ノエル・ティル氏は、著書「The Creative Astrologer(邦訳では、『心理占星術2・クリエイティブな理論と実践』)」において、占星術をクリエイティブに適用していく姿勢や方法論を提示しました。しかし、さらに以前の著書である「Synthesis and Counseling in Astrology」の中では、占星術をクリエイティブに理解を深めていく工夫として、「セルフヘルプに関する本を月に1〜2冊読み、余白に占星術的な視点のメモを書き込むこと」を勧めています。これは、とても重要でためになるポイントなので、私はなるべくそれができるように努力をしています。月に1〜2冊まではいきませんが、これまでにいろいろな心理学の概念や実践を説明した本について、自分なりに占星術の象徴と結びつけて考えを深めています。きょうはご一緒にその実践をしてみましょう。
最近、ホ・オポノポノを紹介する興味深い本を読みました。「ホ・オポノポノ・ジャーニー(平良アイリーン著、講談社)」という本ですが、これは一種のセルフヘルプの実践法であり、心理占星術と関連づけるととても奥が深まるのではないかと私は感じました。そこで、さっそく出てくる概念を整理し、占星術の象徴体系と私なりに結びつけてみました。ぜひみなさんも参考にしてくださいね。
まず、ホ・オポノポノについてですが、この本では伝統的なホ・オポノポノではなく、モーナ(モルナー)・ナラマク・シメオナさんが始めた「セルフ・アイデンティティ・スルー・ホ・オポノポノ(SITH)」について理解を深めていっているということです。伝統的なホ・オポノポノでは、カフナと呼ばれる呪術師が仲介して儀式を行い家族関係などのわだかまりなどの問題を解決するもののようですが、カフナのひとりであるモーナさんはあるときすべての人々が自身で無意識の働きにつながりながら自分らしく生きることの重要性を認識し、SITHを始めたということです。これは、ひとつの「セルフヘルプ」の実践法だと私は感じ、さっそく概念を整理して占星術の象徴体系に関連づけてみました。整理の仕方、象徴との関連づけ方は、異なるアプローチもたくさん考えられると思いますが、一つの視点として参考にしてください。
では、そんな「SITH」というホ・オポノポノのアプローチについて要点を整理しましょう。私はまだ1〜2冊の本をざっと読んだ段階ですので、表面的な理解かもしれませんが、私の理解を元に話を進めます。ホ・オポノポノではすべての体験は「ウニヒピリの記憶の再生」であり、さまざまな体験を「クリーニング」することにより、より生まれつきの特徴(「ブループリント」)の自然な表現を実現することができる、と考えます。このとき、ウニヒピリやクリーニング、ブループリントなどの専門的な表現があるので、これらについて理解を深めていくことも重要です。
まず、ウニヒピリは、ウハネ、アウマクアとともに意識の種類を表し、それぞれ潜在意識、顕在意識、宇宙意識(超意識)に対応すると言われています。つまり、ウニヒピリの記憶のクリーニングという概念は、少なくとも潜在意識に働きかけることを行なおうとしているのでしょう。「すべての体験はウニヒピリの記憶の再生」ということから、占星術の象徴では「記憶の再生」に関連する月の働きに注目します。つまり、月がホロスコープ上のあらゆる要素(すべての体験)を照らし出している様子を指しているものと考えられます。その中でもこの地上に生まれてからの具体的な記憶が蓄積されるのはホロスコープ上のハウスだと私は考えます。つまり、さまざまな天体配置がハウスに関連して働く様子を月が照らし出しているものが「ウニヒピリの記憶」ではないかと考えました。
ウニヒピリは、いろいろな文脈の中でさまざまなかたちで説明されるので、その中にもヒントがありそうです。ある文脈では、「内なる子供に話しかける」という表現も出てきました。これも月との関連を考える重要なポイントだと思います。
また、ウニヒピリは、強い感情体験に関連したり、社会的に多くの人々との関係の中で無意識を通して体験される特徴があるので、とくにトランスサタニアン天体(天王星・海王星・冥王星)に関連しやすいのではないかと感じられます。
しかし、モーナさんの言葉の中に別の重要な側面も見えてきます。
「私は何か問題が起きたとき、その対象を変えようとしません。自分自身をクリーニングします。自分を覆い囲む記憶を消去しそれを許さない限り変化は起きないからです。誰かだけが得をして誰かだけが損をしているというバランスは本来宇宙に存在しないのです。あなたがあなたの外を見て不調和を感じているということは、あなたは内側でバランスを失っているということ。判断を繰り返す間、あなたはあなたを生きていません。」
これは、ホ・オポノポノの想定する宇宙の法則に関連するようです。占星術ではさまざまな象徴を通して心の内側での出来事と外側の出来事を関連づけますが、ここではただ関連づけるだけではなく、宇宙のバランスの法則のようなものを想定する必要がありそうです。この法則がさまざまな判断をする際の基準になるのでしょう。確かに、ホロスコープを利用して判断をする際にも、何らかの理想の状態やバランスを想定しないと考えを進めにくいかもしれません。
占星家のグレン・ペリー氏は、支配星とサインの連携がそれぞれの象徴の次元において「過剰状態」や「不足状態」を認識しながら「バランスのとれた状態」へ向かおうとする力が働くというモデルをもとに適切な状態を探していくメカニズムを考察しています。このようなモデルも参考にできそうです。
こうしてウニヒピリの記憶をクリーニングをし続けていくと自分のブループリントを生きながら完璧な宇宙のバランスの中に存在することを意識できるようになるということですが、この「ブループリント」を「まさに今太陽がホロスコープ全体を照らし出している様子」として考えることができるのではないかと私は思います。
つまり、私の考えでは、ホ・オポノポノでいうクリーニングの作業とは、「記憶を頼りにする(そうでないと自分が何をやっているか自体認識できない)が記憶に振り回されずに、太陽の光の力でブループリントであるホロスコープ全体の可能性を現在いる環境の中に輝かせていくために、記憶を普遍化純粋化透明化していく作業」ということができるかもしれません。そしておそらくその背後には、一人一人の太陽が記憶のフィルターに歪められずにしっかり輝けば全体のバランスが自然に整っていくという「宇宙の法則」への信念や期待が働いているのでしょう。
このようにして、ホ・オポノポノの実践を象徴を通して占星術と結びつけておけば、チャートを利用するときにその発想を思い出し、応用することもできるのではないでしょうか。ぜひみなさんもさまざまな「セルフヘルプ」の実践を心理占星術の象徴と結びつけながら勉強してみてくださいね。