2018 魚座の言葉 石垣りん

心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…

 

※画像はNHKよりお借りしています。

食わずには生きてゆけない。
メシを
野菜を
肉を
空気を
光を
水を
親を
きょうだいを
師を
金もこころも
食わずには生きてこれなかった。
ふくれた腹をかかえ
口をぬぐえば
台所に散らばっている
にんじんのしっぽ
鳥の骨
父のはらわた
四十の日暮れ
私の目にはじめてあふれる獣の涙。

『くらし 』 詩集「表札など」より

今月の言葉

石垣りん

1920年2月21日東京生まれ。太陽、水星、天王星を魚座に持つ。

詩人。4歳の時に生母と死別、三人の妹、二人の弟を持つが、死別や離別を経験する。小学校を卒業した14歳の時に日本興業銀行に事務員として就職。以来定年まで勤務し、戦前、戦中、戦後と家族の生活を支えた。

魚座とはいったいどのようなサインなのか。どのような能力を持ち、それゆえ、どのような悲しみや痛みを引き受けなければならないサインなのだろう。
どのサインもそうであるように、長所と短所は紙一重である。

魚座は、目に見えないものを理解する能力を持っていると言われている。これは、知性をつかさどる柔軟サインの能力でもあり、直観力をつかさどる水エレメントの能力でもあり、または支配星の海王星の特徴であるとも考えられるだろう。

しかし、「目に見えないものを理解する」という能力が「くらし」の中の「食う」という行為のなかで発動すると、石垣りんの描く詩のように、その行為そのものが、違和感となり、疑問となり、学びとなり、理解となり、時に苦しみとなり、獣性となる。

能力こそが、痛みを生むのだ。

心の領域が広がり、受け取る情報が広がれば広がるほど、日常のささやかな営みの中から多くの悲しみを拾ってしまう。

生きるからには、私たちはかならず何かしらの関係性を貪らなくてはならない。「食わずには生きていけない」からだ。

親や兄弟、ときには心を食い散らかし、その連鎖にふと涙があふれる。

それでも生きる。

生きるとはそういうものだという教訓とともに生きる。

魚座が目指すべき“生”とは、世界の負の面に触れてデリケートにおびえるのではなく、世界の不条理をも飲み込み、学びの機会に変えることで“生きる”ことを選択する。

それが柔軟サイン魚座の“知性”なのだ。