子育てに関するお悩みに、心理占星術の技術を使い解決の糸口を探る「ニコラボ 心理占星術 子育て研究会」。
第4回は、既に独立し家庭を持たれた成人男性のケースを取り上げ、前編では、自立のための挑戦と親子間での葛藤の過程をホロスコープで検証しました。
貴重な事例を提供くださったのは、「子育てに失敗したと思っていたし、コンプレックスでしかなかった」という和佳さん。
今回は、その息子さんの転機ともいえるタイミングから、自立のきっかけとなる心理的背景を探ってみたいと思います。
子どもの海王星 ~ 親の期待とため息に失望を覚える
nico: 前回に引き続き、既に独立された33歳の息子さんのチャート分析を行っていきます。
息子さんは仕事でも成果をあげ、ご結婚もされている立派な成人男性です。しかし、母親である和佳さんは、長年にわたり息子さんと相入れることがなく、ご自身の子育てについてはずっとコンプレックスを抱いていたそうです。ある時、息子さんに「わたしは子育てに失敗した」と伝えたところ「それは俺に失礼だろ!」と言われたという、なかなかなエピソードをお持ちです。
今回は、そんな息子さんの転機となったタイミングから、自立のきっかけとなった心理的背景を探ってみましょう。
先ず、高校生の息子さんが留学したときのチャートです。
これは、まさに、誰かに海王星を投影されている(MC海王星のコンジャンクション)チャートですね。お母さんから見てどうでしょうか。
和佳さん: わたしは若い時に、海外に行きたいなと思っていたのですが、自分でお金を稼いで行くのはなかなかできませんでした。結婚して、夫の仕事の都合で海外に行けるということも、自分はすごくワクワクしていました。
そういう意味では、まさに私の期待を背負っていたのだと思います。
nico: 息子さんは、もともと海王星がカルミネートしていて、海王星・木星の関わりもあり、海王星が強調されています。
海王星が高いところにある(MC)ときの留学――未だ自立や独立する前の子どもですから、自分で判断した感じに見えず、誰かの夢や期待を背負っていた。まさに、お母さんの夢を背負ってアメリカ留学しましたというチャートですね。
和佳さん: はい、かなりそうだと思います(笑)
夫の仕事の都合で、短期で海外に行くのが分かっていたので、公立だと先生が変わってしまうし、先生が受け入れてくれたほうがいいと思って、私立の小学校に入れていました。
中学受験がメインの小学校だったのですが、息子は中学受験が上手くいかず、「私は何をやっていたのかな」と気持ちがどーんと落ちたんです。
その時から、「息子はもう高校に入ったら留学させなければ」という思いもあり、留学クラスに進学させました。でも、中学受験の失敗を、高校で留学させたということで、世間に対する自分の立場を作りたかっただけだったのかもしれません。逃げみたいな留学だったように思います。
大学も国際経済学部に進んだので、2年生でアメリカの大学へ行くことが必修だったのですが、息子は1年生の終わりに大学を辞めると言いました。もう、学校の流れの中での留学はしたくないと思っていたのかもしれません。
nico: なるほど、自分の意思がはっきり出てきたんですね。
ただ、この高校1年生で留学した時点ではーー誰のどういう思いで行ったのかは、息子さんに確認する必要はありますがーーまだ自我が生まれていない。そこに海王星が働くと、まわりの期待を背負っているような出方をします。
また、海王星はまわりの人のため息を拾ってしまうこともあるでしょう。
同じようなケースで、以前、親子の鑑定をしたときに、幼稚園の受験に失敗したお子さんのチャートのMCに海王星が来ていました。お母さんを失望させた、誰かを失望させてしまった。海王星はとっても難しいエネルギーなので、よほど太陽の自我がないと、このように誰かの期待を背負って、失望に変わることのほうが多いです。
ここを克服するのは、息子さん、とても大変だっただろうなという気がします。もしかしたら、まだ、海王星の失望から抜け出していないかもしれません。息子さんは、人生の中で失望との戦いがあったのかなという印象がここにはあります。
和佳さん: そうですね、そんなにルンルンわくわくしている感じでもなく……うーん、ひとりで引き受けてきたんだろうな、という感じはします。
nico: 先ほどの鑑定で幼稚園受験に失敗した子は4歳だったと思うのですが、「お子さんは、だいぶお母さんのがっかり感を背負っていますよ」とお伝えしました。ご主人からも「もういいじゃないか、そんなに落ち込むなよ」と言われているけれど、「お受験に失敗した」と自分自身が一番落ち込んでいるとお話されていました。
子どもは敏感なので、そうした海王星のため息をすごく拾います。そこが息子さんの心象風景として重たかったのかなという印象ですが、どうでしょうか。
和佳さん: 本当にその通りです。よくわかります(笑)
nico: このように、子どものチャートに海王星が来たときは「子どもの夢や理想」と捉えない方がよいです。子どもは夢が見られるほど、自我が芽生えていません。大人だって、自分の夢というのは微妙なわけですから。
まわりの期待を背負って、上手くいかずに失望している、そんな(子どもの)体験をチャートでたくさん見ています。子どものチャートに海王星が来たときは、親、特にお母さんのガッカリ感とため息を聞かせないようにすることが、とても大事だと思います。
火星と土星、自立と父性への目覚めでの結婚
nico: では、もうひとつの時期を検証してみましょう。
これは、息子さんが自分で決めた結婚をご両親に伝えた頃ですが、これは、まさに! 素晴らしいチャートですね!! ここで注目したいのは、ソーラーアーク、トランジットの両方の軸に土星が来ている点。
