
心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
今月の星宙予報は、三ヶ月に一度の特別号。
去る3/25(火)に行われた月イチ勉強会での春分図リーディングの様子をお届けします。
出来事の当たる・当たらないではなく、考え方のヒント、考えをめぐらすことの重要性などとともに、占星術で時期をよむことの面白さ―――人、国、時代に起こった出来事を私事にするための道具―――をお伝えします。
春分図が語る「まだ出発はできない」
2025年3月。
春分は、占星術における一年の始まりであり、本来なら新たなスタートにふさわしい「牡羊座0度」のフレッシュなエネルギーに満ちるはず。ですが、今回の春分図は少し様子が違っています。

nico が注目したのは3つのポイント。占星術的にもユニークな視点であり、十分な解説が行われました。ひとつずつ見ていきましょう!
🖋 2024年に続いた蟹座のアセンダントは、未解決の問題を解消すること、自分のサイズを確認し、それに見合う官業づくりをすることを掲げた一年だった。2025年は蟹座から天秤座のアセンダントへ移行。しかし、思ったようにスタートが切れないのはなぜか。その理由は…牡羊座期の月相にあるかもしれない
🖋 2年ごとに起こる金星の逆行運動。火エレメントである牡羊座から水エレメントである魚座へと戻る動きは、春分以降の国や企業/個人の動きに停滞を与える原因になるのではないか。生き抜くためのカード=価値の見直しと共に、未来のビジョンをどう描き直すのかを考える時期になるかもしれない
🖋 長期政権を保持する力、その背景にはたらく風と火のエネルギー:天秤座のネタニヤフとプーチンに学ぶ
なぜ「未解決の問題」に引き戻されるのか
2024年、日本は一年にわたり蟹座のアセンダントが示す課題を抱えてきました。自民党の裏金問題やフジテレビ問題に代表されるように、長年、見て見ぬふりをし放置してきた問題を解消しなければならない、そのような一年をわたしたちは過ごしてきました。
それらを解決したうえで、2025年からの流れ=天秤座のアセンダントを迎え、活動サインの動きに入るはずだった。でも、この春分図は、まだまだ前進できそうにない理由が隠されています。
それは春分図の裏に潜む「水のエレメント」の影響。
太陽の力を示す春分図に加え、太陽が牡羊座を運行している時期の4つの月相――3/22の下弦、3/29の新月、4/5の上弦、そして4/13満月――のチャートを見ると、すべてのアセンダントが全て「水のサイン」で構成されるという非常に珍しい状態でした。

ハウスの意味とアセンダント(ASC)を読む理由
時間の分かるチャートは、ハウスが正確にわかる状態を示す。天空の形而上的な象徴の意味は、ハウスに落としたときにはじめて地上の物事として理解できると考えられている。
その中でのアセンダントとは、牡羊座・火星的なハウスであり、物事のスタート、生き残っていくためにどのような力を身につけるべきかという生存のための力のテーマが示されている。
この月相を見ると、去年一年間の蟹座的な解消が上手く進んでいない、まだ残されたものがあるように見えます。
過去の出来事や人間関係のわだかまりが整理されていないままでは、新たな挑戦や出発は困難です。今の時期は社会全体が“前進”ではなく、もう一度、“未解決の問題の整理と解消”を求められていることがわかります。
❓Question あなたにとって、まだ「解消されていないままのこと」は何でしょうか。それは誰との、またはどんな関係性の間に生じ、どんな解決の手段があるでしょうか。
金星の逆行が意味するもの
アセンダントが重要であることを理解したうえで、あらためてチャートを見てみましょう。

