心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
今月の星宙予報は、三ヶ月に一度の特別号。
去る12/24(火)に行われた月イチ勉強会での冬至図リーディングの様子をお届けします。
出来事の当たる・当たらないではなく、考え方のヒント、考えをめぐらすことの重要性などとともに、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えします。
時代を象徴する人物から何を見出せるか
nico: ここ最近、毎日毎日いろいろなニュースが飛び込んできますね。内容が咀嚼できてない間に、また次のニュースがやってきて、私自身が答えを見出せていない部分がたくさんあります。今日は、限りなく独断に近いかたちで今年の総括をしていくことになると思います。
今回、冬至図のほかトランプ氏を取り上げることにしました。これから経済をはじめとする世界情勢がアメリカの介入如何でいろいろ変わってくるだろうと考えられるからです。
普段は、ひとりの人物を時代や国家として読むことは、あまりしていません。誰かひとりのチャートが国を動かすように見えるのは、イスラム圏ではあるのかもしれない。でも、民主主義国家の中では基本的にないですよね。
ただ、昭和天皇のチャートは昭和の出来事とかなりシンクロしていて、時代と接近した人物として、かなりのインパクトがありました。
そういう意味で、トランプ氏の影響力は大きく、彼を通して時代に必要なエネルギーを考えてみたい。実際に、選挙結果当日、大統領就任式の三重円を見ると「こういう人がひとつの時代を作るのか」という印象を受け取ってもらえると思います。
これから天王星や海王星も移動していく中で「欠かせない時代意識とは何か」を考えてみましょう。
2024年の振り返り、蟹座=月=胃袋の力
nico: 春分のチャートでは、月ー冥王星のアスペクトを強調して読みました。ここからずっと、月ー冥王星的な出来事が起きていた。
アセンダント(ASC)は蟹座です。未解決のままである問題を解決しなくてはならない流れになっている。
それは、汚れが溜まった水槽の中にいて、世の中が見えていない状態。先ずは外の世界がクリアに見えるように自分の水槽を洗った方がいい、水が流れるようにパイプの詰まりを取ることも大事。自分のぬくぬくとした安心できる環境の中にいると、びっくりするぐらい自分が世の中とまったくマッチングしてない感じがわかる、そんなイメージを繰り返しお伝えしてきました。
皆さん、この一年を通じてわかると思いますが、自分の心の器の大きさを知らされてしまうことを所々で体験しているはずです。外の世界で起きているさまざまな意見や考えにふれた時、「なるほど、そういう考えもありますね」と、自分の中で咀嚼して吸収できるかどうか。
蟹座は「胃袋」を象徴することもあり、食物だけではなく、さまざまな情報や経験を自分の中で消化し、取り込んでいく受容の力です。2024年は、そういう自分の胃袋を理解していく、心の器や消化力が試されるときだった。
この冬至からの3ヶ月は、もう一度、蟹座の胃袋的な振り返りが大事になるときです。
・咀嚼力や消化力が弱らないよう、受け入れやすい情報や経験だけに頼らない。時間をかけてよく味わい、自分の中に取り込む。
・食わず嫌いをなくす。苦手だと思っていたものでも、実際にしっかり向き合ってみると、新しい発見や面白さを感じられる場合がある。
そうして、自分の血肉となったものを、次の春分(天秤座のアセンダント)でどう使うことができるのか。それがひとつの流れになります。
水瓶座・冥王星の光と闇
2024年は、まさに選挙イヤー。日本のみならず、各国で政治局面の変化をもたらす結果となり「リベラルの崩壊」「民主主義の崩壊」といった言葉が躍りました。また、SNSを駆使した煽動的な選挙スタイルは世界共通となり、「ポピュリズムの台頭」とも言われています。
この流れについて、19世紀の政治思想家・トクヴィルの著作「アメリカのデモクラシー」を引用し、冥王星・水瓶座のはたらきと共に紐解きました。
nico: フランス貴族のトクヴィルは、自国の政治にがっかりして米国に渡った政治思想家です。彼の著作「アメリカのデモクラシー」によると、アメリカの独立戦争時に印刷メディアが出来上がっていったそうです。
アメリカの創始時、どういう形で民主化や平等化が行われたか。一番最初に鍵となっていたのが、ベンジャミン・フランクリン。彼が印刷メディアを作ったとき、みんなが文字が読めない中、文字が読める人は権威だった。
「個人が自分の考えを発信できるメディアが出来上がると、権威的に発信を許されていた人の存在が相対化され、情報の重みづけが失われていく」ーーこれはトクヴィルの言葉ですが、もうまさに現代の話であり、皆さんも体験している部分かもしれません。
