先月に続き、毎日たくさんの鑑定をしていて感じたことがある。
長年、時期読み(トランジットチャート読み)を行ってきたが、今期の夏至図ほど集合意識というか集合的無意識というかを感じたチャートはないというくらい、皆が皆、夏至図の象徴をそれなりに経験しているように思うことが多かった。なぜだろうか。なぜこれほど象徴がわかりやすく出たのだろうか。
前回も紹介した夏至図のチャートをおさらいしてみよう。
春分図(3/20~6/20)に続いて、夏至図(6/21~9/21)も蟹座のASC。これを見る限り、引き続き、コロナ問題で活動が制限されること、自分の安全の領域にとどまりやすいことが予測できた。または、その解釈を広げると、水害、地震などを含めた安心が脅かされる出来事に対し、どう環境を整えていくか、暮らしや住まいをどう守るかということもテーマとして浮かび上がるだろうというのが夏至図の解釈であった。
それを個人のテーマで考えた場合、春分から引き続き、多くの人がこぞって生活習慣(衣食住)の見直しを図り、断捨離や身体づくりなどに勤しんだり、ライフスタイルの見直しとして、働き方を再考したりという流れが続いていた。
違和感のあるものを取り除きたい。そして、“わたし”にしっくりくるスタイルをつくりたい。
これが蟹座から始まる夏至の基本的なテーマだった。
なぜ、これほど多くの人が同じテーマを共有することになったのか。
これは、どれだけの人たちが、これまで人や社会にエネルギーを消費し、自分の生活を顧みてこなかったのかということだ。強制的に自粛させられることによって、もしかしたら多くの人たちは、生まれて初めてといってもいいくらい、人ではなく自分、公的ではなく私的生活に目が向いたのかもしれない。人から、社会から離れてみて、その心地よさ、気軽さに気づいた人も多いだろう。食事を手作りし、部屋を整え、睡眠をむさぼる。そんなことができていなかったということに、自ら驚いた人も多かったはずだ。
もうひとつ、今期の夏至図は日食と重なっていたこともあり、前回の記事では、太陽存在の脅かし——リーダーの不在、意思決定のもろさ、未来ビジョンの浅はかさなど——について、お伝えした。
それらが今、様々な機関やプロジェクトの混乱に発展していることが見てとれる。
まったく誰の得になるのだろうか、日経ビジネスのタイトルを借りれば、進むも地獄、退くも地獄の「Go Toトラベルキャンペーン」。経産省・電通・パソナの“三密”のきな臭さに、これが悪名高き12ハウス(海王星90度)なのか!と心理占星術的解釈を放り出したくなったり、竹中平蔵(魚座)の煙に巻く作戦にイライラしたり。
夏至図の期間は、こうした陰謀説&混乱が続くのだろうが、私たちは、獅子座期を迎えた。そろそろ水(蟹座)から地上に上がる時(獅子座)が来たことに気づかなければならない時期が来た。
いつまでも、岩陰で休んでいるわけにもいかない。確かにコロナ感染者は日に日に増え、外出自粛の要請はあるものの、獅子座期らしい動きを始めていく必要があるだろう。
では、獅子座期とはそもそも何をすべき時なのだろうか。雑誌 Forbes8-9月号のテーマは「新しいビジョン入門——みんなでこれからの理想を話そう」、表紙は台湾のデジタル担当政策委員オードリー・タンである。まさに、獅子座期に語るのにふさわしいテーマなのではないだろうか?
コロナウィルスや自然災害、経済不安を恐れているだけでは、この先、生き残っていけない。問題点を指摘し合い、できていないことを突っつきあう、実際、それだけでは、もう立ち行かなくなっているのではないだろうか。今こそ、ひとりひとりがビジョンを探し、描き、語り合う、そういうときに来ているのだ。
コロナ後の国/企業/個人を考えるうえでの大事なビジョンとは何だろうか。
下のチャートは、獅子座イングレスチャート、力強い獅子座の太陽は7ハウスに位置している。また、このチャートにおいて、一番力を持っている牡羊座火星は3ハウス入室。3ハウス、7ハウスとも、風のエレメントが支配する。そこで、今期の獅子座期のビジョンに、風エレメント的テーマ——めぐりをよくするライフスタイルというのを考えてみるのはどうだろう。
これからは、個人単位からはじまる“巡る経済”というのが重要になると言われている。人と人との価値の交流、仲間とのコラボレーション、できることを請け負い、できないことを依頼する。人と人、人と地域、人と全体をつなぐ関係性、そこから生まれる“巡る経済活動”を広げていくことが重要となるというものだ。
そこで、まず獅子座期は閉じた、狭い環境から意識を広げ、さまざまな関係をめぐりながら動きのある活動を考えてみることをしてみたい。
繰り返しになるが、コロナウィルスによって資本主義経済の頭打ちを目の当たりにし、どこかの、誰かの懐にとどまるだけの経済は、これからの国や企業の在り方を後退させることがわかってきた。コロナの自粛中に私たちが感じた生活や消費に対する考え方の変化——過度なつながり、過度な活動、過度な消費といった過剰さに気づき、「私にとって本当に必要なものは何か」という生活に対する価値が高まった。それが春分図から夏至図に示されたASCの蟹座のテーマである。
そこから、Do It Yourself 的な発想、「自分のできる範囲で」「自分でつくり出しながら」というテーマがやってきた。それを未来のライフスタイルとして発展できたとしたら、獅子座期のひとつの目標である、“自分らしい持続可能な未来”がビジョンとして見えてくるのではないだろうか。
占星術において、持続可能というと土星をイメージする人が多いかもしれないが、天体において、一秒間に430万トンの光エネルギーを放出し続ける太陽ほど“持続可能”というテーマにふさわしい天体はない。
そこで、獅子座期のもう一つのテーマとして、未来を支えるだけの持続可能なビジョンをしっかり育てることを改めてやっていきたい。ビジョンとは国/企業/個人の意思である。意思があれば、この先、どんな危機が及んでもブレずに持続させることができる。それは、自分以外の人が用意することはできない。
あなたは、「この先、どうなろうと、私はこうありたい」と思えるものを持っているだろうか。
ビジョンが明確ならば、危機にもおのずと強くなる。誰かの何かを基準にすることなく、“自分”の在り方を基準にすること。それがこの時期に明確にしておきたいことである。
ちなみに、前述のGo Toキャンペーンだが、国内旅行=3ハウスはインターセプトになっている。やる気はあっても表立った動きになっていかないとも読める。それでいいのではないか?
社会天体の木星、土星もいまだ逆行中だ。こういうときに何か正解を見つけようというのが間違っている。アイデアを出す、議論する、ビジョンを描く。そうして、自分たちにふさわしいスタイルや仕組みを少しずつ探していけばいい。
個人も同様に、決定事項ではなく、遊びを残しながら、まずは未来へと進んでいくことが大事な時期といえるだろう。