アセンダントは天秤座。その支配星(ルーラー)である金星が逆行し、牡羊座から魚座に戻ろうとしている。この動きは、占星術的には非常に重要です。魚座から牡羊座の間には、いわゆる終わりから始まりという大きな切替がある、仕切り直しがあるわけです。
(12サインは)牡羊座からスタートして魚座で終わるはずなのに、この状態は次のスタートがはじまらず、また魚座に戻る。ここでも水のエレメントに引き戻される状態であり、同じテーマが繰り返されているのが分かると思います。
ここで、違う角度から金星の動きを考えるためにエッセンシャルディグニティで追いかけてみると興味深い事実が分かります。
エッセンシャルディグニティ
古典占星術の考え方のひとつで、天体は配置されるサインにより力が変わるとされ、品位と点数で表したもの。金星の場合は、
魚座で、エグザルテーション(+4点)
牡羊座で、デトリメント(-5点)
牡牛座で、ルーラー(+5点)となっている。
先月の星宙予報・おさらい編にも詳述したとおり、この金星が牡羊座で逆行を開始しようとしていたときに、トランプ&ゼレンスキー会談があり、「あなたはカードをもっていない」という言葉が発せられた。これこそが今回の金星逆行が示すテーマでもあります。
前述の記事にあるように、以下のような心の動きは誰にでも起こっているはずなのです。
金星は魚座でイグザルテーション(+4点)し、牡羊座でデトリメント(-5点)になる。この解釈としては、たとえば金星は魚座で、「わたし、けっこうイケてるんじゃない?」「けっこうやれるんじゃない?」といった根拠なき自信に満ちあふれ、意気揚々とするものの、牡羊座で厳しい現実を突きつけられて、「あれ? わたし、ぜんぜんダメじゃん」となる、そのようなイメージです。
恐らくあらゆる国のリーダーたちが、金星逆行と同時に自国のカードについて考えさせられているはずです。もしかすると、アメリカ自体も産業の空洞化が進み、実のところ大したカードをもっていないのかもしれない。軍備においては中国やロシアの方が上回っているのではないかという話もある。戦争を24時間以内に終わらせるといったトランプは、ロシアやイスラエルに対して、切れるカードが既にないかもしれない。アメリカ国内の経済も揺れに揺れている。
日本も外交だけではなくあらゆる面においても、切り札となるようなものがまったく持っていない中で、これからどうするのか。25%の関税をかけられたら、どう対応していくのか。こういったことは、この期間の重要な問いかけになってくるでしょう。
この問いに対しては、魚座金星の魚座がなぜ品位が高いのか。そこからヒントを得てみたいと思います。
魚座の海王星、14年かけてもたらした共同幻想の終焉
金星は、牡牛座と天秤座のルーラーであり、品位が高いとされていますが、伝統的な占星術においては、古くから魚座の金星は力のある配置と言われていました。魚座の金星の方が象徴的にエグザルテーション的な意味合いを持っていたのです。海から誕生するヴィーナスの象徴であり、キラキラとした衣を裸体に身につけ人々を魅了していく。それが魚座の金星に元々与えられた象徴です。
では、その「幻想する、魅了する」というイグザルテーションの魚座の金星としての意味合いで今回の逆行を考えた場合、何が見えてくるのでしょうか。
また、魚座と親和性のある天体、海王星の動きも見逃せません。占星術業界ではすでに話題になっていますが、3/30に海王星が魚座から牡羊座へと移動します。海王星はひとつのサインを14年かけて移動するわけですから、この移動は2011年ぶりになります。しかし、牡羊座へと移動した海王星は7/5に逆行を開始し、10/22に再び魚座に戻ってきます。今の金星と同じ動きを見せるということ。牡羊座から魚座へ、そして再び牡羊座へといった金星の動きを再び体験することになるのです。
では、魚座海王星は、どのような時代をわたしたちにもたらしたのでしょうか。
魚座海王星が14年をかけてわたしたちにもたらしたもの――それは、吉本隆明の言葉を借りれば、まさに「共同幻想」の崩壊だったのではないか。人を幸せにすると信じて疑わなかった民主主義やグローバル経済の幻想も今や跡形もなく、AIやSNSも、はたまたLGBTQや環境運動も、それによって世界が豊かになると思いきや、決してそうはなっていない。これらはすべて共同幻想だったのではないか。
日本にとっての14年間の共同幻想とはなんだったのか。安倍政権がもたらしたアベノミクスか、はたまた「価値観外交」か。価値観外交とは、基本的人権や民主主義、法の支配など、価値を共有する国々と外交していく。それは、欧米をはじめとする友好的に価値が共有できる国と積極的に手を組み、中国ロシアのような政治や経済の体制が異なる国とは反発していくスタイルです。
その安倍政権からの外交が脈々と続いてきたものの、ここに来て、政治や経済をはじめとした世界の価値観が一気に変化している。つまり、金星の象徴である「価値」が崩れてしまった。
わたし自身、いつか女性の地位が向上し、女性が生きやすい時代がやって来るという幻想を抱いていたわけですが、トランプが当選してから、すっかりマッチョな時代になってしまった感がある。結局、これもただの共同幻想だったのかもしれない。
こうなってほしかった、という幻想がそれぞれの立場において失われていく、そのような事態が起こっているのではないでしょうか。
ですから、魚座の海王星は共同幻想が崩れた、夢から覚めることを教えてくれる。結局、ギリシャ神話でも、魚座の金星ヴィーナスも現実を突きつけられることになる。美女コンテストで、ビーナスは自分への票獲得のために必死に画策するけれど、それは実を結ばなかった。
「思った通りにはいかないではないか!」
いま、この感覚が、どれぐらい実感として伴っているか。そして、共同幻想だったという物事に対して、夢物語にしないために、この先、新たにどんなビジョンが描けるのか。
もう皆さんも夢から覚めているはずなんです。現実の厳しさを突き付けられているはずで、それが牡羊座の象徴なんです。
ここで、金星の逆行と海王星の動きについて、具体的な日程を元にしたアクションが提案されました。2025年の計画を考えるうえでも参考にしてほしい内容です!
→ 詳しくは見逃し動画(有料)でご覧ください。
天秤座的な価値、新しいカードをどう作るか
(金星にとって)もう一つ重要な牡牛座がインターセプトになっていることにも注目です。

