心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
世界平均気温が史上最高を更新したらしいが、冗談抜きで毎日暑い。これが火エレメントの不動サインの季節ということなのだろうか。
4つのエレメントの不動サインの季節は、それぞれのサインの特徴が色濃く出るから面白い。
春の季節を担当している不動サインは牡牛座(おおよそ4/20~5/20)。一年を通して、最も過ごしやすく、心地よく、気持ちのいい季節である。まさに快楽をもっとも優先する地エレメントが極まった季節と言えるだろう。
そして、夏の不動サインは獅子座。一年を通して、太陽の位置はもっとも高く、日照時間も長く、あらゆるものを白日の下にさらし、存在を明らかにする。火エレメントが極まる季節は、そういった意味で覚悟や勇気が問われるのかもしれない。
この期間、国も企業も、そして個人も、それぞれ自分たちが取り組んできたこと、こうあるべきと思ってきたことの背後に潜んでいたものが明らかになるかもしれない。たとえば、正しいと信じてやってきたことに意味を見出せなくなったとか、逆にこれまでぼんやりとしか意識できなかったことが、ここに来てその大切さに気づかされたとか。
この一ヶ月、私たちは赤裸々になった事実に対し、目をそらすことなく受け入れることができるだろうか。明らかになったことから、私たちはどんな未来を創意工夫していけるのだろうか?
そんなことを考えながら、まずは2024年獅子座期をすごしてみてもらいたい。
こちらが2024年獅子座期のイングレスチャートだが、今回もっとも目立った表示は、2ハウス、5ハウス、8ハウスに入室している天体同士がタイトな角度で影響を与え合っているという点だろう。2-5-8ハウスは、まさに不動サインに関連した意味を持ち、国/企業/個人の価値の変動、資源の循環、経済の動向、また内需や外需、インバウンド経済を読み解くことができ、また為替や株式経済の変動と読むこともある。
7月25日の東京外国為替市場では、円相場が一時1ドル152円台に上昇し、日経平均株価は下げ幅が一時1,100円を超えて、3万8,000円を割り込んだ。6月22日に行った月イチ勉強会では、夏至図と日銀総裁の植田氏のチャートから、この三ヶ月は金融政策の動きが活発に起こると読んだが、獅子座期のイングレスチャートの不動サインの象徴は、それを受けた結果になっているのだろう。
また今回は、5ハウス天王星、8ハウス水星のコンタクトに注目だろう。この組み合わせは、思いがけない出来事、不測の事態に対し、情報を駆使し、また臨機応変に対応し、発想の転換を試みることで活路を見出すことができるとも読める。水星はホロスコープの最も高い場所に位置し、ASCのルーラーの木星も双子座にある。この一ヶ月は、この水星の力を磨くためにも、天王星のコンタクトは大いに利用したい。
その天王星に関する多くの記述を見ると、変化や刷新といった言葉を用いて説明されていることが多い。これらの象徴をもう少し膨らませて考えてみよう。
まず、天王星は水瓶座の支配星である。水瓶座は、12サインにおける最後の不動サインであり最後の風エレメント。それは、ただ単に目新しいものに心を奪われるのではなく、かつて価値があった、そしてこれからも価値があってほしいと願うものに現代の解釈を加え、息を吹き込む。つまり、人が忘れてしまった価値に、もう一度光を当て、新たな価値を見出すこと。それが天王星の象徴であるのだろう。
たとえば、バブル経済が崩壊してから、日本では様々な改革が実行されてきたが、その努力の甲斐も虚しく、失われた30年と言われ続けてきた。今こそ水星―天王星を実行する必要があるとしたら、つまり元々そこにあった日本の価値を再解釈し、現代的な知識やアイデアを加え、未来につながる刷新を行うことではないだろうか。
雑誌『Wedge2024年8月号 JAPANESE BE AMBITIOUS』特集にはこういったキャプションがついている。
かつて西郷隆盛は日本が西洋文明の多くの制度を採用する中、何を学び、何を取り入れるのか、その判断基準が必要であると喝破した。日本は今、明治維新、敗戦に続き、大きな曲がり角を迎えている。国、企業、個人は何をしていくべきなのか。
