星宙百景 2024 水瓶座 ~古びた価値観や過去の成功体験を手放し、新しい「今」をつくる

心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。

出来事の当たる・当たらないではなく、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えした一遍です。

 太陽が水瓶座を運行する時期は、一年で最も寒い季節となる。それと同時に、この季節は太陽の明るさや輝きが増していくように感じる(実際、日照時間は確実に長くなっているわけだが)。次の季節の予感――さあ、ここからどうしていこうか、そんな未来意識がわきあがってくる、そのような季節である。
 
 が、しかし最近は、あらゆるものが高い。わかっていても、スーパーで会計をする際はいつも驚く。野菜が高い。フルーツなどは手が出ないほど高い。未曽有のガソリン高騰のニュースも流れる中、2024年に引き続き2025年も値上げラッシュが続くという。103万円の壁がどうした、財政はどこから出てくるんだ、やれ手取りを増やそう、もはや減税しかないだろうと様々な議論が聞こえてくるが、具体的に政策が実現していく様子はない。国民の生活は待ったなしなのにもかかわらずだ。

 こういう状態をコストプッシュインフレというらしい。コストプッシュインフレとは、原材料費や資源価格の上昇、人手不足による賃金高騰などが原因で発生するインフレーションのこと。

 2024年、夏の勉強会で話したことだが、12年前のアベノミクス、そのまた12年前の竹中モデルというように、12年ごとに繰り返される双子座木星は、政府の経済政策の見直しの時期に重なっている。2024年、日銀は、マイナス金利の見直しなど、段階的な正常化に向けて大きく政策を転換し、または2025年1月23日、24日の金融政策決定会合で追加利上げを実施する可能性が高まっている。

 2月4日に木星は順行へと向きを変え、そして6月10日には蟹座へと移動する。6月、7月と都議選、衆院選が待っている。おそらく7月以降、経済政策も大きく舵を切ることになるかもしれない。蟹座木星はイグザルテーションと天体の品位が高揚する。木星の移動を前に、自分自身の経済の在り方もしっかり見直しておきたい。

 

 では、水瓶座期のイングレスチャートを見てみよう。

2025年太陽・水瓶座のイングレスチャート

 チャートで最も強調されているのは、ASCルーラーの土星がカスプ上に乗っている3ハウスだろう。そこに6ハウスから双子座の木星が90度のアスペクトを形成している。また3ハウスの向かい側、9ハウスから天秤座の月が双子座の木星に対し、120度でコンタクトしている。

 占星術の構造から言うと、3ハウスー6ハウスー9ハウスは柔軟サイン的表現の場となる。これは冬至チャートの柔軟サインのグランドクロスと同じテーマを持っていると考えられる。 

 また、カルミネートしている月は天秤座。月は7ハウスを支配している。カルミネートとは、チャートの目指すべき方向であると考えると、これからの未来は、7ハウス・天秤座的な方向を目指すべきだと解釈できるだろう。

 柔軟サインのテーマ、7ハウス・天秤座的なテーマは、冬至図のテーマの繰り返しでもあることから、この2つのテーマをさらに深め、来るべき春分の時期に備える。それが、まさに今であることがわかる。

 では、この時期、どんなことを意識して過ごしたらいいのだろう。

 水瓶座期のビッグイベントと言えば、1月20日に行われたドナルド・トランプの大統領演説になるだろうが、それ以上にインパクトがあったのが、兵庫県の百条委の元メンバーだった竹内英明前県議が自死したというニュース、それに続く百条委の斎藤知事のパワハラ認定である。

 何が事実なのか、なぜこのように事態がこんがらがってしまったのか。世間が騒いでいるからと言って、多くの票を集めたからと言って、彼の身の潔白を示すことにはならないはずなのに、なぜこれほど時間がかかってしまったのだろう。聞き取りの時点であれだけ証拠が上がっていたにもかかわらずだ。一体、事実はどこへ行ったのか。

 これは柔軟サイン木星□土星のテーマが続いていると言ってもいいかもしれない。または、もしかしたら柔軟サインの王様である魚座・海王星時代の問題提起なのかもしれない。

 ブログでも何度も書いているポスト・トゥルース的な風潮をいよいよ見直す時なのではないかという話。

 そこでもう一度、ポスト・トゥルースという言葉を考えておきたい。

 ポスト・トゥルースとは、世論形成において、客観的な事実より、虚偽であっても個人の感情に訴えるものが強い影響力を持つとされる状況のこと。また事実を軽視する社会。事実か虚偽かが重要ではなく、虚偽であっても自分に好都合の情報ならそれで良いといった風潮が拡大している社会のこと。

