心理占星術家nicoによる「時期読み百景」。毎月、太陽がサイン移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を分析し、わたしたちの暮らしと天体の運行から「今」を読み解きます。
2023年魚座期は、ASC蟹座に加えて、8Hとなり水エレメント的なムードが高まり、環境の変化に大きくかかわる暗示。特にASC蟹座は、古く腐った水を新しい水に入れ替えるという意味もあり、自分の中に芽生えた違和感や衝動に目を向けるべきとき。
柔軟サインの時期は、新たな季節、次なる活動に向けた準備の時期でもあります。
来月の春分を前に、この一ヶ月、わたしたちが意識すべきことはどんなことなのでしょうか。
天体が風エレメントを通過する際は、何かと「不穏な空気」というのが漂う。これは火星サイクル手帳にも書いているし、ワークショップでもよく伝えている。この「不穏」を辞書で調べると「おだやかでないこと。状況が不安定で危機や危険をはらんでいること。また、そのさま」とある。また「風」というものも「動きそのもの」なわけだし、つい先日、関東地方では通年よりも二週間早く春一番が吹いたりと、「おだやかでない」感じは疑う余地もないだろう。
太陽・水瓶座期間にもっとも驚いたのは、ナワリヌイ氏の死亡を知らせるニュースだろうか。1/22に「プロシア内外100都市でナワリヌイ氏支援デモ」という記事を読んで、時代の変化を感じていた矢先のことだったので、おもわず「あっ、やられた」と声が出てしまった。毒殺未遂だけでは足りなかった。それほど彼の存在はクレムリンにとって脅威だったのだろう。生前、とある報道では「ナワリヌイを見逃せば弱腰とされ、捕えれば殉教者になりかねない」と言われていたが、まさにそのようになってしまった。
水瓶座的象徴としてプロメテウスの神話の話をすることがあるが、啓蒙とはまさに命がけであり、そして冥王星は言葉を持つ人の力を奪ってしまった。ここから残された者たちは再生へと向かえるのかどうか。氏はプーチンのことを「腐敗した泥棒」と呼んだが、プーチンは一ヶ月後の選挙を前に、ロシアの未来の可能性をまた奪ってしまった。2/17には、ロシア軍がウクライナ東部を制圧したということだ。ガザでは、イスラエル軍の侵攻によって、民間人が連日犠牲になっている。
こういったニュースを見る度に、一個人の存在のはかなさ、無力さに打ちひしがれる。どんなに努力したって、最後は力でねじ伏せられるのなら、無駄な抵抗などしないほうがいいのではないか。国や組織の下で大人しく暮らしていればいいではないか。そうやって口を閉ざさせる力を水瓶座冥王星は持っているのだろうか。権力からの圧に負けない意思の力を呼び起こすために?
あきらめかけたその時、「それでもなお」と思えるものを、私たちは「力」と呼ぶのかもしれない。太陽が水瓶座から抜ける直前にそのようなことを想った。
そこから、2024年魚座期について考えてみたい。
水瓶座の終わりに、日本GDP4位に転落、岸田内閣支持率最低というニュースが飛び込んできた。詳しくは、水瓶座期のおさらい編に譲るとして、岸田首相はここからどのような手を打ってくるのか。実際、解散もあり得そうなのが、今回のイングレスチャートだ。
まずASCは蟹座、支配星の月は12ハウス、魚座の太陽は9ハウス、水エレメントの強調は、環境の変化に大きくかかわる暗示と考えられる。特にASC蟹座は、古く腐った水を新しい水に入れ替えるという意味もあり、さすがに自民もいよいよ潮時ということになるだろう。
立憲民主党の泉代表は、4月の衆院3補欠選挙に合わせて岸田首相が衆院解散に踏み切る可能性を指摘しており、与野党ともに解散の準備に入るのではとささやかれ始めている。が、その野党にまったく勢いがない。維新の会も大阪万博の影響もあり、かつての勢いを失っている。
だが、そろそろ本気で水槽の水を入れ替える時期であることは明らかなのではないか。これから迎える春分以降、日本では「水槽の水を入れ替える」はひとつのキーワードになるだろう(これは春分図を見ればわかる)。
また、火星ワークショップ・蠍座編では、「水」とは「水を差す=横やりを入れる」という鋭い攻撃のような意味を持っている話もした。この元ネタは、去年足を運んだ東京都現代美術館の特集展示『横尾忠則 水のように』から着想を得ている。
横尾が兵庫県西脇市の加古川のそばで育ったことや、蟹座という水に関わりの深い生まれであることとどこかで繋がっているのかもしれません
担当学芸員の藤井亜紀氏による解説テキスト
水には「水をさす」というように、「間に入って円滑な交流(進行)のじゃまをするもの」という意味もあります
まさに!
