nicoの星宙予報2019 牡羊座

 牡羊座の時期は太陽の力が強まる。

 エッセンシャルディグニティを考えても、牡羊座の太陽はイグザルテーション(+4点)であり、トリプリシティ(+3点)となっている。太陽の力が強いということは、意識が未来へと向き、動きが前へと進み始めるということだが、今年の春分図は少し勝手が違う。

 以下の春分図を見てもらうとわかるだろう。

 

 

 動きが活発になるはずの太陽は12ハウスの中にとどまり、新しいスタートを拒んでいるようにも見える。意識としては、前に進んでいきたい。けれど未解決な問題のせいで、または理想と現実とのはざまの中で、どこに向かって、どう進むべきか、考えあぐねて立ち往生しているようなチャートになっている。

 

 牡羊座太陽の前進をサポートするはずの支配星の火星は牡牛座に入室(エッセンシャルディグニティでは、-5点のデトリメント)し、精神ではなく感覚を頼りに進んでいくことを余儀なくされている。つまり、牡羊座期に必要な「根拠なき直感」は影を潜め、そのかわり「経験=実感を土台とした選択」、つまり既に知っているやり方をもとに未来を創っていく必要があるかもしれない。牡牛座・火星、乙女座・月、山羊座・冥王星でできたグランドトラインもその意味を増長させるだろう。

 

 または、その選択に判断材料を与えるべき水星も、エッセンシャルディグニティでは-5点のデトリメントとなり、そして逆行(-5点)しており、海王星とともに12ハウスに入室している。これはつまり、未来というよりは過去にとどまり、新しい季節を生きるためにはまだまだやり残したことがあることを私たちに伝えようとしている。

 過去15年で最も春分に近い満月、そんなことも関係しているのかもしれない。心を振り返り、自分をみつめなおす必要性を迫っている。

 

 春分のチャートは、1/1の火星の牡羊座イングレスチャートとよく似ている。環境(ASC)は新しい始まりを要求しているのだけれど、実際の動きはまだ過去にとらわれているのがわかる。

 

 反対に、射手座・木星、山羊座・土星は正しい位置で、今か今かとその出番や役割を待っているようである。春分図の太陽、火星イングレスチャートの火星は、スタートラインに立つ前の心の調整段階にあり、社会天体は強い力のもとでその威力を発揮している。二つのチャートは、そんなちぐはぐな現象となっているのだ。

 

 これらの表示は、私たちにどのようなことを教えてくれているのだろうか。

 

 まずは、まだまだ私たちには片づけなければならないことが残っているということだ。

 スタートラインに立ち、新しい世界に向かっていくための決断。とらわれた感情なり、自分をとりまく人々の想いなり、弱さへの言い訳なり、昔の成功体験や心地よい記憶なりを本気で手放し、その一歩を踏み出していくことに目覚めなければならないということだ。

 

 国で言ったら、拉致問題、慰安婦問題、領土問題といった近隣国との長く続く論争などがそれにあたるだろう。これまでの成功体験も関係者の想いももう一度見直し、新しい時代に向けて動き始めるための議論をここでやっておくべきなのではないだろうか。

 

 企業などもそうだ。新しい時代が来る、そのための戦略が必要だといいながら、皆が横並びで周囲の様子をうかがっている。〇〇ビジネスがいい、〇〇的手法がくるなど、結局、誰かの何かのやり方にとらわれて、自分たちの新しいスタイルを見つけることが難しくなっている。

 これは、チャートに示された個人天体の不安な状態と社会天体のパワフルな配置のコントラストにも表れているかもしれない。国の、企業の、個人のもともとの「あり方」ではなく、形ばかりの「成功」を求めようとすれば、このちぐはぐな状態はどんどん広がっていくだろう。

 自分たちの在り方ではなく、誰かの影響が強く反映されれば、私たちはまだ迷走し、ゆく道を見失ってしまうということになる。

 

 平成の時代がそうであったのではないか? バブルに浮かれた後の始末をし続け、尖閣諸島で中国漁船に攻撃されて初めて事の大きさに気づき、311の原発事故の問題を押し付け合い、結局正しい道を見つけられないまま、新しい時代に移ろうとしている。

 

 約200年ぶりの天皇の生前譲位。

 今上天皇のこの決断を一つのきっかけとして、新しい意識とともに新しい「あり方」を見つけていくときがきた。その在り方をどこかの誰かの刺激によってつくられてしまったら、おそらくこれからの時代は生き残っていけないだろう。

 

 まずこの春分の時期の3か月間は、古き良き夢を手放すことから始めることだ。アベノミクスも安定した外交も今後も期待できるとは思えない。

 個人も企業の在り方もそうだ。

 意識を刷新することだ。

 身体を整えるのもいいだろう、お金に向き合うのも大事だろう。

 けれど地エレメントに意識を向けすぎて、視野が狭まる前に、もう一度「私たちはなぜ生きるのか」をという問いを自分たちに向けていくことが必要なのではないだろうか。

 

 その仕事は何のためなのか?

 その活動は何のためなのか?

 その関係性は何のためなのか?

 本当に自分のスピリットはYESと言っているのだろうか?

 

 目的を明確にし、これから歩くべき道の方向を確認した後、そのために必要なチャレンジを自分たちに課していく。

 自分のサイズ、スタイルを見積もる前に、もう一度、「なぜ?」「何のため?」と問いかけてみること。

 そうすれば、おのずと新しい扉は開けていくだろう。