水蒸気の影響や、また地上付近にある砂やほこりなどが巻き上げられて空気中に漂いやすくなるという、春に発生する上昇気流の影響によるものだ。このように春は、ぼんやりとした見通しの悪い季節だということになる。

 

 心理占星家ノエル・ティルは、ホロスコープにおいてアセンダント(ASC)が魚座でハウスの途中から牡羊座が始まっている場合、そこに水蒸気が上がったようになり、自己像があいまいで虚ろになりやすいとリーディングしている。まるで朧月のように輪郭のはっきりしないパーソナリティになりやすく、自分自身の欲求を明確にすることもできず、他者からもわかりにくい人というレッテルを貼られることも多い。

 

 毎年、春分点を起点にして12サインの太陽サイクルをスタートさせる。牡羊座の太陽はイグザルテーションとその品位は高く、太陽の熱量も上がり、それに合わせて活動力、代謝の力も上がる。新しい季節の始まりであり、ここからより太陽が力を持っていくことから、牡羊座は行動とエネルギーの象徴のように言われることが多い。しかし、実際のところはどうなのだろうか。前述の春霞、朧月といった気象現象を踏まえると、牡羊座期はフレッシュなスタートというよりも、おぼろげで見通しが悪く、ぼんやりと不確かなスタートであると考えるほうが自然ではないだろうか。占星術的な円環のサイクルで考えれば、ノエル・ティルの言うASC魚座から牡羊座の進み行きのように、この時期は結局すべてが曖昧。しかし、これが牡羊座期なのかもしれない。

 これからどうなるかわからない、それならば魚座的な水エレメントの世界にとどまっていてもよいのではないか、安全な世界にとどまっていてもよいのではないか、いやいや、そうはいってもそろそろ何かしら策を講じていかないと、物事が停滞したまま何も進んでいかない、とはいえ動いたら動いたで文句が出るし、何もしないなら何もしないで文句が出る…

 

 東京の緊急事態宣言が解除されたと言っても、政府の方針はもとより、多方面の専門家も飲食店等の各店舗の意見も揺れている。時短営業を20時から21時にしたところで大した効果もないのではないかという声も上がっている。変異株ウイルスの感染者も増え、ワクチンの効果もまだはっきりと数字には表れておらず見通しは曖昧である。

 

 それでも、私たちは動き出していかなければならない。もう小手先だけでは通用しないのはわかっているのだから、発想を変え、これまでとは違うアイデアを出し、ときに大胆に、ときに強引にでも動きをつくっていき、ここまでの成果を試していかなければならない。

 そして、おそらくもっと円滑に魚座からの脱出を図るために、やり残した仕事は早急に片づけておく必要がある。確定申告、歯の治療、収支の見直し、押し入れの整理など、放っておいた心の奥にしまわれていることはさっさと片づける。心残りがあるから水蒸気が上がり、進むべき道が見えなくなるのだ。

 だから問題があるうちは、これが牡羊座期だろうが牡牛座期に移ろうが、ずっと靄がかかったまま、物事が前進していくことはない。政治の世界においても、いまだに安倍内閣時の問題を引きずったまま、前向きに進んでいかないということになる。

 東急ハンズは今月19日、池袋店の営業を2021年9月下旬で終了すると発表した。店舗が老朽化し、改装などの経費に見合う収益をあげることが難しいと判断したというが、コロナ前から売り上げは落ち込んでいたという。ようやく未解決の問題を処理し、未来に向け動き出す準備が整ったということだ。

 年前の牡羊座期は、それこそコロナ禍の真っただ中でむしろ問題に向き合う余裕もなかった企業/個人も多かったかもしれない。それならば、今こそ、人生の諸問題を片付け、本当に進むべき道に迎えるよう環境を整えておくといいだろう。

 

 さて、ここから春分図を見ていこう。まずは、2020年の春分図をふり返ってみたい。

 

 

 先日、16日に行った2021春分図読み勉強会の中でお伝えしたが、赤枠で囲った天体群——上から水星・魚座、金星・牡牛座、火星・山羊座、木星・山羊座、土星・山羊座、天王星・牡牛座、海王星・魚座、冥王星・山羊座はすべて陰サインになっているのがわかるだろう。そしてASCも蟹座になっているのがわかる。

 コロナ禍に見舞われた2020年は木星土星の山羊座を含め、地エレメントが強調されていたことを考えると、社会的におうち時間、心地よい部屋づくり、健康、美容、食事、財テクといった生活に根づいたテーマがブームになっていたのも大いに理解できる。

 しかし、木星、土星は2020年の冬至図を境に陽サインの風エレメントへと移行した。にもかかわらず、私たちはすっかり陰サインの内向き、保守的、保護的な要素を強めたまま、陽サイン的な動きをつくれないままでいる。

 

 そんな中、2021年の春分図はかなりムードが変わっている。陽サイン、それも風エレメントの要素が圧倒的に増え、私たちに動きをつくらせようと刺激している。

 風エレメントは、地エレメントの次のエレメントである。未解決の問題にいつまでもぐずぐず向き合っている場合でも、安全領域に身を寄せ続ける場合でもなく、新しい工夫を個人/企業/国にもたらすこと、それが2021年の春分図に求められている主軸のテーマとなるのだ。

 

 

 ASC天秤座、西半球の強調から外交のテーマがピックアップされていくのはわかる。米中、米韓の動きも出てきており、アメリカのアジア外交もこれからより活発に動きを見せることになるだろう。ハウスは安保や自衛のテーマを持っていることから、東シナ海上での日米防空訓練などもそれにあたるかもしれない。ここでハウス、ハウス(火エレメントの部屋)の強調として、どう存在の強みを強調していくかが必要になることも見て取れる。

 しかし、今回はハウスのルーラーの魚座の金星がイグザルテーションしていること、またそれがハウスに入室していることから、強気で攻めていくというよりも、外交もパートナーシップも懐柔の方向で進めてみるのもいい。頑なに対立姿勢を強めるのではなく、相手のやり方に乗ってみる、あえて踊ってみると、また新しい発想や意識が生まれてくることになるかもしれない。

 その上で、風の時代の訓練を進めていく。

 失敗する権利を手にし、大いにアイデアを出す、とにかく新しい動きを試す、環境や人から学ばせてもらい、たくさんのやり方を盗み、楽しむ。そして、それを未来づくりのエネルギーへと反映させ、今とは違う風景を広げていく。

 

 靄は晴れない。まだ、そこに危機はあり続け先の見通しはまったく立っていない。コロナの不安だけでなく、経済不安、災害の不安もついてまわる。

 それでも、いやだからこそ、その先にどんな未来を見たいのか、そのイメージをつくっていかないと、ただ未来を怖れ、不安を抱えながら生きていくことになるのではないだろうか。少しでも明るい未来を描いていくためにも外の世界に胸と意識を開き、人、変化、違いを楽しみ、アイデアを試すこと。そのように過ごしていけたら、やがてふと気づいたら、目の前に見たい世界が広がっているかもしれない。

 

 

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