アポロンの竪琴
2024 牡牛座┃サム・アルトマン
AI育ての親アルトマン、原爆の父オッペンハイマーを支える感性
自分の理想=太陽を生きるためには、何が必要なのだろう。
著名人の言葉から12の太陽サインの生き方を考える「アポロンの竪琴」。
水星神ヘルメスが発明した太陽神アポロンの竪琴の神話をご存じですか。太陽の理想や意図は、水星という竪琴=言葉があるからこそ美しい音色を奏でることができるもの。太陽の言葉=アポロンの竪琴のメッセージに耳を澄ませてみてください。
あなたの生き方、働き方のヒントを受け取ることができるかもしれません。
心理占星術家nicoが選んだ今月の竪琴
牡牛座・太陽の言葉は…
恐らく私が他のAI企業の人たちと違うのは、私がAIは善だと信じている点だろうね。自分が一日中向き合っていることを心の中で嫌悪しているなんて、そんなのはあり得ない。AIはもっとすごくなる。私はそう思う。
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2024.2.6号[チャットGPTを生んだ男 サム・アルトマン]より
AIのある世界が素晴らしい場所になってほしい。誰にもその恩恵が行き渡るようにしたい。だから「エンジン全開、ノーブレーキ」なんてあり得ない。
もちろん私は、これがすごく有益なテクノロジーだと信じてる。だからこそ安全かつ責任あるやり方で、人々の手に届けたいと思う。いろんなリスクには正面から向き合って、みんなに大きな見返りがあるようにしていきたい。
牡羊座の言葉
サム・アルトマン(Samuel Harris Altman)
1985年4月22日アメリカ合衆国シカゴ生まれ。牡牛座に太陽、月、火星を持つ。
起業家、投資家、プログラマー。OpenAI社の最高経営責任者。
彼は人工知能の目標を、害を及ぼすものとしてではなく、人間に利益をもたらす可能性が高い方法で進歩させることだと言う。2023年11月17日、OpenAIはアルトマンがCEOを退任すると発表。解任騒動の背後にはOpenAIの同僚であるヘレン・トナーの発表した論文を、同社の人工知能の安全性を非難したものとアルトマンが解釈したことが発端とされる。この出来事によりAIの安全性を軽視したとして取締役会で解任の動きに至った。OpenAIは11月22日、アルトマンが CEOとして復帰することで大筋合意に達したと発表。(wikipedia より)
私にとって「AI」とは、ほぼ無知の業界である。しかし、この先、多くの人たちが無関係ではいられない時代になるのは確実であり、また、ちょうど解任騒動があった際、生き方働き方研究会で彼のチャートを取り上げ、かなり興味深かったということもあり、もう一度、改めて彼を取り上げてみるのは占星術の理解を深めるためにも大事なことかもしれないと思った。
いや、そういうことではない。生き方働き方研究会の中で、牡牛座とAIを完全に結びつけることができなかった、その心残りがあったのかもしれない。
いや、それだけではない。ニューズウィーク日本版のアルトマン特集を読んでいたときに見つけた記事「彼は以前から原爆の生みの親、ロバート・オッペンハイマーに、自分をなぞらえている。誕生日が一緒だと述べ、オッペンハイマーの発言を踏まえるかたちで “テクノロジーが生まれるのはそれが可能だからだ” とニューヨーク・タイムズ紙に語ったこともある」に強い衝撃を受け、この二人の結びつきを占星術的に考えてみたくなったのだ(同じく牡牛座生まれのメタ社(旧フェイスブック)のザッカーバーグと比べながら記事を書いてみようかとも思ったが)。
公開中の映画「オッペンハイマー」では、人間は、人間が制御できないテクノロジーを生み出したがゆえに、「プロメテウス的宿命(神々から火を盗み人間に与えたがゆえに永遠の責め苦に合う)」に陥ったという方向付けをしている。「原子爆弾の爆発により生じる連鎖反応は、世界全体を破壊する恐れがある」というアインシュタインとの架空の会話によって、さらにそのテーマを裏付けてもいた。
これはまさに今、AIが世界から問われていることではないだろうか。少なくともAIは、政治、労働、人権、監視、経済的不平等、軍事、教育の在り方を根本から変えるだろうと言われている。実際、アメリカでは作品を許諾なしに使用された作家が集団訴訟をしたり、オープンAIが消費者保護関連の法律に違反している疑いがあるとして調査も開始している。アルトマンは言う。
AIはいいことづくめのきれいごとじゃない。損失があり、それを回避しようとするのは至極当然だ。みんな自分が損する話は聞きたがらない。人間にとって大切な何かが失われていくという危機感を抱いている人たちがいるということも理解している。
二人の時代の寵児を手元にある少ない情報の中で比べてみたが、ではこれを占星術的に考えた場合、どういう意味になるのだろう。太陽牡牛座をどう解釈すると、この二人の強い創造力を表現できるのだろう。
ほとんどの星占いの教科書には、牡牛座は「五感を扱う仕事、または美しいものを扱う仕事に適性がある」というようなことが書いてある。確かに、間違いなく理論物理学やプログラミング言語は、天才たちの目には究極の美しさを見せているのだろう。けれど、もう少し違う表現はできないだろうか。
ふと牡牛座に対応しているタロットカード「女教皇」が頭をよぎる。堅強な二本の柱と膝に抱えたユダヤの律法書は、まさに二人が信じていた/信じている価値の世界そのものに見えなくもない。
アルトマンは「AIは善だと信じている」「AIのある世界が素晴らしい場所になってほしい」「すごく有益なテクノロジーだと信じてる」と言っているではないか。女教皇が「神は善」だと信じているように、彼もAIが善だと信じている。これはまさに彼の中に揺るぎない経典が存在していることを意味しているのではないだろうか。
自身のブログでも以下のような言葉で頻繁に信念について語っている。
自己信念は非常に強力です。私が知っている最も成功した人々は、ほとんど妄想に近いほど自分自身を信じています。
『Sam Altman』著
オッペンハイマーも自分がロスアラモスで行った原爆実験を後悔していなかった。彼は常に、人類はこれらのテクノロジーをコントロールし、持続可能で人道的な文明に組み込むことを学べると信じていた。信じていたのだ!