いまは、どんな人でも自由に発信できるようになり、その勢いは止められない。その結果、情報の重み付けが失われていき、ひとつの危機になるかもしれません。
多くの人が発信でき、声を拾えるようになったSNSのメディアは、3.11(東日本大震災)のときーーちょうど海王星が魚座に入ったばかりのときーーには、情報を共有したり人々が繋がれることの効果が大きかった。
そこから魚座が進み、デジタルテクノロジーがもたらしたコミュニケーションのグローバル化は、ウクライナへの支援呼びかけなど、広く声を届け行き渡らせる革命でもあった。
ただ、そこには悪い側面も必ずあるはずで、冥王星が水瓶座に移ったところで、引き出されてきたものがある。元々、冥王星はそこにある闇の部分を引き出す性質があり、これまで社会で良しとされ押し進めてきたLGBTQや貧富の格差解消など、平均化や平等化で生まれた拒絶や矛盾、疑念などが浮き彫りになってきてもいます。
現在、冥王星は水瓶座の入口に入ったばかり。これから約20年をかけて水瓶座を進んでいく中で、わたしたちはどのような体験をするのか。
社会が良い方向に進むための提案として、ふたつの体験が挙げられました。冥王星体験は米国の精神科医・E=キューブラー・ロス博士が提唱する「死の受容プロセス*」が参考になること、不動サイン水瓶座のはたらきとして、対話と熟議による解決があることをお伝えしています。
*死の受容のプロセス
死にゆく人の心理の変化を5段階で捉えたもの。1「否認/孤立」→2「怒り」→3「取り引き」→4「抑うつ」5「受容」。
→詳しくは、本編の動画でご覧ください
これからの天秤座は、反骨精神と不協和音
nico: 話は変わりますが、数日前の冬至のタロット勉強会では、多くの人が「7」にまつわるカードを引き当てていました。なぜ、繰り返し「7」に関連するカードが出てくるのか。
この1ハウス、7ハウスが強調されているのは、社会や自分たちの暮らしや生き方を考える上で、天秤座的なテーマが出てくるだろうと思います。そして、次の春分のアセンダントも天秤座。つまり、この3ヶ月間は、次の春分で惑わされないためには、牡牛座的、金星の感受性を作っておくというのは、とても大事なことだと思います。
そこで、皆さんに天秤座の完成を根こそぎ変えてもらうために、川久保玲さん(コム・デ・ギャルソンのデザイナーであり実業家)の言葉を紹介します。彼女は、個人天体の太陽・水星・金星・火星、すべてが天秤座。まさに、THE 天秤座の人です。
私が仕事をするときは、与えられた場所とか結果とか、人に合わせるとか、そういうことは一切考えません。
自分のうち、うちなるものだけのことを考えて作ります。それが結果として偶然のようにいろいろな事象と絡み合って表現となるんです。
世の中の大体の天秤座は、「人に合わせる」「調和・バランス」といわれているようですけど、彼女のキーワードは反骨精神と不協和音です。世の中の空気とは違う自分の空気を信じていくことを大事にしている。
「6」という完全調和の乙女座の世界から、「7」の天秤座は素数としての不協和音を作っていく。それがわたしたちが目指したい天秤座の姿なんです。
冬至のテーマとして付け加えるなら、自分の内なる金星のことだけ考えてやっていけば、結果として偶然がやってくる。これが素数の目標かな。
火星とそして冥王星のオポジション7ハウスからも、1(火星・自分)と7(金星・他者)の関係性作りとして考えてもらえるといいと思います。
そもそも、火星と冥王星は共にサバイバル力であり生存戦略です。生き残りのために、ライバルとも手を組む、政策協力も厭わない。自分たちは、どう生き残っていけるのか、そこを真剣に考えるのが、この冬至で目指すべきところです。
時期のお手本となるか?!ホンダと日産の経営統合
nico: やっと今日の本題です。昨日、ホンダと日産の経営統合の話が出ました。ちょうど3月15日、春分の手前で戦略的パートナーシップの検討を開始すると発表があり、冬至のいま経営統合に向けた協議に入ったという報道です。
上手くいく保証はないようですが、それでも冬至できちんと「結」として記者会見があった。
これは、まさに先ほどの火星と冥王星の生存戦略の一例ですよね。それに計画されている時期がとにかく絶妙なので、ぜひ皆さんに紹介しておきます。
2025年6月に最終合意を目指す。このタイミングで何が起こるのか、もう皆さんご存知だと思いますが、2025年の6月は、海王星と土星が牡羊座0度でコンジャンクションし、そして木星が双子座から蟹座に動くタイミングなんですよね。
そこのポイントで最終合意をし、新しいスタートを切るイメージを持っている。今年2024年、いろいろ伏線を張っていたものを6月、次の夏至で回収する流れになっていく。