インターセプト
ハウスの中にひとつのサインがすっぽりと入ってしまい閉じ込められている状態を指し、上手く機能しないとされる。
この8ハウスの牡牛座がインターセプトになっている状態は、アセンダントの天秤座とあわせて、金星が上手く機能しないということが分かると思います。
8ハウスの意味はいろいろありますが、ひとつは財政。それが埋もれてしまっているというのは、いま見直しされている高額療養費制度や防衛費など、いろいろな財源確保ができないという話かもしれない。
または、日米安保そのものともいえる。もう他人、他国に依存しているだけではなく、独自の価値(カード)をどこかで創り上げないとまずい。いつまでも価値観外交とアメリカ一択でいいのか、そういう話にもなるでしょう。
8ハウス的には、「頼れると思った価値、依存できていた価値は、もうそこにはないよ」。だから、もう一度、牡羊座的に自分たちのできる範囲で安全保障や外交、経済を考えていく。
重要なのは、この一年間のテーマであるアセンダントの天秤座を考えたときには、議論してとにかく選択肢を増やしておくこと。金星の行ったり来たりの動きを踏まえても、もう一度、自分の価値を見直して、復活させ、選択肢を増やすことは大事になっていく。もう自分の国は、わたしの未来は「これしかない」のではなく、これもある、あれもある。そういう価値、カードの作り方をできるといいのではないかと思います。
さらに火星の動きも加えて、詳細なスケジューリングと時期の目安をお伝えし、家庭や仕事でバッチリ応用できるヒントもお伝えしています!
→ 詳しくは動画でご覧ください
天秤座を支える力を読み解く、長期政権のプーチン&ネタニヤフのチャート分析
ここから天秤座のリーダーふたりを取り上げ、難しい状況下で長期政権――選挙が機能していない状況下では正しくない表現かもしれませんが――を維持するエネルギーについて考察します。
かつて東京都知事として、13年半もの都政を担った石原慎太郎氏も天秤座ですが、今回はプーチン大統領とネタニヤフ首相を中心に見ていきます。
ここでは、いわゆるホロスコープを利用せず、データ表のみで解読します。まずは5天体がヒントになるんです。
こういう難しい時代の中で、長期政権を維持できるのは、やはり天秤座の風エレメントだけではなく、火のエレメントもうまく利用しているんじゃないか。

風を発生させる原理を踏まえると、熱(火)が必要になってくる。自分の既知の世界(風)を未知の世界(火)と一緒に動かしていくことができる、その原動力を使って風が起こっていく。
風エレメントは、いろんな人の意見を聞きながら、そのときの状況を見ながらという日和見になりやすいイメージがあるかもしれない。そうではなく、自分の中にあるこういうものを大切にしたいという強い信念や情熱が彼らを支えているんじゃないか。
両者ともに非常に強い宗教観を持っていることも影響していると思いますが、心折れることなく維持しようとしている理由としては、信じているものに突き動かされていく。
つまり皆さんが、これから一年をかけて天秤座の何を意識したらいいのかを考えるときには、もっと未知の世界に向かっていきたいという情熱やビジョンを持つのは、とても必要なことになっていくでしょう。
だから、金星や海王星が逆行して魚座に戻るときには、もう一度自分の奥深いところにあるビジョンを冷静沈着に取り戻していこう。そういう静けさとともに、火の性質としてそれを駆り立てていくと良いのではないか。
火のしっかりとした熱量みたいなものものがあると、ずっと動きが絶え間なく風が大きくなり続けていける力になるのではないかと思います。
天秤座過多! なのに金星が不安定な状態とは
アスペクトのところで考えたいのは、天秤座と金星です。プーチンは、太陽・水星、ネタニヤフは太陽・月・水星が天秤座であり、その支配星は金星です。
天秤座にとって金星が重要なのにも関わらず、ふたりとも自分の金星に何か不安を抱えてる部分があるぞと。職業占星術的には、マイナーアスペクトは、成長の初期に抑圧的なものがあったと読んでいきます。
ネタニヤフ首相のもっている太陽と金星の45度は、けして珍しい組み合わせではないですけど、内的な世界観としては、自分自身の金星に不安を抱えやすい部分があります。金星は自分の持ち物――自分自身の能力とか魅力、自己存在の価値に疑いを持ってしまう、堂々とオープンにできない感じがあったり、何かコンプレックスを感じてしまう。それらが、この金星土星のスクエア、太陽金星のセミスクエアに出ている。

