12サインの言葉 2020天秤座 グレン・グールド

心理占星術家・nicoが選んだ今月の言葉は....




諸君がすでに学ばれたことやこれから学ばれることのあらゆる要素は、ネガティブの存在、ありはしないもの、ありはしないように見えるものと関わり合っているから存在可能なので在り、諸君はそこのことを意識しつづけなければならないのです。

どうしてか、十三、四歳のころのわたしの身に起こったあるできごとを思わずにいられません。ある日わたしはピアノの稽古をしていました。そのとき突然、ピアノの傍らで電気掃除機がなりはじめたのです。ところがその結果ときたら。自分の弾いている音がちっとも聞こえなくなりましたが、触覚を通して鍵盤との関係を感じ取っていました。しかしふしぎなことに、あらゆるものがふいに、掃除機が鳴り出す前よりよい響きになっていたのでした。そして、なかでも現実には聞こえてこない部分こそがいちばんよく響いていました。

自分の想像力の働く過程に深くこだわりつづける限り、それがほんとうであることがおわかりになると思います。外部を観察することで実態だと思えるものの代わりとしてとか、ポジティブな行為や知識を補うものとしての想像力ではいけません。想像力がもっとも諸君に役立つのはそういう場合ではないからです。諸君はシステムとドグマ、つまりポジティブな行為のために教育されてきました。想像力にできることは、これを前景とし、限りない可能性、つまりネガティブの広大な後景を背に、両者に挟まれた一種の無人地帯として役に立つことだけです。このネガティブの後景をこそ、諸君は不断に考察し、あらゆる創造的思考が生まれる源泉として、これに敬意をあらわすことをけっして忘れてはなりません。

「グレン・グールド著作集1」より

 

今月の言葉

グレン・グールド

1932年9月25日生まれ。

カナダのトロント生まれ。天秤座に太陽を持つ、ピアニストであり思想家。

幼少より楽才を示し、トロント音楽院(現ロイヤル音楽院)に学ぶ。ピアニストとして十代よりカナダで認められる。22歳で米国デビュー。翌年発売した《ゴルトベルク変奏曲》のアルバムで従来のバッハ解釈を刷新し、話題を呼ぶ。以後、独自の選曲と解釈で名声を高めていくが、64年のリサイタルを最後に舞台から退き、以後はレコードと放送番組のみで演奏活動。音楽論やメディア論をめぐる文筆も行ない、新しい音楽作品を意図した「対位法的ラジオ・ドキュメンタリー」の制作も手がける。198210日脳卒中で50歳にて急逝。

 

 世の中に出回っているほとんどの占星術のテキストには、「天秤座はバランス、調和のサイン」とある。人との関係づくりが得意で、周囲に上手に気を遣うことができ、美しく、洗練されたサインであると。7番目のサイン、風エレメント、活動サインの天秤座は、そういったことを本当に求めているのだろうか。

 それとも天秤座とは、グレン・グールドのように不協和音のようなものの中にこそ、ネガティブだと思われる体験の中にこそ、まったく新しい創造の源泉があると考える、そのようなユニークなサインなのではないだろうか。

 自分のいる環境や置かれている状況が偏ったものにならないよう、光と影の、善と悪の、正と邪のその狭間に立ち、その緊張感の中で創造的思考を行うということこそが、本来の天秤座のいうバランスなのかもしれない。

 だから、その天秤は常に揺れ動いている。刻々と変わる状況の中で、その場の空気、事の動き、関わる人によって変化する時の中で、まだここに存在していないものの気配を感じていく。

 グールドの言葉を借りれば、「ネガティブの存在、ありはしないもの、ありはしないように見えるもの」を学びながら、そこに甘んじることなく、世の中のものを理解しようと努めていく、それがあるべき天秤座の姿勢なのだろう。

 天秤座はときに偏屈であり、ときに才気にあふれており、軽やかでもあり、神経質にも見える。ある「もの」の反対側、見えない側、ネガティブな側に意識を向けようと努めるので、一向に意識は定まらない。

 絶えず揺れ動く思考の中で、「善いもの」だけではなく、「悪しきもの」の存在にも目を向けざるを得ない。グールドの体験でいえば、モーツアルトK三九四のフーガに電気掃除機の音を重ねるということだ。

 世界は、ただ「美」だけで満たされているわけではない。むしろ、ネガティブだと思える音、色、人、体験の中にこそ、また「ネガティブの広大な後景を背に、両者に挟まれた一種の無人地帯として役に立つ」ことで、グールドのいう「よい響き」が生まれることになるのだろう。

 天秤座と関係する「7」という数字は素数である。「6」の受動的な心地よさを手放し、好奇心とともに、これまでとまったく違う世界へと歩みを進める数字となっている。

 新しいものに触れたときの最初の体験は、どのようなものであっても強い違和感として私たちの前に立ちはだかることになる。新しい人、もの、体験が一種の不協和音として人生に飛び込んでくることもあるだろう。そのとき、自分の弾いていたピアノの音を消すことができるだろうか。そして、そこに新しい調和を見出すことができるだろうか。それこそが、天秤座15度から始まるバイアコンバスタの体験、「自分を消滅させる」という体験となるのだ。

 天秤座期は、あえて不協和音を感じてみてみたい。世の中の「いいね」や「私」の心地よさをあえて手放し、ポジティブとネガティブ、両者に挟まれた無人地帯に立ち、新しい創造を体験してみたい。

 「聞こえてない部分」にも耳を澄まし、あらゆる可能性に賭けてみたい。

 そんな天秤座期を送ってみたいと思う。

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