そこから、2026年8月の上場を目指すそうですが、ここも天王星が牡牛座から双子座に移った後のタイミングです。
この1~2年を想定した中では、こうした動きはわたしたちも考えておきたいですね。これから時期的なスケジューリングは大事になる。世の中の動きがどうなろうと、惑わされないための自分たちが軸を作っていくひとつの方法として有効になりますよね。
ここで日産の内田社長の声明をご紹介。その内容は、まさに不動サインの「価値の循環」と「未来の創造」そのものであり、未来を切り開く仲間と共に議論を重ねていく、水瓶座が必要としている力のイメージが凝縮されたものでした。ぜひ参考にしてみてください。
そして、こちらは三者で掲げた今後の方向性ですが、これは風のエレメント時代の目標のひとつにしてもよいだろうと思います。
◎将来の競争力強化への取り組みの着実な推進
これは双子座ですよね、競争=戦って勝つのではなく、自分に出来ることをしながら切磋琢磨するというイメージです。牡牛座の次のサインでもあり、自分を知ったうえでの差別化というのも大事ですね。
◎将来の成長を支える基盤の更なる強化
基盤といえば場作りであり、活動サイン的。新しい世界に向かってさらに成長していく、天秤座のイメージです。
◎過去から積み上がった資本の適性化
これはまさに水瓶座。自分たちが何を持っているのかを見極める。持っているリソースを適正化しないと、使える物も使えない。皆さんの家計で考えてみるのもいいですね。
さらに火星の動きも加えて、詳細なスケジューリングと時期の目安をお伝えし、家庭や仕事でバッチリ応用できるヒントもお伝えしています!
→ 詳しくは動画でご覧ください
時代と密接に関わる「属人的な力」とは
nico: 来年は戦後80年という節目で、日本の2025年はいろんな意味でパンチがあると思います。一応、80年というのは、天王星の一周74年のイメージとして見るのもいいかと思います。
終戦時、双子座の天王星の時代から、ぐるっと回ってきた。日本はアメリカに頼って上手くやってきた、でもMCで完成した良き自分は、もう通用しない。だから、成功体験を書き換える必要がある、それが山羊座・冥王星の負の部分でした。
天王星のオウンサインは水瓶座=個性化のテーマです。
天王星が一周して、アメリカ従属みたいなところから、次の個性化として何を目指すのか、どう日本が生きるのか、今のこの時点では分からないですが。
それぞれの国が同じように戦後の節目を迎えて、全ての国の政治が大荒れだった感じがある。来年は、自分たちがどういう国として生きていくのか、個性化として誕生していく時代になったとき、個人もある程度の進化を作っておけるといいのかなと思っています。
そこで、今からトランプのチャートを読んでいきますが、ちょうど80歳。天王星リターンを体験する。(オーブがありますが)太陽とコンジャンクションして、そこに月がオポジション。「なるほど、こういう人が今の時代に選ばれるのか」そんな印象があります。
特徴的なのは、10~12H強調で月のアイソレート。子供時代に、母親が入退院を繰り返していたそうなので、月の孤独が出ているかもしれない。家業の不動産業も父親の英才教育を受け、兄に代わり跡継ぎとなったのは南半球的で、月との距離感がある。
ただ、構造的に読んでみると、双子座はやんちゃに見えるかもしれないけれど、実は内向きなんです。個人天体の双子座と蟹座のセットが、よりIC的なものを強めていると読めると思います。
家業の不動産業を継ぎ、自国民ファースト、関税をかけるのは自国の価値を守るためですし、内側にあるものを大切にする感性が、双子座と蟹座のセットでより強化されている。いわゆる一般的な占星術でも、双子座は海外やグローバリゼーションのイメージにはなりませんよね。
そこに、双子座の太陽に対する射手座の月。狭い世界の中でやっていくというよりも、全体像を見渡す俯瞰的なビジョンと欲求を持っている。完全に鎖国するのではなく関税をかける発想は、外の流通自体は拒む気はないけれど、全体を見て口を出すイメージかな。内向きになりすぎないのは補完関係としてはすごく大事だと思います、いいですね。
そして、この二つのコンジャンクション。職業占星術的にはコンジャンクションとオポジションを、その人の代名詞として読みます。自分の力で、自分の存在を作っていくという意味です。これがトランプらしさっていうものを一つ作っているとしたら、、、
我々がトランプについていくんじゃなくて、トランプが我々についてくる。左派はそのことを理解していない。トランプは、我々が彼に実行してほしいことをよく理解している。
「トランプが我々についてくる」そういう意識でみんなが求めているもの、人の声を聞く「民意」を天王星でキャッチし、それを自分の生きざまや政策に変えていく。そういう意味では、インタラクティブな政策を作る人だろうと思います。