ソーラーアークの土星がMC上に、トランジットの土星もディセンダント上に来た! 男性がこれで結婚を決めるのは、なかなか立派なものだと思います。長く付き合った人ですか。
和佳さん: そんなに長くないと思います。大学を辞めた後、ワーキングホリデーを考えていたようですが行けなくなり、居酒屋とかでアルバイトをしていました。そのときに知り合ったらしいので、そんなに昔から知っている関係ではなかったと聞いています。
nico: これはもう典型的。男性のチャートで、わかりやすい言い方をすれば、自分が責任をとる、父性の感覚が生まれたタイミング。そんな理解でいいのではないかと思います。
自立・独立、自分の世界をきちんと作っていこうという覚悟が見えるので、これで結婚を決められる男性は、なかなかたくましい感じがします。むしろ、羨ましいですね(笑) こういうタイミングでプロポーズされたら、女性としてはかなり嬉しいはずです。
和佳さん: 私たち家族とは違う世界に行きたかったのかな、という感じがします。
彼女のご家族はパチンコ好きでタバコも吸うし……、本当に、真面目に生きてきた私たちの相手が、なんでこんなに180度違う家族なんだろうという思いがありましたが、もしかしたら、そっちのほうへ行きたかったのかもしれません。
nico: ひとつに、息子さんには自分が守ってあげる対象が必要な感じがあります。
海王星・木星・天王星は、ヘルピングピープルと言いますし、だから、息子さんがお嫁さんをサポートしてあげるというのは、彼の中の目覚めだった。これまで、親からやってもらう、与えられるばかりだったけれど、自分が誰かをサポートできる、父性の目覚めのようなものがあっただろうと思います。
火星のリターンもあり、こうした土星の配置で結婚するのは、女性にとってはすごく幸せでしょうね。自立・独立ももちろんそうですが、父性が目覚めたという息子さんの中のサポート力です。息子さんは、すごく親切な人なのでしょうね。
東半球の葛藤、他者への理解と努力
和佳さん: 入籍の直後、お嫁さんのご家族がたて続けに亡くなったこともあり、息子の中に「面倒を見なくては」という気持ちが芽生えたのかもしれません。
そうはいっても「結婚するのは紙一枚で簡単だけど、離婚するのはいろいろ難しいよな」と言ったりするのを聞きますので、生活の中ではケンカもしてバチバチやりながら、離婚を考えることもあるようです。
nico: 息子さんは、もともと東半球的な人なので、結婚生活にはすごく葛藤があるでしょう。でも、他者という異物との和解のようなものが成長には必要ですし、その努力は息子さんにとって、マイナスにはならないはずです。
本来なら、他者を断絶し、独身貴族で生きていてもおかしくないチャートです、よく結婚したなぁとも思います。この辺のところを見ると(ASC太陽・木星・水星/DSC月・冥王星のオポジション)、夫婦でやっていくのは大変そうですが、息子さんとしては、いろいろ成長する方向に向かっている気はします。
結婚したタイミングは、男性としては、なかなかいいタイミングを選んでいますよ。そういうことも含めて、もっと息子さんを誇りに思えるといいですね。
和佳さん: (お嫁さんとの環境が)違いすぎて、私がなかなか理解できなくて。
nico: ご主人も和佳さんも、冥王星をお持ちなので、地獄の底を覗きたい願望がどこかにあるはず。それを息子さんが体現しているということですよね。
まったく違う家庭環境や文化背景を持っている人と結婚し、たくさんの人の死を体験したり、他者との価値観の相違の中でぶつかり合いながら一生懸命やっている。息子さんは、ご自分のチャートを精一杯生きているように見えますが、どうでしょうか。
和佳さん: 私のまわりの人たちは、優秀な人たちが多く、それが私自身のコンプレックスになっていました。だから、(お嫁さんに限らず)「そんなおうちの子なんて」「学校もわからない子なんて」と、息子の選択をジャッジしてしまうタイプでした。
でも、親がそう接していても、子どもは時期が来ると親の期待や価値観にとらわれず、自分から発動して生きていけるんだな、とあらためて思いました。
nico: 私も昔、自分の親に「あなた達から、そんなに立派な子が生まれると思わないでください」とよく言っていました。「此の親にして此の子あり」という諺ではないですが、子どもからしたら「そんなに期待されてもね」という思いがある。
だいぶ上出来でしょう。息子さんは、ちゃんと自分なりに努力して、勝ち取ってきています。お母さんとしては、子育てに失敗したなんて言わず、息子さんに感謝したほうがよさそうですね。
* * *
今回は、成人された息子さんの転機となったタイミングをピックアップし、その当時の心象風景を紐解いてみました。
ご自身の子育てを失敗だと思いながら、長い年月を過ごされてきたという和佳さん。
自我の目覚めがないうちの親の期待=海王星が息子さんに重くのしかかる様子、その後の火星や土星による父性の目覚めなど、失敗どころか、むしろ息子さんはしっかりとご自身のチャートを生きようとしている、そんな姿勢が伺えました。
お母さんの思いとおりにならない、子どもが期待や理想に反している、それは決して子育ての失敗ではないということですね。
子どもと良好な関係を保つことではなく、対立や衝突こそを面倒がらずに受け入れ、成長の機会としてサポートをする。それは親に限らず、周囲の大人として求められる態度なのかもしれません。
和佳さん、貴重な体験を開示いただき、ありがとうございました。
ホロスコープ分析のご感想
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