また一方で、もしかしたらこちらのほうが通常の占星術らしい蟹座的象徴かもしれないが、蟹座には同質なものと異質なものの境界線を引くという意味もある。端的に言えば、同質のものと結びつき、異質なものを排除するという意味になる。
少子高齢化、人手不足に伴い、外国人労働者の受け入れの必要が叫ばれて久しい。厚生労働省は2023年10月時点で外国人労働者の数が200万人を超えたと発表し、政府は技能実習制度に代わる新たな仕組みとして「育成就労制度」を創設する方針を決定した。
そういった背景の中、最近、埼玉県川口市では住民とクルド人との間でトラブルが多発しているという。SNSではクルド人による暴動の映像が流れ、住民たちは口々に不安を言葉している。川口市長も「権限もおろさない、財源もおろさない、情報もおろさない、国が現場をわかっていない」と訴える。一方、工事現場では、「解体屋と呼ばれるクルド人がいなくなったら確実に現場は困る」と言う。
異次元の少子化対策と銘打って、保険料月額500円上乗せすることしか考えられない国が、これから移民政策やら、外国人労働者やらの問題をどう対処していくのだろうか。
同質なものと異質なものが共に手を取るためには、またお互いの安心を確保するためには、法やルールで合意形成を成さない限り、摩擦、齟齬、不安、不信は増えていく一方だろう。
そこに住む人々が安心して暮らせる環境づくりとはどのようなものなのか。
これが2024年の重要な課題になることは間違いなさそうだ。
ということで、2024年魚座期は、自分の中に芽生えた違和感、古く腐った水を入れ替えたいという衝動に目を向けてほしい。机の上から、キッチンの棚から、悪癖から手をつけたくなる人もいるだろう。徐々に手を加えていき、もっと心の奥にある問題に気づくことができるといい。国だったら、うやむやにしている裏金問題になるだろうか。腐った水は、やがて悪臭を放つことになる。手を付けるなら早い方がいい。
また、異質なものとの付き合い方も大事になるだろうか。自分にとって異質なもの、気に入らないものを排除するという態度は、国際社会としては、あまりに幼稚で独裁的であるし、そして未来にとって損失になることも多々ある。気に食わないから手を切る、嫌いだからやめる、以外の選択はあるだろうか。お互いが安心して暮らせるための譲歩はできるだろうか。
今期のイングレスチャートは、8ハウスも強調されている。8ハウスもやはり水エレメント・蠍座の部屋であり、異質なものとの結びつき、それによる価値の変容という意味がある。クルド人を排斥するのでもない、住民を犠牲にするのでもない第三の道を見つけることができれば、お互いが価値を高め合う変容が起こる可能性もある。
8ハウス・蠍座的には、むしろ自分から遠ければ遠いものほど、「あ!こんなふうに!」という思いがけない発見ができることだろう。
ものの見方を変えてみようか。
自分の心のキャパシティを信じてやってみようか。
そんなチャレンジングな心こそ、水エレメントの「力」であるはずだ。
新しい国/企業/個人の在り方に出会える時期になるといい。