これは、いい意味で空っぽの感覚がある。人の話を聞かないと、自分のことが定まらない感覚があるのは風エレメントの特徴だと思います。
周りの人の話を聞くのも親切というより、その反応で自分を作っていく風エレメントの創造性かもしれない。いいか悪いかではなく、そういう風の反応で自分の体を作っていく力を元々持っている。そこに木星もトラインしているので、善きものを拾いながら「こうしてほしい」を理解する能力、ビジョナリーといった人なんでしょう。天王星と木星は、周りの空気感の中での一番最善を取るみたいなところがある。
それと共に、蟹座の土星&金星、結構パワフルですよ。山羊座の既得権益に対してNOを言うのが蟹座。アメリカを危険に陥れるような人に対しては、ハサミを二つ持って振りかざす感じがあります。
トランプ的ないい意味での風エレメントの振る舞いとしては、人の話をどんどん吸収していく。自分の好き嫌いが大いにあっても、とりあえず様々な外交の中で話を聞く。自分のわからないっていうものを外から取り込んでいく。そういう姿勢を持ちつつ、自分の太陽の未来像を作っていくのはまず一つ。
もう一つは蟹座的な振る舞い。自国ファースト(自分ファースト)をしっかりできないと、天秤座の風の時代になったときにサバイバルできない。まずは自分を守るってことです。
時期をつかむ、引き寄せとは
nico: 最後に、アメリカ大統領選でカマラ・ハリス氏と争ったときの投票日のチャート、そして2025年の1月20日、大統領就任式のチャートです。素晴らしいチャートですね。
時間が分かっているチャートなので、軸をみると本当にパンチがありますよ。就任式のチャートも軸でバチッと出てます。
だから、これからトランプ流に、物事に勝つときにはこの戦法でいく、そして勝った暁にはこういう自己像を作っていく、この二段階で読んでもらえるといいなと思います。
ネイタルチャートの太陽にトランジットの木星と金星がかかっています。
木星は「勝ち馬に乗る」と言い、この時期に勝負できたこと自体、選ばれた人であるかもしれませんが、心理占星術的に彼の心象風景を読んでみましょう。
この人は、自分の勝利を1ミリも疑っていない。自信、自己信頼の強さはいろんなものを引き寄せますよね。虚勢張ってるのでもなく、本気で「俺は絶対勝つ」と信じている。
「引き寄せる」はどういうことか、自分を信じてなければ、他の誰も信じてくれないよ、を木星の一つの解釈として提供したい。
それと、冥王星。政治家や選挙で冥王星の話をよくします。よくエンロールする/巻き込むと言いますが、人と金を引っ張り込めるのか。自分にどれだけ自身があっても、人に投票してもらわなくてはいけないし、資金の協力など、他者の力を借りなくては勝てない。
それと同時に、ラストベルトの人々を巻き込んだ、冥王星の負の部分に対する共感力は最後やっぱり使えたんじゃないかなと思います。
だから、もしも何か大きな勝負に出るときには、冥王星とか木星は使える天体だっていう意識でちょっと考えてもらっていいですね。
そして就任式のチャートです。
彼にとっての代名詞・天王星がMCに、そしてもう一つの代名詞の上に火星。就任式で、トランプの存在感が発揮される様子はありそうです。
そしてさっきも言ったように、「トランプが意見を押し付けてるんじゃなく、俺たちの声を、彼が聞き届けてそれを実行に移すんだ」という感じですから、もうこのときはピークですよね。アメリカ人たちが何を言ってもらいたいのか、そのときの時代の空気を体現し、それで頂上に上り詰める感じだと思います。
トランプという人間が齢80才を直前に天王星・MCで大統領になる。ここで一つ個性化が起こり、トランプもアメリカも「自分たちの国」アメリカとしての個性を、きっと表現していくことになるんじゃないか。
これからの時代は、金星と天王星ですね。
金星の自分ファーストをイメージしながら、ただ内向きに閉じるのではなく、天王星的に外からいろいろなものを吸収しながら、自分の金星を宣伝していく。
または、ホンダや日産の統合にあった風エレメントの強化、そして蟹座のアセンダントの終わりとして、自分の胃袋にあった消化吸収ーー食わず嫌いや怖がるのではなく、しっかり噛んで血肉に変えていけるように。
この3ヶ月でもいいし、来年の1年でもいいし、2025年の生き方を考えてみてください。
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2024年冬至号
この記事では紹介しきれなかった、詳細な時期や具体的なアドバイスを是非、本編でご確認ください。きっと、今を生きるヒントが得られるはずです。
2024年の四季図読み
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