2020山羊座の言葉  千住博


絵を描くということは、自分にないものを付け加えていくことではなくて、自分にあるものを見つけて磨いていくこと。自分の良さを磨いていくことです。まず、自分にあるものは何か、ないものは何か、それをしっかり考えて探っていくということが大事です。

すべての答えはすでに自分の絵の中にある。自分の絵の中から、いわば不純物をどんどん取り除いてゆく。これは私の「形」ではない。これは私の「色の組み合わせ」ではない。そう思ったら思い切って捨ててゆくべきです。どんどんそぎ落としてゆくこと、勇気をもってやってみることです。

そしてたった一つでもかけがえのない「何か」が残ったら、それは皆さんの宝物です。一生手放さずに、同じように宝物を一つ、また一つと増やしていく。時間がかかります。絶対の正直さも要求されます。でも、自分にうそをつかずにやっていくしかないのです。

千住博著「千住博の美術の授業 絵を描く悦び」より

今月の言葉

千住 博(せんじゅ ひろし)

1958年1月7日生まれ。

東京生まれ。日本画家。山羊座に太陽を持つ。

ヴェネチア・ビエンナーレに回出品。1995年、絵画作品としては東洋人として史上初めて名誉賞受賞。2016年薬師寺の「平成の至宝」に選出、「平成28年度外務大臣表彰」を受賞。2017年「第回イサム・ノグチ賞」を受賞。作品はメトロポリタン美術館をはじめ世界主要美術館に収蔵、展示されるなど国際的な評価も高い。日本画の存在やその技法を世界に認知させ、真の国際性をもった芸術領域にすべく、絵画制作にとどまらず、講演や著述など幅広い活動を行っている。自然の側に身を置くという発想法を日本文化の根幹と捉え、自身の制作活動の指針としている。

 

 冬に山に登るのが好き。まず景色がいい、そして歩みが心地よい。落葉のおかげで、夏の間には目にすることのなかった風景が目の前に広がる。「あ、ここから富士山が見えるのか」と思いがけない展望にハッとする。空気も澄み、落ち葉を踏む足も弾み、その音も楽しげだ。

 冬の眺望のように、そぎ落すことによってしか見ることができないものがある。ものの在り方もそう、自分自身の在り方もそうかもしれない。自分に足りないものを嘆き、追い求めて続けているうちは決して気づくことができない何か、それを見つけるのが、ここ山羊座期の一つの目標となる。

 ホロスコープの一番高いところに配置された10番目のサイン山羊座の段階で、私たちは、ようやく「自分とは何者か」を理解することになる。牡羊座から始まった自己の獲得の旅は、山羊座で一つの着地を見ることになるのだ。

 山羊座は、最後の地のエレメント。最初の地エレメントのサイン牡牛座で「I have=私の持ち物」を実感し、番目の地のサイン乙女座でその持ち物を切磋琢磨し、そして山羊座の段階でその持ち物を「私の世界」として磨き上げる、これが地エレメントの成長のプロセスとなる。つまり、山羊座の目標は決して「社会化」ではない。むしろ「個」を徹底的に極めに究めること、それが山羊座の目標である。

 

 また、陰サインである地エレメントは、自己の感覚を使って内的な世界の違和感を取り除くことで自分を強く実感できるサインであるとも考えられる。

 その服は自分を心地よく包み、その靴は自分を心地よく歩かせてくれるだろうか。もしも、これは私の「形」ではない。これは私の「色の組み合わせ」ではない、そう思ったら思い切って捨ててゆくべき」と感じているならば、また同じように、その活動、その仕事、その表現、その人、その生き方は私のにふさわしくないと思っているなら、やはりここはどんどんそぎ落としてゆくこと、勇気をもってやってみること」が必要となるだろう。

 そして、そぎ落すだけではなく、自分の中にあるものを見つけていかなければならない。そぎ落とすことで見えてきた風景————ハッとするような美しい風景が自分の中にも必ずあるはずだ。とことん感覚を研ぎ澄まし、そして、とことん自分に正直になってみる。葉の落ちつくした木のように、自分の中のあるもの、その何かに気づくことができ、だからこそ、次の風エレメント・水瓶座で、未来へと育てるべき価値、一生手放さずに、同じように宝物を一つ、また一つと増やしていくべき価値というのが見えてくるのだろう。

 

 風の時代と叫ばれる昨今、さて、私たちは、今、私の感覚、私の価値基準をくぐり抜けて見えてきた「あるもの」を手にすることができているだろうか。人の意見や考えに惑わされない「何か」を手にしているだろうか。

 情報に惑わされ、前のめりで風の時代へと突入する前に、この山羊座期にもう一度、誰かのどこかの借り物ではない、自分だけの「あるもの」を強く実感して進んでいけたらと思う。

 

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