天秤座が強調されているにも関わらず、金星を不安に思ってることが一つ特徴的に出ているんじゃないか。
実際に、彼は父親の仕事の関係で幼い頃に渡米している。そこで自分が異文化で異分子であるような感覚を受けている。自分のそもそもの存在がイスラエルであれば感じなかったことを感じる機会が多かったのではないか、という意見もありました。
自分自身の価値観が通用しない、自分の価値観を受け入れてもらえない、わかってもらえない孤立した感じがあったり、すごく社交の難しさを感じたとか、いろんな形で自分の存在の価値にストレスがかかっていたんじゃないか。
一方でプーチンは、金星は45度のマイナーアスペクトのみです。

ここまでの流れで話をすると、やはり自分の存在の価値が常に不安定だったかもしれません。彼はどちらかというと労働者階級の出自なので、人に比べて自分が持っていないと感じることが多かったとか、様々な生い立ちも含めた自分の金星の不安っていうのを常に抱えてきたかもしれない。
ふたりとも、コンプレックスの出方は違っても、金星をポジティブに感じられているような配置ではないことが分かりました。そこで注目なのは「水星」です。
金星は、どうしても自分が元々持っているものという意識。一方で、水星というのは、後々、自分が外側から身につけることによってパワーに変えていける力です。ここも、やはり天秤座を生きる上で重要でしょう。
水星のコンタクトが非常に多いふたりは、きっと知識を身につけ、いろんな人の話を聞いて、とにかく情報に強く知識に強く、そして臨機応変な対応が柔軟にできる人でしょう。いろいろと切磋琢磨して、水星を鍛えてあげていったなという様子は何となくわかります。
ここで大事なのは、私たちがこの一年、天秤座で生きようとしたときに間違いなくこの水星力は必要になってくる。そして、もっと大事なのは金星に不安があること。
わたしは、風のエレメントの最も素晴らしい美点がここだと思っているんです。マイナスの意味じゃなくて、自分自身は何にもないという感覚があり、人から奪い取ればいい。もちろん彼らがやると恐怖ですが、ちょっと考えてみたい。
地エレメントは、自分の中にある感性を使って生きていく。風のエレメントは、そういう感覚はない方がうまくいく。「自分には何もない、だから教えてよ」というように、何もない、よく分からない、知らないからこそ、たくさんのものをいつも新鮮に取り込んで、そして外に向かっていくことでフレッシュな風が起きていく。
自分の金星を手放して新しいものを取り込んでいこう、そういう風の感覚があるのはすごくいいなと思います。水星のアンテナを張り巡らせ、自分の持っているものに固執せず、人の持ってるものを奪いにいく。
この小アルカナのソードの7のカードは、人からソード(風)を盗む、つまり情報を人から盗む、知識を人から盗むイメージかもしれない。

皆さんが天秤座的な、風の時代を生きるときには、何か自分の情熱を燃やす火のエッセンスを持つことが大事だとわかった。それは、誰かに与えてもらえるよりも自分の中にある「これは大切にしたい」というものを持つこと。
水星の力は、風のエレメントの土台であることは間違いない。
この一年間は、あるものに甘んじる時代ではなさそうです。これもある、あれもある、と満足したら、多分動きが止まってしまう。
その動きを止めずにずっと動かし続けていくための「風の原動力」は、なんでしょう。それは、学び続けることかもしれません。自分には「ない」と感じたときこそ、自分の水星を発動させて、外に向かって取りに行く。
金星の逆行、そしてデトリメントの状態は6月まで続きます。本当に、夢から目を目を覚まして、現実を生きていきましょう。
📺見逃し動画を配信中(有料)
2025春分号
この記事では紹介しきれなかった、詳細な時期や具体的なアドバイスを是非、本編でご確認ください。きっと、今を生きるヒントが得られるはずです。
2024年の四季図読み
過去のアーカイブ動画