無力を感じさせられてきた冥王星からの脱出　みんなのホロスコープ白書 #4

認められたい、評価されたい、無力感しかなかった

幼少期から他人ばかりをみていた子どもだった。他者から感じる違和感を消化できず、心は殻に閉じこもっていた。

だが、陽サインである太陽と水星（天秤）が発動していたのだろう。外に見せる顔は、気分とは裏腹に笑顔をつくり、感じのいい人というふるまいばかり。本質をあらわす陰サインの金星・火星（蠍）を置き去りにし、上辺を取り繕って虚像を演じ続けることで、自分自身はどんどん分離していき、心の中はいつもモヤモヤしていた。

加えて私のチャートには、一般的に良いとされているセクスタイルのアスペクトが多くある。現場力が高いと言えば聞こえはいいけれど、私の場合は、人の気配をいち早く感じ取り、そのことばかりに気をとられてしまっていた。

成果をださなければ、わたしは認めてもらえない。
親をはじめとする先生、周りの人、世間に評価されなければ存在価値がない。自分の価値判断を人にゆだねる自己肯定感の低い人生を過ごしてきた。

とにかく評価をしてもらいたかった。
評価をしてもらうにはパフォーマンスが必要だ。周りに合わせ、承認を得ることに意識を注ぎ、自ら何かに挑戦するというような成功体験を積み重ねることもなく無力感ばかりを募らせていた。

音楽は大好きだった。
それで結果を出せば、私は認めてもらえるかもしれない。
そんな私が選んだのは、声楽家の道だった。

今から思えば純粋に音楽と向き合ったのではなく、自分を肯定してもらう手段にしていたのだ。そんな中で、ポジションを得ても当然満たされるわけもなく、常に人の中での立ち位置や評価に気をとられ、パフォーマンスに集中できなかった。

そんな状況や想いに嫌気がさし、子育てに専念しようと家庭に入った。夫はよい理解者であり、三人の子供たちは反抗期こそあったものの何不自由のない幸せな生活。傍から見ればなんの不満があるのかと言われるだろう。

けれど、私の心はいつもモヤモヤしていた。
承認欲求が満たされなかったのだ。解消しようといろんなことに手を出してはみたものの、誰かに認めてもらいたい気持ちがいつも根底にあり、気分のアップダウンが激しく無力感しかなかった。

自分探しの中で出会った心理占星術

そんな私が、土星期に差し掛かる頃からは、自分を知るために潜在意識を探求していくことになる。自分を知る手立てになるものは触手のおもむくまま取り込んでいき、その中のひとつに占星術があった。

難しい顔をしている占星術だが、仕組みくらいは知っていてもいいだろうと軽い気持ちで始めた。そのうち心理占星術がいいと薦められ、心の在り方を知るために受講した。自分のパターンがわかり面白かったが、高度な内容でもあり受け身の姿勢で簡単に身につくものではなかった。

それと同時に、様々なセッションも受けながら自分を探求し続けたが、耳触りのいいことを言われるだけでモヤモヤは解消されなかった。この頃、受けていたセッションの主流はマイナス思考、観念などのフィルターをはずし浄化することに特化していた。マイナスをゼロにしていく作業。これも私の欲求を満たさなかった。ゼロには何をかけてもゼロにしかならないからだ。

そんな中、2019年１月１日から始まる火星サイクル手帳と特別鑑定の情報を得た。そこで、nico 先生から言われたのは、

“承認を得ることに焦点を合わせていては疲弊するばかり。
まずは「自分の存在の価値づくり」です。他人の価値観、やり方に振り回されず、じっくり価値を積み重ねてください。”

まず個人のパースペクティブである１ハウス（牡羊座・火星）、２ハウス（牡牛座・金星）、３ハウス（双子座・水星）をひたすらやること。無力感の上書きを繰り返していた私には、

