心理占星術家・nicoが選んだ今月の言葉は….
まず、愛想がよくなければだめだ。
最初の短編を撮れるようにするには、人の好意を買って、二十人ほどの人間から、タダ働きをしてもらう了解をとりつける必要があるからだ。
その次に、フィルム代を出してくれる人たちを説得しなくてはならない。愛想よく、前向きでなければだめだ。
そのうえセクシーであれば、言うことはない。
二本目の短編を撮るためには、粘り強さと臆面のなさと、大胆さが必要だ。
それから、スポーツ・ジムに通わないといけない。そのあいだに体が老け込んでしまうからだ。老獪でなければいけない。一度目に口説き落とした人を、今度は丸め込む必要があるからだ。
— インタビュー集「愛と欲望のマタドール(映画作家が自身を語る)」より
今月の言葉
ペドロ・アルモドバル
1951年9月24日スペイン生まれ。太陽、土星、海王星を天秤座に持つ。
映画監督・脚本家・映画プロデューサー。代表作に「女性賛歌三部作」として『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』がある。
上記は「映画作家になりたいと思っている人に、どういうアドバイスをしますか?」という質問に答えての言葉。
彼の映画は、人生の皮肉や逆説で満ちている。無意味なものしか意味がなく、混乱が秩序をもたらし、かつて男性だった女性の美しい父性愛が描かれ、女性になった男性の極上の女らしさがある。
登場人物もユニークだ。麻薬中毒でレズビアンの尼長、復讐に狂った女性、ポルノ女優、精神病患者、女性歌手に憧れるゲイの判事、ゲイの父親や、子供を宿したエイズ患者の尼僧。いずれの作品においても、彼らが批判されることはない。社会からこぼれ落ちた人々を断罪することなく、ありのままを描く。『トーク・トゥ・ハー』の狂気の看護師の中にすら愛を見出す。
どんな登場人物にも等しく平等に注がれる愛のある視線。彼の作品を観ていると、天秤座が愛と平和のサインと呼ばれる理由がよくわかる。
天秤座は7番目のサイン。“7”という数字は素数であることから、ここから新しい展開が始まること、流れが大きく変化することがわかる。
新しい展開、大きな変化とは、つまり「関係性」である。風エレメント、活動サインである天秤座の段階で、人との活発な交流、新しい意識の目覚め、新鮮な刺激の体験が始まるわけだ。
そこには、びっくりするようなオモシロイ人たちがいる。見たこともないような人種であふれている。天秤座は、そういった人の中に嬉々として飛び込んでいく。刺激を受けて、ぐんぐん成長していく。
しかし、一見、共通言語も持たず、何の接点もないように見える人たちの中に、ふと「私」を見つけることがある。鏡のように、相手の目の中に自分が写っているように思えることがある。心の痛み、家族の問題、夢や理想…
他者の中に自分を見つけ、自分の中に他者を育てる。他者の生き方やふるまいから、自分の個性を確立していく。そのように他者とともに成長を遂げながら、自分なりの「美的活動」「愛の表現」を行っていく。
天秤座は「人」を通して「私」を、「私」を通して「人」を理解し尽しているのだ。相手の目にどのように自分が写るのか、きっと手に取るようにわかるだろう。
あとはアルモドバルの語る手口で、自分の金星が魅力的に見える場を作り、自己を表現していけばいい。
きっと多くの人の金星に響く、愛と欲望のかたちが仕上がっていくはずだ。