 まさに客観的事実(双子座)よりも、個人の感情に訴えるものが強い影響力を持つ(魚座)という社会の風潮を示していると言えるのではないだろうか。

 水瓶座のイングレスチャートでは、木星□土星に対し、イグザルテーションの魚座の金星がコンタクトしている。これは何を意味しているのだろう。うまくいけば、つまり「斎藤知事のパワハラ認定」のような流れをつくる力となるかもしれない。

 事実認識を進め、相互の理解を深め、より正しい真実に近づいていくための努力をしていこうという流れ。そのように物事が進んでいくということはないだろうか。

 そのためには、事実から目を背けず、感情に流されず、自問自答を繰り返すしかないのではないか。

 しかし、世界は待ったナシなのだ。そんなに悠長なことも言ってられないかもしれない。そのような声が聞こえてきそうだ。トランプの就任演説「掘って掘って掘りまくれ」とか「今日から、性別は男性と女性の二つのみ」といった大げさな言葉を聞いて、これは面倒なことになるぞと思ったりする。でも、本当にそうなのだろうか。

米国大統領、ドナルド・トランプ氏の出生図
トランプ氏の出生図に、大統領就任式のタイミングを重ねた三重円。「われわれは明白な運命を追い求める。米国人宇宙飛行士を打ち上げ、火星に星条旗を立てる」。ドナルド・トランプ米大統領は1月20日の就任式でこう宣言した。まさにトランジットの火星が未来の目的を打ち立てているのがわかる。


 トランプ大統領は演説の中で「常識の革命」と言っていたが、わたしには彼のどの言葉を聞いても、古き良きアメリカに戻りたいという懐古主義の欲求こそあれど、彼の政策から「革命」という要素を感じることは全くなかった。「あっと驚くことをしてやるぞ」という勢いづいた言葉とは裏腹に、DEI(Diversity Equity&Inclusion=多様性・公平性・包括性)批判などは、まさにバックラッシュというか、19世紀、20世紀への揺れ戻しでしかなく、それがもしかしたら日本で言う団塊世代あたりの、つまりトランプ世代の欲望をかき立てているだけにすぎないのではないか、そんなことも思った。

 これが今の時代のトレンドなのだろうか。アメリカの心の叫びなのだろうか。失われた価値を再創造しようとする流れがこれからの主流となるのだろうか。実際、オリンピック選手のジェンダー問題、男女共有のトイレ問題等、行き過ぎた、または迷走した施策も多く見られた。だからこそ、これからだったはずなのだ。 

 トランプ氏は、「米国の黄金時代」の実現へ! と言っているが、さっそく「出生地主義」大幅制限の大統領令が提訴されるなど、政策実行には相当高いハードルが待ち受けているはずだ。世界各国の指導者からの厳しい抵抗も予想されるし、実際、中国はアメリカの関税など屁でもないという。

 または、大統領就任式にテスラのイーロン・マスク、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、メタのマーク・ザッカーバーグ、OpenAIのサム・アルトマン、アップルのティム・クックなど、テック系のCEOたちが出席したというニュースを見るにつれ、オーストラリアのスマホ禁止やヨーロッパのAI規制強化に対し、いかにトランプ政権と共闘して乗り切ろうか、という思惑が見て取れる。

 これも冬至図の際にお伝えした日産・ホンダ・三菱自、経営統合の話と同じテーマだと考えられるだろう。


 「共闘」、これは2025年のテーマになるかもしれない。

 しかし、そのための代償は支払わなくてはならない。日産は、経営の立て直しに向けて、全従業員の約7%にあたる9千人の削減や、世界生産能力を2割減らす計画を既に発表しているし、反トランプ派だったマーク・ザッカーバーグもトランプ政権に巨額の献金をしている。生き残るための戦略とは言え、苦い要求も受け入れていかなくてはならない。

 だが、時代を動かすカードを持っているトランプから学ぶところもあるかもしれない。まず一つ目は、彼の火星が示す通り、5番目のサイン獅子座の抑止力である。

 たとえば、彼のこういった言葉。
 「タリフ(関税)、それは最も美しい言葉だ」
 「それはラブ(愛)よりも美しい言葉だと思う」

 「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、第一期トランプ政権の際、各国への関税を上げることで経済的圧力をかけ、通商交渉を優位に進めたという実績がある。今回も、大統領就任前から言葉による牽制があり、各国はそれによって振り回されているわけだから、彼の放つ言葉にはそれなりの抑止力があることは間違いない。

