心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…
文化の壁と距離をのりこえようとする強い意志の努力こそが、他の社会および文化を知ることを可能にし、同時にその知識に限界を設定する。
この時に、自分の置かれた人間的な状況の中で自分自身を理解し、その状況との関係で文化のテキストも理解する。
このことは距離に遠い異文化であるけれども、同じ人間世界に属するという強い自覚によって生まれる
今月の言葉
エドワード・W・サイード
1935年11月1日生まれ。蠍座に太陽と木星を持つ。キリスト教徒のパレスチナ人としてエルサレムに生まれる。主著の『オリエンタリズム』でオリエンタリズムの理論とともにポストコロニアル理論を確立した。
蠍座は、他者との関係性の最後の仕上げをするサイン。お互いの間にある境界線を越えるという戦いに挑むわけだが、しかし、蠍座の支配星である冥王星の配置からも理解できるように、他者との関係において、蠍座はいつだって、局外者=アウトサイダーという意識がある。
他者との間には、いつだって絶望的なほどの断絶感がある。どれだけ心を向けようと、どれだけ言葉を紡ごうと、そこには大きな壁が立ちふさがっているのだ。他者を超えるのは至難の業だ。
お互いが持つ価値観の違いに大いなる違和感を覚えることもあるだろう。無理解という痛みを体験することもあるかもしれない。または、ニーズのぶつかり合いにより、戦いが起こることもる。
絶望を感じたとき、人はその壁の高さに圧倒され、ネガティブなものであれ、ポジティブなものであれ、「私ではない誰か」に対して勝手なイメージを抱くようになる。
自分が抱えているぼんやりとした不安や、都合のいい期待を映し出すために、「他者」という存在がかっこうの鏡になるからだ。
異文化を理解するためには、相手との共存を可能にするには、サイードの言う「強い意志の努力」が必要となってくる。そうでなければ、お互いの世界は分断されたまま、西洋人の考える「オリエンタル」のように、ただやみくもに恐れるか、無意味に夢を投影するかになってしまうだろう。
そしてサイードはこうも言った。
「この世界に希望をもつためには批判し続けることこそが必要だ」。
パレスチナ人でもない、アラブ人でもない、ましてやアメリカ人でもないサイードのアイデンティティは、常に境界線上で揺れていた。だからこそ、彼は、異質なものを排除し、純正化をめざそうとする価値観に真っ向から疑問を持ち続けることになった。
他者との断絶を乗り越えること。それは、自分の違和感との戦いでもある。