心理占星術家nicoが選んだ今月の言葉は…
早川氏 私はいま生きるのも困る、死ぬのも困ると思っています。
森田先生 私などもむかしはそうだった。死ぬのは恐ろしい、生きるのは苦しい、と思った。それはいいかえれば、「死を恐れないで、人生のいろいろの目的を楽々となし遂げたい」ということになります。これが神経質者の特徴であります。
大きな目標の達成には大きな苦痛、困難が伴うという、きわめて簡単な事を覚悟しさえすれば、それだけで神経質の症状は、強迫観念でも何でもすべて消失するのであります。
森田正馬著「自覚と悟りへの道――神経質に悩む人のために」より
山羊座の言葉
1874年1月18日高知県生まれ。太陽、金星、水星を山羊座に持つ。
医学博士、精神科神経科医。神経質に対する精神療法である「森田療法」を創始した。青年時代は仏教や東洋哲学に興味を持ち、哲学者になることを考えた。自身が青年時代に神経質症状に悩んだ経験があり、それが神経質症状の本態を発見する機縁ともなった。
12サインの旅は山羊座まで歩みを進めた。山羊座は、ホロスコープでいうと一番高い場所、MC=10ハウスに位置するサイン。心理占星術的に言えば、山羊座の段階で本当の意味での自己実現、嘘偽りのない自己の在り方を完成させる。
ここで考えてみたいのは、森田正馬氏が青年時代、神経質症状に悩んでいたということ。氏によると、神経質症状とはとらわれの状態であり、とらわれやすい人々というのは、自然に生じる感情を「かくあらねばならない」と考え、知的に解決しようとする人のことだという。自然に起こる出来事や自然な心身の反応を自分の意識で管理しようとする万能感、支配欲によって、不快な感情を「あってはならないもの」として観念的にやりくりしようとするために、より一層思うようにならない自己(理想の自己と現実の自己とのギャップ)に葛藤が生じるということだ。
「人前ではきちんとしていなければならない」と考えるために、緊張してしまう自分を「ふがいない」と感じ、緊張しないようにと身構える結果、かえってそれにとらわれてしまうということである。
「とらわれ」からの脱出と、本来の欲求=生の欲望を自分らしく発揮できるようになること、氏の言葉で言うと
自然に服従し、境遇に順重になること、
現在になること
を目指すことで神経質症状が直っていくという。
これぞまさに山羊座の成長プロセスではないか?
既存の与えられたシステムの中で、土星的(山羊座の支配星)な要求―――かくあらねばならない、人前ではきちんとしていなければならない―――に応えようと常に緊張状態にある。そのような「不自然な自分」を前に、氏は自分の「あるがまま」を徹底的に観察するようになる。
不安も自然な感情の一つ。「そのまま」を生きること、それが「あるがまま」であるという。
「柳は緑,花は紅」である。憂鬱や絶望を面白くし,雨を晴天にし,柳を紅にしようとするのが不可能の努力であって,世の中にこれ以上の苦痛なことはない。夏は暑い。嫌なことは気になる。不安は苦しい。雪は白い。夜は暗い。なんともしかたがない。それが事実であるから,どうとも別に考え方を工夫する余地はない。
わきあがる感情も目の前に起こる出来事も自分の思い通りにはならないものであって、自然なありのままの事実として、そこには「納得」も「受け入れる」姿勢も不要、「そのまま」受けとめる、それが山羊座で手に入れたい一つの真実なのではないか?
なぜなら、それが自分をとりまく「自然=現実」であり、疑いようもない事実であり、今、自分が手にできている限りの飾り気のない、ありのままの私=MCなのではないだろうか?
氏は言う。
決心とか、自信とかいうものを思い切り投げだしてしまって、ただ自分の机に向かえばよろしい。
善悪をとやかくいうことをしばらく止め、理想を強調するのをしばらく中止していれば、自分というものが自然にハッキリわかってくるのであります。
およそ一つの目的を達成するのには、たくさんのいやな仕事をがまんしてやり抜いてゆかねばならないものです。君は簿記をやりながら音楽もやればよいのです。まだその上に空想もし、居眠りもすればよい。
生きていればいろいろなことがやってくる。楽しいことばかりは続かず、嫌なことは避けては通れず。私自身もそうだが、コロナウイルスのせいで多くの人たちが生きることに不安を感じ、神経質な心持ちになることが多くなった。見通しの立たない未来、他者との距離感、生きることは本当に大変なのだ。
ならば、難しいことはあれこれ考えず、そこにある社会をそのまま生きようではないか。今、この時代を受け止める、ただ受け止める姿勢で生きてみようではないか。
2021年の山羊座期は、そんな地エレメントの完成を目指し、「今の私の到達点として」、ここ、この自然を生きてみたいと思う。