2021 乙女座の言葉 医師・中村哲┃己の分限と誠実を知り、天の恵みと人の真心を信頼する

心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…

 

 

 人の縁は推し量りがたいものがあります。現在までの経緯を忠実に描こうとすれば、幼少時から備えられた数々の出会いの連続を記さないわけにはいきません。私たちは不運を嘆いたり、幸運を喜んだり、しばしは一喜一憂して目先のことにとらわれやすいものです。

 

 様々な人や出来事との出会い、そして、それに自分がどう応えるかで、行く末が定められてゆきます。私たち個人のどんな小さな出来事も、時と場所を超えて縦横無尽、有機的に結ばれていきます。そして、そこに人の意思を超えた神聖なものを感じざるを得ません。この広大な縁の世界で、誰であっても、無意味な生命や人生は、決してありません。私たちにわからないだけです。この事実が知ってほしいことの一つです。

 

 現地三十年の体験を通して言えることは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足るということです。

 

 人の陥りやすい人為の世界観を超え、人に与えられた共通の恵みを嗅ぎとり、この不安と暴力が支配する世界で、本当に私たちに必要なものは何か、不要なものは何かを知り、確かなものに近づく縁にしていただければ、これに過ぎる喜びはありません。

著書『天、共にありより

乙女座の言葉

医師・中村哲

1946年9月15日福岡県出身。医師。乙女座に太陽、水星を持つ。

ペシャワール会の現地代表。パキスタンやアフガニスタンで医療活動に従事。戦乱と干ばつに苦しむ人々を救うため、総延長25kmを超える用水路を建設。もたらされた水は65万人の命を支える。201912月、アフガニスタンの路上にて武装勢力に銃撃され死亡。

 

 

 

 今回、このテキストを書くにあたり、大きな違和感を覚えた。太陽星座というのは、実際、どのように機能しているのだろうか。そのような疑問を抑えることができなかった。

 

「今月の言葉」を書いて年になるが、もちろん、そのような疑問を抱いたのは初めてではない。先日の生き方働き方研究会でも、職業と太陽星座の関係について話が及んだ。そのときは、太陽以外の個人天体(月、水星、金星、火星)は、太陽の意思が生まれることによって、はじめて「個」として統合され、安定した「個性」が生まれるのだという解説をした。

 

 今でもある程度、その考え方は採用できると思っている。とりわけ、まだ太陽を存分に発揮されていない人には有効な考え方だろう。しかし、中村医師のような人物――己の天命を存分に生きた人のその生き様を目の当たりにしたとき、いわゆる太陽星座の意味にその人生を押し込めることに強い違和感を覚えざるを得なかった。

 

 彼の人生、彼の活動、彼の言葉のあらゆる側面に12サインすべての要素を垣間見ることができた。行動力には火エレメントの勇気の、風エレメント的な発想力の、アフガンと共に生きようとする覚悟に水エレメントの要素をそれぞれに見出し、その大きさに圧倒されることになった。自分を生きた人はこんなにも豊かなのかと。

 

 だが、彼の著書やドキュメンタリーを追いかけていくうちに、やはり最終的に統合された世界観に触れてみると、おそらくこれが太陽星座の目指そうとした「理想の自己像」なのだろうというものを垣間見ることができたような気がした。

 

 もちろん、それは私のフィルターを通してのものだ。おそらく、他の人は違う中村医師の太陽星座らしさを見つけることになるだろう。それでもかまわない。中村哲という稀有な人物の太陽=生きざまを心理占星術を通して伝えることができるなら、この機会を大いに利用してみようと思う。

 

 

 今回、ピックアップした中村医師の言葉は、番目のサイン乙女座だけではなく、先日、火星ワークショップ・乙女座期でも伝えた内容でもある、タロットカード「Ⅵ恋人たち」の解釈にも当てはまるものだ。

 

 

 このカードは、いわゆる「マッチング」という意味を持っている。裸=等身大のアダムとイブの頭上に天使が両手を広げており、これこそが、まさに冒頭で引用した中村医師の言葉ではないだろうか。

 

 様々な人や出来事との出会い、そして、それに自分がどう応えるかで、行く末が定められてゆきます。私たち個人のどんな小さな出来事も、時と場所を超えて縦横無尽、有機的に結ばれていきます。そして、そこに人の意思を超えた神聖なものを感じざるを得ません。この広大な縁の世界で、誰であっても、無意味な生命や人生は、決してありません。

著書『天、共にありより

 

 火星ワークショップ、またタロット講座では「乙女座=恋人たち」の解説として、いつもこのような説明をしている。

 

 今、目の前に広がっている世界(人、出来事、環境)には無意味なものはひとつもない。1++3=6の式が表すように、自分自身が自分自身の天命=1(牡羊座・火星)+2(牡牛座・金星)+3(双子座・水星)を懸命に生きることで、天はそれぞれにふさわしい世界を用意してくれるのだと。

 「こんなに頑張っているのだから…」「もっと自分に合った仕事があるはず…」といくら嘆いたところで、天は実際にふさわしいものをきちんと用意してくれているのだ。せっかく天が与えてくれているのに、それに気づけないのは、私たちが自分自身を理解し、生きていないからだ。つまり、中村医師の言う私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足るということですということだ。

 

 乙女座は牡羊座から始まった個人の育成の最後の段階のサインである。自分自身を懸命に育て、利用し、生きたとしたら、あとのことは神のみぞ知る、ということになるのだろう。このカードに描かれた人物は裸である。裸ということは、余計な装飾を脱ぎ捨て、自分自身の等身大そのものでいられること、そして本当に私たちに必要なものは何か、不要なものは何かを知り、確かなものに近づくことができるようになるということだ。

 

 2021年乙女座期は、まずは今、目の前にある縁=人、出来事、環境を神聖なものとして捉え、大切に育んでみたいと思う。たまたま今出会った人も、手にした仕事も、関わっている活動も、明日の未来をつくる重要な I have=資源として大切に扱い、またそれがたとえ、自分にとって不服に思えたとしても、分限を知り、誠実に、今、自分にできる努力を注いでみたいと思う。

 

 最後に「医者よ、信念はいらないまず命を救え!」からの言葉を。

 

 一隅を照らすという言葉があります。一つの片隅を照らすということですが、それでよいわけでありまして、世界がどうだとか、国際貢献がどうだとかいう問題に煩わされてはいけない。それよりも自分の身の回り、出会った人、出会った出来事の中で、人として最善を尽くすことではないかというふうに思っています。

 

『医者よ、信念はいらないまず命を救え! アフガニスタンで「井戸を掘る」医者中村哲』より

 

 私たちの太陽が、今は人知れず、文字通り一隅を照らしているようにしか感じなかったとしても、それでいいではないか。今、できる限りの力で身の回りに光を放つことを続ければ、それでもう十分ではないだろうか。身の丈を超えた心配や不安、過大な自意識や欲求に支配されるのではなく、裸の自分にできること、そこからまずは始めてみるといいかもしれない。その努力が、やがてひとつの井戸を掘り当て、豊かな川へと発展し、必要な誰かへ、またその誰かへとその恵みを届けられる日がくるかもしれない。

 

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