衝撃だった！
それでいいのか！
初めて肯定されたように感じ、背中を押してもらえた気がした。

あらためて当時の時期をチャートで見てみると、プログレスの月が８ハウス。深層の世界に触れながら、他者の価値を取得したい気持ちが高まっていたことが分かる。

そこからはなんとしても学びたいと、鼻息荒くnico 先生の講座を受講した。講座は内容が濃いのはさることながら様々な分野も織り交ぜられ、ありとあらゆる膨大な知識や情報がなだれ込み、閉鎖的な私の世界が一気に広がった。

だが、毎回消化するのにアップアップ。そのうえ課題も手強く、必死で食らいついていくうちにあっという間に５年もたってしまった。

もちろん簡単に過ぎたわけではない。
課題に取り組むたびに自分の在り方や、思考の偏り、とらえ方の癖などにぶつかり、そのたびに自分と向き合い、矯正し、書き換えをしていかなければ進めていけないのだ。

ネイタルチャートのハウスにとらわれていると、いつまでも轍にはまったままで抜け出せない。だから、ナチュラルチャートを意識し、心がけ、個人から相互、そして社会へと自分を育てていけるよう見通しを変えていった。

長年のモヤモヤの正体が明らかに

職業占星術のリニューアルを機に受けた鑑定では、ついに私の隠れた欲求が明らかになった。

それは「人に影響を与えたい」ということ。
しかも元々備わっているものではなく、自分でつかみ取っていなければ手に入れられないのだと。

また何度目かの衝撃が走った。
やっと私をモヤモヤさせている正体が分かった！

承認されれば自己存在の価値を実感でき満たされると思っていた。
が、心のモヤモヤは私の中にある出番をずっと待っていた未開発の能力。
意図をもって自発的に使っていかないと開花しない未消化のエネルギーだった。

パワフルな火星は欠乏感も強く、枯渇感が尽きないところに陥っていた。

今まで人に頼って何とかしてもらおうという姿勢だった。
なんと受動的に生きてきたのだろうか。

そこから脱却するには自立していかなければ、という思いにたどり着いた。 冥王星、８ハウスは私にとって利のあるものを提供してくれる場所ではあるけれど、いつまでもそこに留まっていては先には進めない。

この気づきは大きかった。
火星の生命力、推進力に自らの欲求をあらわす月が重なったタイミングだった。やっとわたしの火星力が発動する、目覚めのときだったのだろう。

自分の幻想から抜け出し、使命に気が付いた

唯一無二といってもいいこのネイタルチャートは私だけにあてがわれたもの。これを活かすかどうかは全て私のみに委ねられている。私はこのチャートを最大限に活かすことに精力を傾けなければならない、そう思ったらいつまでも後ろ向きにグダグダとやっている暇などない。

私が私らしく在り、表現し、私というものを確立していくことで、本当の意味で冥王星を享受できるのだ。

あおられ、無力を感じさせられてきた冥王星。

それは、全部自分でつくりだしていた幻想だった。自分をしっかり確立させれば、他人の評価に脅かされるのではなく、異質のものとコラボし、変容させ、新たなものを生みだすことができる。冥王星の可能性にも目を向けられるようになった。

冥王星が山羊座終盤に差し掛かった頃から、がんじがらめになっていた自分の観念からの解放を感じている。

私のASCは水瓶座の４度。もうすぐトランジットの冥王星がヒットする。年齢も節目を迎えており、生まれ変わりのときなのかもしれない。

これからもいろんなことを経験するだろう。でも、もう私は知っている。

どのような出来事、人に出会ったとしても、それは得体の知れないものではなく、まだ認知していない私が現れた瞬間なのだと。

他者の価値は私を脅かすものではないということもわかってきた。

今、私は人様の人生の片りんを見せていただける占い師、セラピストをしている。世の中には様々な価値が存在している。それを味合わせてくれる人生は、なんと面白いことかとさえ思えてくる。これからも様々な体験を繰り返しながら、自分を知る旅は続いていくだろう。