この揺るぎなさ、自分の認めた「美」や「価値」、または「法」を「ほとんど妄想に近いほど」信じる、その純粋な力強さこそが太陽・牡牛座の特筆すべき能力と言っていいかもしれない。その強力な信頼から生み出された価値こそ、牡牛座を「時代の寵児」として君臨させている理由ではないだろうか。
実際、彼らは巨大な影響力のある価値を生み出してしまった。彼らは、当然その価値の意味、価値の力を知っていた。そして、その価値は世界中がこぞって欲しがるものであり、また人々の恐怖を煽るものでもあった。一つのテクノロジーを前に欲望する者と恐れる者がいる。恐らくオッペンハイマーもアルトマンも、その二つの価値の側面を知っていた/いるだろう。正と負の側面を。
もしかしたら、これは牡牛座―蠍座の補完関係として説明できるかもしれない。占星術における180度の補完関係とは、つまり牡牛座とは、向かい側の蠍座的感性(他者の欲望に対する理解)を無意識的に内面化することで完成する、そう考えることもできるのではないだろうか。
ここに哲学者で文芸批評家の柄谷行人の言葉を紹介したい。
マルクスが『資本論』で述べた言葉を思い出します。通常、商品には価値があると想定される。しかし、商品が価値をもつかどうかは、売れなければわからない。売れなければ、商品は使用価値ももたない。ゆえに、商品は価値であることを示すためには、「命がけの飛躍」をしなければならない。マルクスは「売る」立場から商品の価値について考えたということができます。
『柄谷行人講演集成1985−1988 言葉と悲劇』柄谷行人・著
マルクスが牡牛座生まれであることも興味深いし、アルトマンが優れた投資家であることを考えれば、これは自明の理である。
今、世界中で核の存在を利用した戦争が横行している。世界の雇用の約40%がAIに影響を受け、深刻な格差を広げることになると予想されている。けれど、アルトマンは信じている。「安全かつ責任あるやり方で、人々の手に届けたいと思う。みんなに大きな見返りがあるようにしていきたい」彼のこの言葉に嘘はないだろう。
だからこそ、牡牛座、蠍座の先に水瓶座、タロットカードでいうと「Ⅺ正義」が控えている。正義の剣を持つのも同じ人間だ。私たちは、自分たちの未来のためにどのように剣を振り下ろすことになるのだろうか。
ということは、価値の循環を意味する不動サインとは、または4つのエレメントで成立しているモダリティとは、4つのサインすべてを内面化させることで、その仕組み、不動サインで言えば価値の循環を健全に保つことができるということかもしれない。
ちなみに、オッペンハイマーも太陽とともに火星が牡牛座である。この組み合わせで言うと、アドルフ・ヒトラーも太陽と金星、火星が牡牛座である。そして、ザッカーバーグは火星こそ蠍座だが、この四人に共通なのは、個人天体5天体に風エレメントがないということだ。彼らを巨人(独裁者)にしたのは、恐らく風エレメントの欠如ということになるだろう。
自分の価値を信じ、邁進し、遂行するには風エレメントは邪魔になる。なぜなら風エレメントは「信じる」の対義である「疑う」が得意だからだ。
いずれにしても、私たちは2番目の牡牛座的感性を育てる必要がある。自分にとっての必要を信じ、価値を信じ、それを育てる力を身につけることだ。誰が何と言おうと、それに価値があると思えば間違いなくある。そして、その価値の先には、誰かにとっての恩恵がある。なんと力強い感性なのだろう。
2024年の牡牛座期は、一つ揺るぎない「価値」を持ち、それをより価値あるものに育ててみるのはどうだろうか。人々から欲望されることもあれば、非難されることもあるかもしれない。それでも「信じている」と言える力強い感性を自分の中に育てあげてほしい。
ちなみに、オッペンハイマーとアルトマンの牡牛座太陽の度数は数えで2度。太陽のサビアンシンボルは「An electrical storm 激しい雷雨」 彼らの影響力を考えると、なかなかどうしてぴったりな象徴と言えるかもしれない。