まさに、この「判断基準」こそが、最後の不動サインならびに最後の風エレメントという構造を持っている水瓶座の支配星である天王星の能力と言っていい。
本誌の中で『日本経済のマーケットデザイン』の著者であるスティーブン・ヴォーゲル氏が「日本は自分たちの国の強みをまったく生かせていない」と言っている。「そのためには、日本の強みを再び理解する必要がある」と。
この「理解」こそが天王星の持っている客観的知性の特徴となるだろう。
多角的に分析し、深く考え、必要な理解を得ること。
東京都知事選で大きな痛手を受けた蓮舫、そして立憲民主党議員らは、なぜ自分たちが選ばれなかったのかについて、今一度、深く振り返る必要があるだろう。東京都議会議員の補欠選で2勝6敗の結果となった自民党だって同じだ。問題を誰かのせい、何かのせいにしていても始まらない。問題を取り出し、多角的に分析し、深く考え、必要な理解を得る努力をしていかなければ、自分たちの持っている価値をどんどん目減りさせていく結果になるだろう。
必要な理解を得るためには、異論を拒絶するのではなく、異論に対し真摯に向き合い、我が身をしっかり振り返ることが何よりも大事になる。話し合いを重ね、学びの姿勢を持ち続けること。そこから得られた分析をもとに、深く考察し、その原因と、そして未来に必要な振る舞いを深く理解した者だけが未来に向けて大きく前進するのではないだろうか。
さらに、今期のイングレスチャートのもう一つの目玉は、2ハウスー8ハウスに在する冥王星、太陽の180度、また月、金星の180度だろう。
特に四季図やイングレス図は、月がその時期のムードを作ることは何度も確認できているので、今回のイングレス図もひとまず月のムードを感じ取っておきたい。
月―金星とはどのような解釈ができるだろうか。
個人のネイタルチャートとして読んだ場合には、その成長プロセスとして、まずは他者の持っているものを欲望し、満たされなさで心を揺らしてしまうところから始まり、やがて自分のI have=持っている物に気づき、自分の欲望を自己管理できるようになってくる。簡略的に書くとこのような感じになる。
これを時期読みチャートに置き換えて読んでみるとどうなるか。人々の反応やニーズに振り回され、自分たちの大切にすべき根幹を見失ってしまいそうになる。そこを何とか踏みとどまり、「私は「私の存在を取り戻そう」と企てるのである」を意識することが重要な振る舞いとなるのではないだろうか。
これは、火星サイクル手帳の牡牛座期に掲載した哲学者・ジャンPサルトルの言葉だが
他者は、私にとって、私から私の存在を盗んだ者であると同時に、私という一つの存在を「そこに存する」ようにさせるものである。
私をとらえる他者を前にすると、私は「私の存在を取り戻そう」と企てるのである。
この他者を通して見えているもの、それはかつて自分の中にある欲求だったのかもしれない。
脅かされそうになって、また強い嫉妬の思いに駆られて、初めてその価値に気づく。
獅子座期のイングレスチャートは、2-5-8ハウス、また牡牛座、獅子座、水瓶座といった不動サイン的な要素が目立つと書いた。
夏が極まる不動サイン・獅子座の季節。私たちはこの期間に、あらためて自分たちの価値を再評価し、必要とあれば議論を重ね、そして物事に対する深い理解を持つまで考えることを諦めない、そんな姿勢が必要なるのかもしれない。
今、まさにパリ・オリンピックが始まろうとしている。多くの人は選手たちからたくさんの感動を受け取ることになるのだろう。しかし、獅子座は「贈与」が目標のサインである。彼らの活躍に「私の存在を盗まれる」こともあるかもしれない。そこから「私の存在を取り戻し」、もしかしたら、うまくいけば自分の持っている価値を与え、そして与えることによって、さらに新たな価値創造の機会を得ることができるかもしれない。
明らかにする
深い理解をする
自分を取り戻す
贈与する
新たな価値を生む
このようなことを意識しながら、2024年の獅子座期を過ごしてみたい。