心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
心理占星術の生徒さんと共に、長らく赤ペン12サイン占いというのをやっているのだが、今回の原稿には、それぞれの言葉で牡牛座の季節を生き生きと描いてくれていて、読んでいてとても楽しかった。
hikariさんは、こんなふうに書いてくれている。
雪が消えた北国で毎春思うことがあります。「この道、実はこんなに広かったんだ」や「この窓から空ってこんなに見えたんだ」とか。雪のない地域の人にはちょっと想像がむずかしいですよね。そうですねぇ、道や庭や窓からの景色といった身近な世界が半分ほど物理的に視野を狭められているような…とでも申しましょうか。いささか窮屈な暮らしを強いられるのです。この窮屈さによって自分のまわりには「これがあったんだ」と感じることに私自身つながっています。
また、takeshiさんは、こんなことを。
新緑の季節の春の嵐は咲きかけの花や葉を落とし、滞った大気を一掃させる。春分から始まった新しい流れは水瓶座にとって様々な好奇心にさらされる時期だったかもしれない。あれこれと目新しい環境に身を置き、ともすれば情報の嵐にさらされ自分を見失う人もいるのでは。春の嵐が削ぎ落とすのは末節の枝葉で、深く広く根が張った幹はびくともしない。
どちらの表現も、不動サインの時期にふさわしい内容である。不動サインとは、春夏秋冬、それぞれの季節が極まる時期を担当している。たとえば獅子座なら盛夏、蠍座なら盛秋、水瓶座なら盛冬と呼ばれる季節がそれにあたる。だからつい、その季節らしさを表現したくなるのかもしれない。
盛春は、地エレメントの牡牛座が担当している。地エレメントとは、hikariさんが書いてくれているような「これがあったんだ」という所有の実感のときであり、また動かざること山のごとし、takeshiさんが書いてくれているような「深く広く根が張った幹」を創造するときでもある。
牡牛座期は、以上の2つのことを意識して過ごしてみるのがよさそうだ。
では、今月のイングレスチャートを見てみよう。
春分図から一転して、牡牛座期のイングレスチャートは半球の下側がかなり強調されており、月がアイソレートした状態になっている。
この配置を物語的に読んでみると、牡羊座期で国/企業/個人は意気揚々と理念やら理想やらを掲げてみたものの、そのマニフェストを支えるための内容物が揃っていないことに気づいて、これから慌てて足元固めに奔走するということになるだろうか。
大阪万博などはいい例だろう。開催まで一年を切ったが、3/28、整備工事中に起きた爆発事故の影響により、大阪の子どもたちを万博に無料で招待するという案に対し、大阪府の教職員組合が見直しを求める動きを起こしたという。「いのち輝く未来社会のデザイン」というキラキラキャッチコピーが掲げられても、土台となる安全面が不安視されているようでは、さすがに見直しが必要となるのは当然だ。
今回のチャートは、3ハウスが強調されている。
例えば、3/26、政府は英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を解禁する方針を閣議決定したという。
武器輸出抑制の安保政策を揺るがすものであるにもかかわらず、国民的な議論はまったくなされていない。坂本龍一が訴え続けた「非戦」ではないが、戦後日本は平和憲法のもと武器の輸出を厳しく自制してきたのではなかったか。
まったく、何もかも国民の声が届いていない。国民との対話が成り立っていない。
疑惑の真っただ中、政治資金規正法改正を前にしても、自民党は公明党との具体的な話し合いをなさないまま、うやむやにしようとしている。さすがにこの時期、3ハウスが強調するのもわかる。
他にもまだ議論されるべき案件は山ほどあるだろう。「共同親権」の導入などもこのテーマにあたるだろうか。ここから審議に入るというが、命に関わることだ。慎重に慎重を重ねて議論してほしい。
また今年の春は、「帰ってきた春闘」として、平均賃上げ率5%以上と33年ぶり高水準を勝ち取ったわけだが、経済学者の小峰隆夫は、「世間では賃上げが重要だというムードがとても強く、誰もが反対しない「一億総賃上げ」とも言うべき状況です。全員が同じことを言っているときは何かおかしいと考えるべきです」と言っている。
まさに、冒頭に引用したtakeshiさんのテキストにあるように、ノリやムードに惑わされず、揺るぎない根をしっかり張るほうが大事なような気がしてくる。実際、4月初めに発表された景気動向指数も二ヶ月連続で低下しているわけだし、賃上げムードにあおられて無駄な出費をさせられたり、淡い期待を抱いて、地から足が離れたりしたら意味がない。2024年の牡牛座期は、まさに3ハウス、4ハウス、ICの根を張るという象徴がもっとも強く表示されているのだ。
ということで、2024年牡牛座期は、牡羊座期に掲げたマニフェスト、または自分の中に広がったイメージの見直しから始めてみる必要がある。それは自分にとって安全に働くものなのか、戦闘機輸出のように、自分たちの本分、領分を犯すことにはならないのか、ちゃんと自分のもっとも近いところの決断を自分はできているのか。
もし不安なときは、十分な議論や熟考を重ねていく。必要な人たちと必要なだけ対話を続ける。または、自分に関わることは、自分自身も当事者として情報を獲得し、学び続けることもやっていかないといけない。必要とあれば言葉をぶつけ合うことがあってもいい。
今期の牡羊座期は、自分自身が決して傍観者にならないことだ。世界を自分の延長線にあるものととらえ、自分が関わっている活動に対し、自分事として自分なりに力を注ぎ、聞きなれない言葉にも耳を傾けることだ。
牡牛座期が終わる頃には、自分の足元が少し安定し、また何かしらの目標に向かって行けるかもしれない。
牡羊座期の星宙百景を受けて、もう一つだけ書いておくべきことがある。
4/28に岸田政権の行く末を大きく左右する衆院トリプル補欠選挙がある。二敗が確定した自民が、島根1区で議席を守れるかが最大の焦点なのだが、春分図読みの勉強会でも話した通り、半球の上半分が強調されているときは、いい意味でも悪い意味でも与党の動きが活発であり、そして半球の半分が強調されているときは、いい意味でも悪い意味でも野党の動きが活発である。ということは、4/28の補選の流れは野党に有意に働くと考えられるだろう。 島根は、自民と立憲民主の一騎打ちなので、流れは立憲民主の候補者にあると読むことができる。
MCルーラー(与党)の牡羊座金星はデトリメント(-5点)、一方、ICルーラー(野党)の魚座火星はトリプリシティ(+3点)ということで、圧倒的に野党優位ということになる。
しかし、レセプション関係(牡羊座から見たら火星はルーラー、魚座から見たら金星はイグザルテーション)で見た場合、この2天体はお互いにとって心地よいディグニティ関係にあることから、かなりの混戦になると予想できる。
その際、できれば立憲民主党には、打倒自民党の先の、その未来に賭けたいと思えるようなビジョンを見せてもらいたいと思う。そうすれば、もしかしたら6月末の衆議院解散後の選挙までに野党一致の政策を掲げることもできるかもしれない。
何はともあれ、これから訪れるであろう変化の風に吹かれないよう足元を固めておこう。今期の牡牛座期で見つけた「これがあったんだ」「深く広く根が張った幹」は、この一年の大事な支えになることだろう。