2024 山羊座~三宅香帆の言葉┃どういう働き方であれば、人間らしく、労働と文化を両立できるのか?

      アポロンの竪琴

2024 山羊座~三宅香帆
どういう働き方であれば
人間らしく
労働と文化を両立できるのか

著名人の言葉から12の太陽サインの生き方を考えてきた「今月の言葉」がリニューアル!

自分の理想=太陽を生きるためには、何が必要なのだろう。

水星神ヘルメスが発明した太陽神アポロンの竪琴の神話をご存じですか。太陽の理想や意図は、水星という竪琴=言葉があるからこそ美しい音色を奏でることができるもの。太陽の言葉=アポロンの竪琴のメッセージに耳を澄ませてみてください。

あなたの生き方、働き方のヒントを受け取ることができるかもしれません。

心理占星術家nicoが選んだ今月の竪琴
山羊座・太陽の言葉は…

 どうすれば私たちは、働きながら、本を読めるのでしょう。
 その問いを突き詰めると、結局ここにたどり着きます。
 どういう働き方であれば、人間らしく、労働と文化を両立できるのか?

著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』より

山羊座の言葉

三宅香帆(みやけ・かほ)
1994年1月12日、徳島県美馬市生まれ。5つの個人天体すべて(太陽、月、水星、金星、火星)を山羊座に持つ。

文芸評論家。
京都大学大学院在学中に『人生を狂わす名著50』を出版しデビュー。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』など書籍多数。

 わたしの占星術のクラスでは、山羊座について「12サインでもっともわがままで、もっとも自由なサインだ」と伝えている。山羊座の支配星である土星についても、もちろん同じような解釈をしている。自分の中の土星がしっかり育てば、自分の月や太陽を思う存分、自由に生きることができるようになると。

 わたしが山羊座についてそのように意味づけするようになったのは、15~6年ほど前に落語家・立川談志の著書『落語とは、俺である』を手にしたときだろうか。それまでわたしが見聞きした占星術の知識では、山羊座=土星と『落語とは、俺である』の表現がどうしても結びつかなかった。

 山羊座は、組織のために身を尽くし、努力と忍耐を惜しまないサインなのではないか。ならば、談志の荒唐無稽・破天荒ぶりは何なんだ? なぜ落語協会会長と対立、協会を脱会し、立川流を創設して勝手に家元になったりするんだ?

 それから数多くの山羊座=土星を観察し、学び、理解するようになり、わたしなりに少しずつ山羊座=土星の象徴を「生きた人間」と結びつけられるようになり、そしてほとほと占星術の多くの象徴は形骸化していると思った。

 いまだに一般の占星術では「真面目」「堅物」「社会性がある」といった解釈がなされることが多い。だが、そのような解釈のもと、5つの個人天体のすべてを山羊座に持つ三宅香帆の言葉をどのように考えればいいのだろうか。 

 今回取り上げた言葉は、2025年新書大賞に選ばれた『なぜ働いていると本を読めなくなるのか』だが、とにかくよく売れた。まさに働く人たちの実感をうまく言い表したこの素晴らしいタイトルは、彼女の手によってつけられたものであり、また「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」という帯の文言も彼女自身によるものだという。

 こういったエピソードもまさに山羊座的な『落語とは、俺である』によるもの。高い美意識と才能、そして「自分自身の采配の元でつくりあげたい」という山羊座の欲望を感じずにはいられない。
 この本のまえがきは、このように始まる。

ちくしょう、労働のせいで本が読めない!  
社会人1年目、私はショックを受けていました。  
〈中略〉
就職して驚いたのが、週に5日間、毎日9時半から20時過ぎまで会社にいる、そのハードさでした。

  ――週5でみんな働いて、普通に生活してるの? 

マジで? 私は本気で混乱しました。
結局、本をじっくり読みたすぎるあまり――私が会社をやめたのは、その3年半後でした。
 
今の私は、批評家として、本や漫画の解説や評論を書く仕事に就いています。会社をやめたら、やっぱりゆっくりと本を読む時間がとれたのです。それゆえに今は、たくさん本を書く仕事ができている。

著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』より

 真っ当な山羊座=土星は、無駄に忍耐なんかしない。ましてや自分にとって大切な「文化」や「感性」を犠牲にしてまで無駄に耐えるなんてことは決してしない。だから、巷の星占い本に書かれている「山羊座=忍耐」はひとまず忘れたほうがいい。

 『落語とは、俺である』と言ってのける人が、そんなけったいな努力などするわけがない。

 それよりも「ちくしょう!」と腹を立て、「マジで?」と混乱し、「本をじっくり読みたすぎ」て会社をさっさとやめ、最短距離で自分のリソースと自分の欲望をもっとも有益に使える人生へと向かっていくはずなのだ。

 これが最後の活動サイン、最後の地エレメント、ホロスコープのもっとも高い所に君臨するMC=10ハウスを担当する山羊座=土星の生き様なのだ。

 活動サインとは、自分の采配のもとで自分の環境を管理、コントロールする欲求を持ち、地エレメントとは、I have=わたしのリソース(資質や能力、時間、身体)を豊かに育むことが充足した生き方につながると考える。これだけ読んでも自分の感受性に合わないことに無駄なリソースを削ぐことなどするわけがないことがわかるだろう。

 そしてMC=10ハウスは、最終的にどんな自分でありたいかを示す。つまり「〇〇とは、俺である」を明確にするということになる。

 ここまで説明すれば、山羊座=土星を常に意識することは、自分の人生そのものを考える上で何よりも重要であることがわかるだろう。

 三宅香帆の「どういう働き方であれば、人間らしく、労働と文化を両立できるのか?」は、誰にとっても切実な問いなのだ。

 この問いにうまく答えを見つけられていないなら、すぐにでも「〇〇とは、俺である」の〇〇を埋められるような、〇〇を可能にする生き方、働き方を模索する必要がある。その答えは自分にしか見つけられない。なぜならば、「〇〇とは、俺である」からだ。

 三宅香帆は、「読書とは、わたしである」なのであった。

 あなたの〇〇は何か? まずはそれを明確にすることから始めてみてほしい。

山羊座の太陽 ~アポロンの竪琴