 演説でも彼はこのようなことを言っていた。

 これ以上自分たちが利用されることを許されない

 英語では「take advantage of」という言葉を使っていたが、もう少し大げさに言うと、「これ以上たかられるのはごめんだ」となるだろうか。

 講座で不動サインの説明をする際、このような言い方をすることがある。

 「不動サインの欲求の背景には、自分の価値が無駄になるのが気に食わない。価値を最大限高めることができないとやる気がしなくなるという合理性が働いている」 

 彼の強い火星は、パリ協定や武器提供など、アメリカの価値を目減りさせるものには「NO!」を突き付けているのだ。

 ある意味、上記の彼の言葉は、すぐにでも真似できる。

 自分があるものに対し、どれだけ思い入れがあるのか、どれだけ本気で臨もうとしているのか、それを表現すればいいだけのことだ。

 石破首相には、トランプとの会談の際、ぜひ日本製鉄の件しかり、日本に対する関税、また日米安保しかり、獅子座の抑止の力で挑んでもらいたい。

 水瓶座イングレスチャートを見てみると、5ハウスのカスプのルーラーはイグザルテーションの魚座金星。5ハウス的な行動は、何かしらの力になる可能性を見て取れる。

 わたしたちも、自分なりの獅子座・5ハウス的な行動――「わたしこれをやります!」「わたしにとってこれがもっとも大事なのです!」など――で抑止力をつけておくことはやってみてもいいかもしれない。

 もう一つ、トランプから学ぶことがあるとしたら、「失敗から学ぶ」ということだろうか。安倍首相もそうだったが、再選した後の権力行使のうまさは目を見張るべきものがある。トランプの前回の失敗――人事の失敗を早い段階で修復している。第2次政権は、トランプに忠誠心を示すもので脇を固めている。

 「ただでは転ばない」という姿勢は、その後の彼らのレジェンドにつながっていくのだろう。転び方にはよるが、失敗からしか学べないものは多いということだ。

 ということで、未来に向けての動きが強まっている。

 けれど、焦る必要はない。火星はまだしばらく逆行しているし、自分の納得いく答えにたどり着くまで思索を続けたほうがうまくいくはずだ。

 水瓶座は本来、裸の王様に向けて真実を告げる役割だったはずなのだ。

 世界にはびこり始めている富や権力に対するあからさまな欲望、これはいったい何だ? 金があればそんなに偉いのか? フォロワー数や再生数が多いだけで、そんなに優位に立てるのか? 人としての思いやりや真実を求める義務の姿勢はどこへ行った? 金と力があれば何でも思い通りにできるのだという時代錯誤的なふるまいを見直す時期にも来ているのではないか?

 威圧、虚勢、見せびらかしではない真の獅子座・5ハウスを求めていくこと。そこから見えてきた自己の在り方と真摯に向き合い、思索を続け、是正や改善を加えていく真の水瓶座・11ハウス的な努力を続けていくことがイングレスチャートが表示していることかもしれない。

 1月21日、米国野球殿堂入りが発表されたイチローは会見の中でこのように言っている。

 殿堂入りは「今やっていることへの称賛ではなく、過去への称賛なので、あくまでも今をどう生きるかということを僕は考えていきたいと思います」 

 イチローは天秤座太陽の持ち主だ。 

 このような言葉を受けて、では水瓶座期をどのように生きようか。

 古びた価値観や過去の成功体験を手放し、自分なりの工夫で新しい「今」をつくり出していく。その中で、関わり合う人それぞれの価値同士を利用し、共闘していく。わたし自身、そんな水瓶座期を過ごしてみようと思っている。

 水瓶座期に目線を高く上げておかないと、次の魚座期で低きに流れそうな、そんな予感もあるからだ。



📺見逃し動画(有料)はこちらから
12月24日に開催された「月イチ勉強会」では、当記事で紹介した冬至図のリーディングに加え、トランプ氏の出生図と大統領就任式の三重円を180分かけて丁寧に解説。
時代のアイコンともなっているトランプ氏のチャートからは、これからの時代に求められる感性が「これでもか!」というほど詰まっており、象徴の勉強には恰好の材料ともいえるものでした。地上の現実と天空のつながりをどう考えるのか、そんな勉強を深めたい方には是非ご覧ください。

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